化粧で健康寿命伸ばそう 熊本市の歯科医ら活動 認知機能アップも
2018年10月16日 (火)配信熊本日日新聞
化粧の力で高齢者の健康寿命を伸ばそうという取り組みを、熊本市の歯科医らが始めた。添島歯科クリニック(東区)の医師らが9月中旬、同区の介護事業所「あやの里」で化粧療法の講座を開催。利用者が自ら手を動かして化粧することで、筋力アップや意欲向上などの効果があると訴えた。
「化粧を楽しんで、きれいになってほめ合いましょう」。化粧療法を行う資生堂認定の「化粧セラピスト」で、歯科医の添島絵美さん(44)が呼び掛けた。
講座に参加したのは80~90代の女性利用者13人。まず化粧水を使って顔をマッサージ。次に化粧下地とファンデーションを塗り、眉を描く。
「口紅はピンクでかわいらしくしますか? それとも赤でセクシーに?」。添島医師らが笑顔で語りかける。当初は緊張した様子の利用者たちは、次第に顔色が輝き始めた。
添島医師の狙いは、地域の高齢者のオーラルフレイル(口の機能の衰え)を防ぎ、健康寿命を伸ばすこと。しかし、「健康を守る一歩はお口からと呼び掛けても、なかなか伝わらない。高齢者の生活に密着していて楽しく実践できる方法で訴えたい」と、化粧療法に着目した。
健康寿命のこつは食事と運動、人との交流といわれる。化粧をすることで外出したい、人と話したいという意欲が向上。おしゃべりをすることで唾液も分泌される。肌を手入れすることでも、唾液がよく出るようになる。「唾液は高級な“美容液”」と添島医師。唾液が少ないと、歯周病や入れ歯が合わなくなるなど、口腔内のトラブルが発生する恐れがある。そうなると軟らかいものばかり食べるようになり、かむ力が弱まって、低栄養になってしまう。
化粧療法は、人の手を借りずに自分で化粧することがポイントだ。化粧品のキャップを開ける、ファンデーションを塗るために腕を上げる…。これらの動作で筋力がアップ。眉を描くには集中力が必要なため、認知機能も上がるという。
添島医師は、クリニック内でも患者向けに化粧療法の教室を開いている。女性限定ではなく、夫婦そろっての参加も。男性は化粧水をつけたり、眉を整えたりしたという。「90代の男性だったのですが、身なりを整えると表情が明るくなった。この年になって初めて経験できることがあると笑っていらっしゃった」と添島医師。
化粧を終えた「あやの里」の利用者は、隣の人と顔を見合わせて、「きれいになって、誰だか分からなかった」と冗談を言い合った。
土肥和子さん(82)は「普段は口紅をつけて終わりだが、これからはきれいにしておかなければならないと思った」と満足そう。添島医師は「今日はたくさん笑ったので、唾液もたくさん出ています。明日からぜひ化粧を生活に取り入れてください」と呼び掛けた。
2018年10月16日 (火)配信熊本日日新聞
化粧の力で高齢者の健康寿命を伸ばそうという取り組みを、熊本市の歯科医らが始めた。添島歯科クリニック(東区)の医師らが9月中旬、同区の介護事業所「あやの里」で化粧療法の講座を開催。利用者が自ら手を動かして化粧することで、筋力アップや意欲向上などの効果があると訴えた。
「化粧を楽しんで、きれいになってほめ合いましょう」。化粧療法を行う資生堂認定の「化粧セラピスト」で、歯科医の添島絵美さん(44)が呼び掛けた。
講座に参加したのは80~90代の女性利用者13人。まず化粧水を使って顔をマッサージ。次に化粧下地とファンデーションを塗り、眉を描く。
「口紅はピンクでかわいらしくしますか? それとも赤でセクシーに?」。添島医師らが笑顔で語りかける。当初は緊張した様子の利用者たちは、次第に顔色が輝き始めた。
添島医師の狙いは、地域の高齢者のオーラルフレイル(口の機能の衰え)を防ぎ、健康寿命を伸ばすこと。しかし、「健康を守る一歩はお口からと呼び掛けても、なかなか伝わらない。高齢者の生活に密着していて楽しく実践できる方法で訴えたい」と、化粧療法に着目した。
健康寿命のこつは食事と運動、人との交流といわれる。化粧をすることで外出したい、人と話したいという意欲が向上。おしゃべりをすることで唾液も分泌される。肌を手入れすることでも、唾液がよく出るようになる。「唾液は高級な“美容液”」と添島医師。唾液が少ないと、歯周病や入れ歯が合わなくなるなど、口腔内のトラブルが発生する恐れがある。そうなると軟らかいものばかり食べるようになり、かむ力が弱まって、低栄養になってしまう。
化粧療法は、人の手を借りずに自分で化粧することがポイントだ。化粧品のキャップを開ける、ファンデーションを塗るために腕を上げる…。これらの動作で筋力がアップ。眉を描くには集中力が必要なため、認知機能も上がるという。
添島医師は、クリニック内でも患者向けに化粧療法の教室を開いている。女性限定ではなく、夫婦そろっての参加も。男性は化粧水をつけたり、眉を整えたりしたという。「90代の男性だったのですが、身なりを整えると表情が明るくなった。この年になって初めて経験できることがあると笑っていらっしゃった」と添島医師。
化粧を終えた「あやの里」の利用者は、隣の人と顔を見合わせて、「きれいになって、誰だか分からなかった」と冗談を言い合った。
土肥和子さん(82)は「普段は口紅をつけて終わりだが、これからはきれいにしておかなければならないと思った」と満足そう。添島医師は「今日はたくさん笑ったので、唾液もたくさん出ています。明日からぜひ化粧を生活に取り入れてください」と呼び掛けた。