温泉クンの旅日記

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読んだ本 2018年10月

2018-10-28 | 雑読録
  <読んだ本 2018年10月>

 いわせてもらえば、剣術とおなじように酒呑みにも流派がいろいろある。(と思う)
 あてが、刺身や焼鳥などがんじがらめに居酒屋メニューだけに縛られている一刀流な奴もいれば、食堂単品メニューでも焼き鯖定食でもオッケー、なんなら梅干だけでもいいという自在な陰流っぽい、型にはまらぬヤツもいるのだ。

 坂東橋駅にやってきたのは、しばらく前に友人からもらったショートメールのせいだ。
「埼玉屋食堂」の記事を読んだらしく、坂東橋にはもう一軒いい食堂が市大病院のそばにあるから行ってみたらどうかと店名が書いてあった。老舗の酒場も大好きだが、わたしは大衆食堂の片隅で、酒呑みの常連客に混じって明るい時間から呑むのも好きだ。

 

 たしか深川や深谷などで馴染み深い「伊勢屋食堂」という名前だった・・・見つけた、あれだ!
 引き戸をあけて入ると、とっつきの卓に陣取る。壁のメニューを見回しながら、灰皿がないのに気がついた。そういえば、壁に「禁煙」の貼り紙もある。友人も煙草を吸うはずなのに・・・。

 

「目玉焼きとハム、それと緑茶割をください」
 注文を聞いて厨房に戻る店主に「ここって禁煙なんですか?」と念のため訊いてみる。いまなら誰もいないから吸っていいですよ、なんて返事を期待してだ。
「つい最近、禁煙にしちゃったんです」
 なにしろウチは市大病院関係の客が多いもんで・・・と頭を下げた。



 煙草がダメならここまでだ。きっちり一杯で切りあげて、精算をすませると退散して埼玉屋食堂に急ぐ。
 
 入ってすぐの、壁にかけられたイラストが微笑ましい。



 近いので昼前に入店できたが、ここは午前七時に開店し午後一時で中休みに入る。テーブルの上にでっかい灰皿がいっぱいあって安心し、とりあえず焼酎の水割りとウィンナフライを注文する。



「アタシなんかさあ、一、二泊の旅ならパンツ一枚くらいバッグに突っ込んだだけで出掛けるわよ」
 常連五、六名のなかの女性客が、ガハハと笑いながらでっかい声で言うのが聞こえて思わずみてしまう。既にだいぶ、きこし召しているらしい。「オマエさん、一応まだオンナだろが」と男が恐々と突っ込みを入れた。

 昼飲みしやすい食堂とはこういう、ちょいとがさつな客にも寛容な雰囲気でなければいけない。
 何組かガテン系昼メシ組が入ってきて、一様にカレーライス大盛りを注文した。たしかにここのカレー、旨かったからな。
 濃い目のヤツを二杯呑んで、時計を確認してそろそろラストオーダーで、日本酒と、雑煮とすいとんと悩んだあげく無難なラーメンを注文する。



 さて、10月に読んだ本ですが今月は5冊、累計で57冊です。

1. ○ライムライト  天切松闇がたり 第五巻  浅田次郎 集英社文庫
2. ○日本一短い手紙 友へ 一筆啓上           角川文庫
3. ○日本一短い手紙 「母」への想い 一筆啓上      角川文庫
4. ○竹光始末                 藤沢周平 新潮文庫
5. ◎春秋の檻 獄医立花登手控え 1      藤沢周平 文春文庫

 また今月、藤沢周平に戻った。
 固め読みを始める前、わたしが大好きだった周平本は「用心棒」と「獄医立花登」のシリーズだった。その気持ちはいまのところ変わらない。両方とも読了しているのではありますが、「獄医立花登」シリーズをここいらで再読してみたくなった。



 図書館の書架の間を背表紙をみながら歩いていたら、なんとなく目が合ってしまった本が「日本一短い手紙」。手に取ってパラパラ読むと結構面白いので、二冊借りてみた。
「友へ」より、「『母』への想い」のほうが、熱量というか想いが強く心を動かされたので、作品を少しだけご紹介しよう。作者名は実名なので記載を省略させていただいた。

   高速道が出来ました。でも、母さんのいないふる里はなんだか遠くなりました。

   私は捨て子。あなたのおなかにいてあなたに拾われたのです。

   お母さん、あの指輪ほしいと言ったら、死んだらあげるなんて、もう絶対いらんちゃ。

   誕生日、私でなく、あなたの記念日だと、子供を産んでやっと分かった。


 とても短い文章なのだが、深くしみわたってくるものがある。



  →「読んだ本 2018年9月」の記事はこちら
  →「横浜三吉橋、埼玉屋食堂」の記事はこちら
  →「深川森下、下町食堂」の記事はこちら

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