<彦根、玄宮園で抹茶を一服 >
「玄宮園(げんきゅうえん)だけでいいんですか?」

彦根城とのセットの観覧料金は八百円、玄宮園だけならたったの二百円である。

駅だけの撮り鉄であるわたしは、城も遠景写真を撮るくらいで充分に満足だ。だいたい現存天守がある城だけならともかく、いわゆる城跡なども含めてしまうと日本には何万もあるのである。そういえば彦根には石田三成の居城だった佐和山城跡もあるのだ。
「お客さんの数はだいぶ戻ってきてますか?」
釣りがないようにきっちり小銭で払いながら料金所の係員に訊いてみた。
「まったくダメですね、個人の自家用車ばかりで。観光バスがね、中高年とか外人をいっぱい乗っけて来なくちゃ賑わいは戻りませんよ」
観光地はどこいっても同じような状態だ。

「玄宮園」は、江戸時代には「槻之御庭」と呼ばれていた。関西では貴重な大名庭園である。隣接する「楽々園」は「槻御殿」と呼ばれ、延宝五年(1677年)、四代藩主井伊直興により造営され二年後に完成したと伝えられている。現在は庭園を玄宮園、御殿部分を楽々園と称している。


外堀から導水する広い池を中心に、島や橋などで変化に富む回遊式庭園になっている。
築山に造られた鳳翔台(ほうしょうだい)という茶室に迷わず向かう。

旅人は貪欲である。もう来られないかもしれないと思って、名所を巡ろう、名物を食べようと、ついつい旅先ではがつがつと観光してしまう。かくいうわたしももちろん同じだ。
でも今日は抹茶を一服する、静かでゆっくりした優雅な時間を持ちたい。たまにはいいだろう。
「抹茶ですが、冷たいのもありますが・・・」
猛暑日が続いているので、ありがたく冷たいのを注文することにした。

抹茶(五百円)に添えられた「埋れ木(うもれぎ)」という菓子は、文化六年(1809年)創業の「いと重」という老舗和菓子店の銘菓である。

一見、わたしの苦手なきなこがまぶしてあるようでギョッとしたのだが、そうではなかった。ひと口食べて駄目そうなら懐紙に包んで持ち帰るつもりだったが、口どけのいい甘みと、ふんわりとした抹茶の香りがなんとも美味しい。抹茶だけでなく煎茶にも珈琲にも合いそうだ。
手芒豆(てぼうまめ=白餡に使う白いんげんまめのこと)をじっくり炊きあげた白餡を、創業以来の、つまり二百年を超す伝統の製法でつくられたこだわりの求肥で包み、最高級の和三盆糖に抹茶を加えてまぶしたもの。賞味期限はいいとこ一週間くらいとあまり日持ちしない。
洒落た「埋れ木」という菓子名は、彦根藩第十三代藩主、幕末の大老井伊直弼が青年時代を過ごした「埋れ木舎(うもれぎのや)」に由来している。


(広い茶室を・・・まるで名湯の露天風呂をずっと独り占めしている気分だ・・・)

茶席では、目の前に広がる庭園の眺めを、振り返れば木の間越しだが、玄宮園の借景としている彦根城の天守閣も一望できる静かで贅沢なひとときを、ゆっくりと過ごせたのである。

ともすれば疑心暗鬼に陥りそうな厭な世の中である。たまには心を落ち着けないと。
「玄宮園(げんきゅうえん)だけでいいんですか?」

彦根城とのセットの観覧料金は八百円、玄宮園だけならたったの二百円である。

駅だけの撮り鉄であるわたしは、城も遠景写真を撮るくらいで充分に満足だ。だいたい現存天守がある城だけならともかく、いわゆる城跡なども含めてしまうと日本には何万もあるのである。そういえば彦根には石田三成の居城だった佐和山城跡もあるのだ。
「お客さんの数はだいぶ戻ってきてますか?」
釣りがないようにきっちり小銭で払いながら料金所の係員に訊いてみた。
「まったくダメですね、個人の自家用車ばかりで。観光バスがね、中高年とか外人をいっぱい乗っけて来なくちゃ賑わいは戻りませんよ」
観光地はどこいっても同じような状態だ。

「玄宮園」は、江戸時代には「槻之御庭」と呼ばれていた。関西では貴重な大名庭園である。隣接する「楽々園」は「槻御殿」と呼ばれ、延宝五年(1677年)、四代藩主井伊直興により造営され二年後に完成したと伝えられている。現在は庭園を玄宮園、御殿部分を楽々園と称している。


外堀から導水する広い池を中心に、島や橋などで変化に富む回遊式庭園になっている。
築山に造られた鳳翔台(ほうしょうだい)という茶室に迷わず向かう。

旅人は貪欲である。もう来られないかもしれないと思って、名所を巡ろう、名物を食べようと、ついつい旅先ではがつがつと観光してしまう。かくいうわたしももちろん同じだ。
でも今日は抹茶を一服する、静かでゆっくりした優雅な時間を持ちたい。たまにはいいだろう。
「抹茶ですが、冷たいのもありますが・・・」
猛暑日が続いているので、ありがたく冷たいのを注文することにした。

抹茶(五百円)に添えられた「埋れ木(うもれぎ)」という菓子は、文化六年(1809年)創業の「いと重」という老舗和菓子店の銘菓である。

一見、わたしの苦手なきなこがまぶしてあるようでギョッとしたのだが、そうではなかった。ひと口食べて駄目そうなら懐紙に包んで持ち帰るつもりだったが、口どけのいい甘みと、ふんわりとした抹茶の香りがなんとも美味しい。抹茶だけでなく煎茶にも珈琲にも合いそうだ。
手芒豆(てぼうまめ=白餡に使う白いんげんまめのこと)をじっくり炊きあげた白餡を、創業以来の、つまり二百年を超す伝統の製法でつくられたこだわりの求肥で包み、最高級の和三盆糖に抹茶を加えてまぶしたもの。賞味期限はいいとこ一週間くらいとあまり日持ちしない。
洒落た「埋れ木」という菓子名は、彦根藩第十三代藩主、幕末の大老井伊直弼が青年時代を過ごした「埋れ木舎(うもれぎのや)」に由来している。


(広い茶室を・・・まるで名湯の露天風呂をずっと独り占めしている気分だ・・・)

茶席では、目の前に広がる庭園の眺めを、振り返れば木の間越しだが、玄宮園の借景としている彦根城の天守閣も一望できる静かで贅沢なひとときを、ゆっくりと過ごせたのである。

ともすれば疑心暗鬼に陥りそうな厭な世の中である。たまには心を落ち着けないと。
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