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Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

踏み付けられた巨人

2005-07-08 | 歴史・時事
馬に乗り巨人を踏みつけるジュピター像は、ローマ帝国の領地であったライン河畔各地で見付かっている。ギリシャのゼウスに相当するローマの守り神である。その足元には季節を表す四体の女神像が飾られており、これは本国のイタリアでは見付からないらしい。これは、年間を通した安寧秩序と豊作を意味するケルトの天候の神と同じと云う。

土台の四面には、ユーノ、エポーナ、ミネルバ、ヘラクレス神々が彫り廻らされ、そして文字が刻まれている。

IN H(onorem) D(omus) D(ivinae) I(ovi) O(ptimo) M(aximo)_ET IUNONI_REGIN(a)E_ NOVANIUS_AUGUSTUS_IN SVO_R(estituit)

これを訳すと、「神聖帝国の誉れにおいて、最良で最大の女神ユーノの、ジュピターの誉れに、ノヴァニウス・アウグストュスは、ここ領土にこれを再び設置する。」となるようである。

AC233年にこれが設置されて、260年に再設置されたとある。つまりここから、この塔が二度に及んで井戸に放り込まれている事が知れる。これは、この繁栄したローマ人の町が野蛮なゲルマン人であるアラマン族によって侵略された痕跡である。

更に面白いのは、原始的なを形成するアラマン族は、文化的に整備されたこの町のインフラストュルクチュアーを使わ(え)ずに自らの生活様式を守り、町の中心部を離れて居住していたようである。井戸へ投げ込む仕業は、地底の冥界へとこれらを追放するゲルマン人の宗教観を表しているという。

踏みつけられた巨人を見て、怒り狂うアラマン族を想像するのも面白い。危うく井戸に投げ捨てられる蛮行を逃れた土台の部分は、その後キリスト教化されてからは各地で洗礼水台として使われていたと云う。



参照:
聖フランシスの壁画 [歴史・時事] / 2005-07-04
破壊された偶像 [文学・思想] / 2005-07-05
魔除けの見下ろす教会塔 [文化一般] / 2005-07-06
弓矢の先端とその恍惚 [歴史・時事] / 2005-07-07
世界最古のガレージ [歴史・時事] / 2005-07-09
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