Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

社会資本の換金請負

2005-07-15 | 歴史・時事
物作りが出来なくなると、商業も成り立たなくなって行く。巨大GMの金融危機なども長く予想されて来た事であり、販売網だけの商業コンサルタント業兼元締めを立て直すのは難しい。元締めの歴代の親分方は、問題を先送りにして粉飾決算紛いのリフォームを遂行して、超高額役員給与への損害賠償請求の訴追を逃れるしかないだろう。

良く似た状況がメディア産業にも見られる。本日BLOGで教えて頂いたのが、BBCによるMP3の無料ダウンロードサーヴィスに対してメディア産業からのクレームが出たという話である。それらは、公共の資金で制作した音源や映像などを自己の流通網に乗せて換金化する業務を請け負いしている。つまり類似の商品の商業価値の喪失を危惧しての無料サーヴィス停止を求めた。言い分は不当競争である。顧問弁護士諸氏の法的戦略が公共サーヴィスの制限を招くとなると広く社会に問われるべき問題ではなかろうか。

クラシック音楽部門は、もともとその売り上げ規模が知れていることもあり、更にネットでのダウンロードの価値が使い物にならないその音質によって無視出来る程度であったとの認識があった。今回の件もその点からすると特に大きな影響は無い筈であったが、そのような過去の「記録映像や録音」の換金業務を自己の本格的業務と捉え、ドル箱と値踏みする斜陽にある大手メディア産業が過剰反応したと見てよい。

このBBCの企画を推し進めると、何れは公共の資金で制作した作品は、ネットなどを通じて無料で提供されるのが筋だからである。ドイツにおいても全てのアーカイヴはネットで結ばれて各地方放送局や全国向け放送で自由に使えるようなデジタルデータベースが出来ている。現在は放送用や公共機関の利用に限られているが、ネットのキャパシティーが飛躍的に向上した暁には家庭においてこれが使えるようになるかもしれない。その反面、偽民営化の波に揺れる放送局は、自主制作を停止して外部発注もしくは外部制作を利用する傾向にあるので、今後もメディア産業の必要は変わらない。

この問題は「作らないで流通させ換金する者」が「公共の目的で制作して公共に還元」しようとした行為に苦情を呈したとなる。しかし基本は物作りであるとすると、ポップスにおける制作費用とスターの権益などとのバランス等、著作権やその隣接権さらに版権などの事情から改めて眺める必要がある。

ここで例え、社会資本の換金が将来的な産業の創造に投資されているとは認識出来なくとも、「公共的な恩恵を受けようと思えば、受け取り側がその基礎となっている権利を十分に尊重して遵法しなければならない。」という前提があることにも留意すべきであろう。

コメント (3)
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