Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

本当に力が漲るとは

2008-12-02 | ワイン
朝が辛い時期である。特に一日中太陽が射さないと身体から生気が失せてしまう。嘗て日本の冬山で一日中吹かれていたので体の動きが悪く、望みもしないのに持久戦を強いられていた事がある。陽が射さない中で益々体の動きが落ちて行ったような覚えがある。良くもあんな所で三泊もしながら前進したものだと思う。

しかし、長寝が出来る事は肉体的にも精神的にも元気な証拠であるとこの11月になって初めて気がついた。ここ数年は夜中に起き出していることが多かったことからすれば、随分と長寝が出来るようになったものと感慨深い。

週末からワインを何本か開けている。飲み頃を開けるとは、気になっているワインをどうなっているか試したい欲求でもある。特に、前回あまり良くない印象を得たワインはもう一度開けて本当に悪いのかどうか試してみたくなるのである。

ミュラーカトワール醸造所の地所ビュルガーガルテンは、そのトップ土壌であって、唯一のグランクリュワインが醸造されている。であるから、1990年代はもっともドイツで注目されたこのリースリングは悪くては困るのである。

それが、不幸な年度とは言いながらその品質を思い憚って2006年度が格落としの遅摘みワインとしてしか出されなかった。そのワインの評判は、先月飲んだ際に散々なものであったので、名誉挽回を期待して2005年産のキャビネットを開けてみた。

蔵には2005年のインデンマウエルンなど最高のワインに輝く瓶が三本ほど眠っているがこれを開けるにはまだ早い。そこで、瓶詰め後二年半ほど経過した軽めのキャビネットを試したのである。時期的には、たとえ13%のアルコールとはいえ早過ぎる事はない。

結果は、先の印象が残っていたせいか同じ傾向で味はあっても香りが少ない。温度のせいもあるが、これでは困る。ミッテルハールトの2005年産は、少々骨太感があって、構築性が魅力であったが、当時試飲した時の印象と同じで若干厚ぼったさが今この時期でも変わらない。先月友人が語っていたように、マイスターシュヴァルツの頃はこの辺りのリースリングにはない繊細さがあったと言うのである。それはまさにその通りであって、現在のマイスターに代わってからワインが骨太にゴツクボディー感が漲るようになってしまったのである。

ワインジャーナリズムでは、か細くなったとか全く反対の事が言われているようだが、私が嘗てのワインは長持ちしなかったが、「最近は毎年同じように力強くなってはいけない」と新醸造親方に文句を付けたその通りである。

どうも、先代の親方の名前と巷の安物ジャーナリストに間違った方向へと追いやられた感すらある。前任者の弟子が率いる現在のフォン・ブール醸造所の品質向上振りを考慮すると、オーナーも心中穏やかではないだろう。もう一度土台から立て直して欲しいものである。

試飲の印象を振り返ると非常に勉強になる。
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偽装消費を鼓舞するな

2008-12-01 | ワイン
待降節にワインを開けた。グリル肉の塊のラード部分を使うための食事に合わせた。肉の塊はまだ四分の一ほど残っている。

ラードを熔かして炒めることにした材料は、ニンジン、芽キャベツとマッシュルームでその他残り物を掘り込めば良い。材料費はどう見積もっても1.5ユーロに至らない。しかしワインは、ラインガウのシャルタヴァインとして有名なローバート・ヴァイルの日常消費ワインなのでべらぼうに高価だ。一本12ユーロほどする。

前日に開けてあったワイン街道のフォルストのゲオルク・モスバッハー醸造所のハウスリースリング・キャビネットが6ユーロなので殆ど倍の価格である。その残りと上の高価なリースリングを直接比べる事が出来た。

シャルタは、アルコール度12%ということでそこのキャビネットの11.5%を上回っている。それはなぜだろう?まさか辛口のキャビネット以上の糖比重の高いものを使っているとは考えられないのだ。法的に許されている補糖による醸造が疑われる。

その可否は議論のあるところだが、経済価値が大いに異なる事を留意すべきであろう。つまり、技術的に弄れば弄るほど、なにも新世界ワインでなくとも、廉くワインは作れるのである。食料品や飲料などの大量生産は総てこの法則が成り立つであろう。

そのようにして 都 合 の 良 い 味 に 作られたロバート・ヴァイルのこの商品であるが、その価格の高級イメージにすがって飲んでいるうちはよいが、通常のワインと比較されると明らかに厳しい。フォルストのゲオルク・モスバッハーのハウスヴァインは定評のある商品だが、2007年産は春の試飲時にあった甘みが落ちてきて素晴らしいリースリングに今や変貌しつつある。近隣の軒並み高価なリースリングであるフォン・ブールのハウスリースリングやミュラー・カトワールのハウスリースリングMCなどをCPのみならず明らかに凌駕する品質である。それに比べて二倍の価格のシァルタヴァインが、現時点では食事用ワインとしても全く優れるところないとはどうした事であろう。

偽装商品とまでは言わないが、ルイヴィトンの訳の分からない素材の商品に匹敵する商品であり、アルコールが高いので何年か保つのは当然で商業ルートに乗せ易い価値が付加されているとしても、これを喜んで飲んでいるのはその「価格を評価」しているからでその味を評価しているとは思われない。自ら毎年試飲して何年も買っておきながら今回の結果は非常に遺憾であるが、もう一段と厳しい目でこのリースリングを評価するとその価格は不当と言わざるを得ない。その反面醸造所自体は、そのCPは別としてグラーフェンベルクの地所の素晴らしいリースリングを醸造しているので、幾らこうした稼ぎ頭の商品とは言っても精々価格を調整して貰いたいものである。実質価格は、精々8ユーロ台だろうか?

先日来開けたリースリングでは、上のハウスリースリング以外では、ビュルックリン・ヴォルフ醸造所の2007年産ランゲンモルゲンが秀逸であった。初めは鋭い酸に隠されていた要素が、夏を越えて瓶詰め後半年ぐらいにしてようやくワインらしく収まって来ている。甘露煮のような昆布味のようなとろっとした味覚がまだまだ開くには時間が掛かるようで、2006年産が既にそうなっているように蜂蜜風味に白檀などのお寺さんの抹香臭さが一気に吹き出してくるには少なくともあと十八か月ほど、もしくは三年ほどの月日が必要であろうか。

そのような按配で、この竹細工のようなリースリングに関わらず、良いワインは、六本ぐらい調達しても数年の内にちょびちょびと試して一番良い時に飲めるのは半分ほどしかないのである。

嘗てのオーディオ趣味に喩えるならば、お気に入りのLPレコードを鳴らしても、室温とか針の具合とかスピーカーのセッティングなど、LPの静電気のおきかたやゴミの付き方以外にも様々な要件があって、なかなか理想的な環境でそこに含まれているものを堪能する事は出来ないものなのである。

逆に、容易に味わい尽くせるものなどは、ルイヴィトンのモノグラムのようなただの意匠であって、それは実体の無い金融経済の基礎となる商品なのである。なにも分からない大衆が、そうした実体のないものに市場価値を授けて、そうした消費を鼓舞する似非ジャーナリズムのマスメディアが存在するのである。



参照:
ヴァイルの2006年産カルタワイン
何故かことごとく美味い 
繊細と言うより大味 
ランゲンモルゲンとはこれ如何に (新・緑家のリースリング日記)
昨日の一本 (yokunのブログ)
ゴー・ミヨ ドイツワインガイド2009 (モーゼルだより)
如何わしいワインのかい [ ワイン ] / 2008-11-14
買ってしまうグランクリュ [ ワイン ] / 2008-10-02
2006年産の良い地所 [ 試飲百景 ] / 2007-09-27
待てば甘露の日和あり [ ワイン ] / 2008-08-19
森の泉の渋味の世界 [ ワイン ] / 2008-05-19
趣味でミクロを宣う文化人 [ 文化一般 ] / 2007-07-18
ワインの時の三位一体 [ 試飲百景 ] / 2007-05-11
ワイン三昧 第一話 '05II [ ワイン ] / 2005-11-08
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