ご近所の女性が引越しをした。引越し先はUボートの港としても有名なキールである。プレゼントに貰ったサボテンを思い出したように室内に入れるようになってから思いがけず急激に元気さを増している。
仕事探しは夏前の早くからしていたのだが、引越しをするのは遅かった。そこに人気がないと気がつくと、「あそこはどうなっているのかしら?」と私に向って尋ねる女性などがいる。こういう事になると尚一層と勘を働かせるのが女性である。
「いやー、職の関係でね」とかなんとか適当な答えが、またまた巷の話題を提供してしまったかも知れない。
スーパーに行くとこれまたご近所さんの醸造所の者が感情移入しながら、「元気?」と聞くので、「いいよ、それであんたは」と菜っ葉服 ― 実際はワイン職人のブルーの作務衣であるが ― の職人に答える。
顔を覗きこまれるこちらは、内心「なんか可笑しいんじゃないの?なんか違うんだな。なんか奥歯に挟まっていませんか?」と、フーテンの寅さんのような「あんたなんか知っているでしょ?」との心象になるのだ。
そうなるとこちらも、「今年のワインの出来はどう?」と休暇明けという言葉に耳を貸さずに攻勢に出るのだ。高級リースリングは酸が強いので特に良いらしい。醸造所の公式報告書面よりも明らかに上回る評価は、自分が作っている者の評価に違いない。
なるほど陽射しの弱かった2004年と似ているが誰かが言うように2002年にも近いようで、長持ちする高級ワインが出来上がりそうなのである。夏以降に進展のあった2007年をまだ追っていると言うと、2008年でも良いような表情をされた。
当時話した2005年の印象はその構造的な良さの反面若干酸が弱いということで再確認出来たが、まだまだ2001年が飲み頃なのを知り、先日彼のアドヴァイスを受けて買い出した友人の買物内容も説明した。
2007年産の「カルクオーフェン」は最初はその土壌以外の匂いがあったようだがそれが消えて、既にかなり楽しめると言う。2007年の産の「ランゲンモルゲン」についてもコメントしておいたが、2007年に顕著な夏の谷の深さつまりその後のワインらしくなる大きな山の過程を指摘しておいた。つまり、それは葡萄の実の熟成が良かった2007年産のリースリングの特徴のようで、健康優良児の発育の良さのようなものだろう。
そのような比較をすれば、2005年産は新生児の時から体格は立派だがの肥満傾向があり、2006年産は急にませだした子供は大人になるのも早いが老けるのも早い感じだ。2003年のそれは反対にあまりにも健康優良児で相撲取りの様に早死にしてしまったと言えよう。2008年のヴィンテージは、双葉より芳しくのようで、酸が効いた90年代半ばのようなリースリングらしいワインが出来上がりそうである。だから、嘗て良かったような土壌のワインが期待出来るらしい。
あまり良い物を売っていない野菜売り場の通路を塞ぐかたちで長話をしていると、見知らぬご婦人が根っ子を持ってこれはどうして食せるかと聞く。ミネステローネに使うためにサヤエンドウも掲げて尋ねるのである。「根っ子はイタリア料理にも、僕もこちらの方は使うよ」と答えると「私は良い料理人ではないから」と、ご婦人はそれを買って行く。
こうなるとこちらもここ暫らく関心を持っていた醸造の中身の話となる。焦点は、炭酸注入の是非とステンレス樽醸造の影響、その一時発砲入り流行の炭酸入りワインに置けるの有名醸造所批判実践、酸化・還元醸造の比較、天然酵母の醸造の問題などかなり専門的な立ち話となる。容易にここに書けないほどの内容であるが、他の醸造所の名前を挙げて最近怪訝に思っている実例とすると、苦笑いが帰って来たのでこちらも「皆まで言うな」と満足する。キーワードとして現代的な趣向のワイン醸造を一先ず挙げておく。
写真:思いのほか根強いサボテンの生育状況
仕事探しは夏前の早くからしていたのだが、引越しをするのは遅かった。そこに人気がないと気がつくと、「あそこはどうなっているのかしら?」と私に向って尋ねる女性などがいる。こういう事になると尚一層と勘を働かせるのが女性である。
「いやー、職の関係でね」とかなんとか適当な答えが、またまた巷の話題を提供してしまったかも知れない。
スーパーに行くとこれまたご近所さんの醸造所の者が感情移入しながら、「元気?」と聞くので、「いいよ、それであんたは」と菜っ葉服 ― 実際はワイン職人のブルーの作務衣であるが ― の職人に答える。
顔を覗きこまれるこちらは、内心「なんか可笑しいんじゃないの?なんか違うんだな。なんか奥歯に挟まっていませんか?」と、フーテンの寅さんのような「あんたなんか知っているでしょ?」との心象になるのだ。
そうなるとこちらも、「今年のワインの出来はどう?」と休暇明けという言葉に耳を貸さずに攻勢に出るのだ。高級リースリングは酸が強いので特に良いらしい。醸造所の公式報告書面よりも明らかに上回る評価は、自分が作っている者の評価に違いない。
なるほど陽射しの弱かった2004年と似ているが誰かが言うように2002年にも近いようで、長持ちする高級ワインが出来上がりそうなのである。夏以降に進展のあった2007年をまだ追っていると言うと、2008年でも良いような表情をされた。
当時話した2005年の印象はその構造的な良さの反面若干酸が弱いということで再確認出来たが、まだまだ2001年が飲み頃なのを知り、先日彼のアドヴァイスを受けて買い出した友人の買物内容も説明した。
2007年産の「カルクオーフェン」は最初はその土壌以外の匂いがあったようだがそれが消えて、既にかなり楽しめると言う。2007年の産の「ランゲンモルゲン」についてもコメントしておいたが、2007年に顕著な夏の谷の深さつまりその後のワインらしくなる大きな山の過程を指摘しておいた。つまり、それは葡萄の実の熟成が良かった2007年産のリースリングの特徴のようで、健康優良児の発育の良さのようなものだろう。
そのような比較をすれば、2005年産は新生児の時から体格は立派だがの肥満傾向があり、2006年産は急にませだした子供は大人になるのも早いが老けるのも早い感じだ。2003年のそれは反対にあまりにも健康優良児で相撲取りの様に早死にしてしまったと言えよう。2008年のヴィンテージは、双葉より芳しくのようで、酸が効いた90年代半ばのようなリースリングらしいワインが出来上がりそうである。だから、嘗て良かったような土壌のワインが期待出来るらしい。
あまり良い物を売っていない野菜売り場の通路を塞ぐかたちで長話をしていると、見知らぬご婦人が根っ子を持ってこれはどうして食せるかと聞く。ミネステローネに使うためにサヤエンドウも掲げて尋ねるのである。「根っ子はイタリア料理にも、僕もこちらの方は使うよ」と答えると「私は良い料理人ではないから」と、ご婦人はそれを買って行く。
こうなるとこちらもここ暫らく関心を持っていた醸造の中身の話となる。焦点は、炭酸注入の是非とステンレス樽醸造の影響、その一時発砲入り流行の炭酸入りワインに置けるの有名醸造所批判実践、酸化・還元醸造の比較、天然酵母の醸造の問題などかなり専門的な立ち話となる。容易にここに書けないほどの内容であるが、他の醸造所の名前を挙げて最近怪訝に思っている実例とすると、苦笑いが帰って来たのでこちらも「皆まで言うな」と満足する。キーワードとして現代的な趣向のワイン醸造を一先ず挙げておく。
写真:思いのほか根強いサボテンの生育状況