このブログ、3日坊主の私としては、
いつまで続くか心配でしたが、
毎日何人かの人が覗いてくれているようなので、
それを励みに、思い出した様に更新しています。
気づいたら、カウンターも400を超え、
ちょっと嬉しい今日この頃です。
さて、ドライなアメリカ文学の次は、
ウェットなヨーロッパ物でもと思っていたのですが、
昨日、面白いマンガを見つけてしまったので、紹介します。
「天顕祭」、白井弓子・・・って言っても分からないですよね。
私も表紙の絵の目力に射抜かれて衝動買いしただけですから。
帯には「文化庁メディア芸術祭マンガ部門で初の同人誌受賞作品」
とあります。
こういう筆致のマンガ、思わず買ってしまうんですよね。
「文化庁メディア芸術祭」って、地味だけど頑張ってますよね。
黒田硫黄であったり、吉田秋生だったり、
本当に今、旬だなという漫画家が受賞していますね。
吉田秋生の「海街diary」、今本当に良いですよね。
(願わくばオノ・ナツメにもあげて下さい。
「無限の住人」のアニメ化を記念して沙村広明にも・・・・。)
さて、「天顕祭」とはいかなる作品かというと、
舞台は多分核戦争後の近未来、あるいは多元宇宙のどこかの日本。
人々は汚染を免れた土地に密集して暮らしています。
汚染地域には竹が生え、土地を浄化しています。
街の雰囲気は昭和30年代の日本。
復興建築の足場を竹で組む鳶職の若頭「真中」は、
飲み屋でホステスの「木島」を酔った勢いでスカウトしてしまいます。
高い所が好きな「木島」は女ながらも、現場で働き出します。
街は折りしも「天顕祭」が近付いて活気付いています。
今年の「天顕祭」は50年に一度の大祭。
「天顕祭」は、背中に「蛇のウロコの印」が顕れた女性を
「クシナダ姫」としてヤマタのオロチに捧げる祭りです。
実際には有力者の娘の背中に、縄で跡を付けるだけですが・・・。
実は「木島」は、とある村の「クシナダ姫」でした。
日々強まる大蛇の幻覚と、クシナダ姫の幻影に恐れ、
村を出奔していましたが、とうとう連れ戻されてしまいます。
彼女の背中には蛇のウロコの傷跡がくっきり浮かび、血が滴ります。
そんな「木島」を奪還すべく、「真中」は作業員を装い村に向かいます。
そして、スサノオ伝説の渦中に巻き込まれていきます。
とまあ、マンガではありがちなヒロイック・ファンタジーなんですが、
「蟲師」にも通じる独特の世界観や生活感、人々の心の機微を緻密に描き、
伏線の張り方や、エピソードの繋がりも破綻が無く、
ずっしりとした読み応えのある一冊に仕上がっています。
古事記を題材にしたマンガは安彦良和の「ナムジ」が有名ですが、
あちらは、神話を古代史に変換して、日本のルーツを探っているのに対し、
「天顕祭」は、古事記を素材に、もう一つの世界の神話を再構築していて、
「風の谷のナウシカ」に通じるものがあります。
シブリの宮崎五郎さん、父ちゃんに怒られてもいいから、
この作品を劇場アニメにしてくれないかな。
「ナウシカ」と「もののけ姫」を繋げる作品として、どっしりと重たい作品を・・。
しかし、同人誌にこんなクオリティーの高い作品が掲載されているなんて驚きです。
同人誌って、オタクがキャラクターを弄ぶ世界だと思っていました。
かつて「超人ロック」が同人誌(当時は手描き原稿の回覧だったようですが)から
登場したように、商業誌に相手にされない隠れた作家が沢山いるのでしょうか?
我が国の首相は、「ゴルゴ13」がお好きな様ですが、
私としては、せめて「ワイルド7」が好きと言って頂く方が、
この国の未来に期待が持てます。
混迷を極める政治の世界はしょうがないとしても、
黒田硫黄やオノ・ナツメの様な作家が活躍し、
同人誌からこんな作品が生まれる「日本文化の厚み」に、
この国の将来は捨てたモンじゃないな・・・なんて期待してしまいます。