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不必要な沖縄米軍

2009-12-01 15:33:00 | 時事/金融危機


■ 沖縄は中国の中距離ミサイルの射程内 ■

普天間基地移設問題で、態度がはっきりしない民主党に世論は冷ややかです。「国家間の同意事項を反故にする事は許されない」と言う保守系の叱責も聞かれます。しかし、在日米軍、在沖縄米軍の有用性を無視した論議は無意味です。

中国の有する中距離弾道ミサイルの射程距離は1800Kmと言われています。沖縄を中心に半径1800Kmの円を描いてみると、中国沿岸部のみならず、内陸部もその円の中に納まります。この円の範囲内から発射された中距離弾道ミサイルは確実に沖縄に到達します。

■ 無意味なミサイル防衛 ■

イージス艦やPAC3(ペイトリオットミサイル)などミサイル防衛(MD)に日本は多額の投資をしてきました。しかしMDの実体は極めて脆弱な盾です。湾岸戦争当時のペイトリオットミサイルの命中精度は10%程度だったと言われています。

その後ミサイル技術は格段に進化している事は、容易に想像出来ますが、迎撃される側のミサイルが手をこまねいている訳はありません。弾道ミサイルも多数のダミー弾頭を使用するタイプのミサイルが出現しています。攻撃と防衛はイタチごっこです。

弾道軌道から高速で落下してくるミサイルを迎撃する事は容易ではありあません。野球のホームランボールを観客席からピストルの弾で打ち落とす事に近いものがあります。敵の一発のミサイルを打ち落とすのに、多数の迎撃ミサイルを要します。マシンガンの様に無尽蔵に迎撃ミサイルが存在しなければ、10発もミサイルを撃ち込めば、1発くらいは確実に着弾します。

■ 普天間代替飛行場の意味 ■

沖縄の米軍飛行場が嘉手納基地だけでは、嘉手納の滑走路が使用不可能になった時に事実上沖縄の航空戦力が使用出来なくなるというのが、アメリカ側の言い分です。バックアップの滑走路としての普天間代替基地を重視しています。

確かに有事に限らず、航空機の事故等により嘉手納が使用不能になった場合、バックアップの滑走路は不可欠です。ただ、離着陸だけなら那覇空港でも代替出来ます。但し、民間の空港では弾薬の補充は出来ませんから、米軍にとっての普天間代替基地の重要性は容易に想像出来ます。

■ 米中有事には無意味なバックアップ ■

米中(日中)の間で本当に戦端が開かれれば、沖縄の米軍基地は真っ先にミサイル攻撃の餌食です。攻撃目標としてあまりに巨大な滑走路を中距離ミサイルから守る手立てはありません。有事の際は中国は沖縄の航空戦力を最優先で攻撃するはずです。
結局アメリカの主張する普天間代替飛行場は、平和な時には重要ですが、有事には無意味な代物です。

■ 台湾海峡においても既に崩れている軍事バランス ■

以前台湾の総統選に絡んで、台湾海峡の緊張が高まった時、アメリカは空母を台湾海峡に急派して中国に睨みを効かせました。この当時の中国の海軍は貧弱で、台湾海峡の制海権はアメリカにありました。

しかし現在の中国海軍は様変わりしています。キロ級を始め、多数の潜水艦を有し、空母の建造まで初めています。台湾海峡は既に中国の海になっています。次に中台間で緊張が高まっても、第7艦隊は中国沿岸に近寄る事は出来ません。

台湾はその事実を理解していて、F16を米軍から調達していますが、台湾の空港も沖縄同様、中国のミサイルの良い標的です。

■ 極東の軍事的覇権は既に中国の手中にある ■

戦争には政治的側面が強く働きますから、中国が直ぐに台湾や日本を攻めて来る様な事はありません。しかし、極東の軍事的覇権が既に中国の手中にある事は理解して、普天間基地移設問題や、在日米軍問題を論議する必要があります。

長い自民党政権の時代は、ソ連に対しても、中国に対しても在日米軍は充分ば防衛戦力となりました。しかし現在の在日米軍は、極東に取り残されたアメリカの人質です。日本や韓国にはありがたい存在ですが、当のアメリカにとってはありがたく無い事態です。

■ ハワイーグアムに後退する米軍 ■

極東のアメリカ軍は中長期的にはハワイ-グアム・ラインまで撤退する事が確定しています。中国とアメリカの軍の首脳の間でもこの事は話題に上っています。韓国の米軍は縮小が決定しています。沖縄の海兵隊も何割かがグアムに移転します。

表向きは装備の軽量化により機動性が高まり、グアムからでも短時間で全世界に展開出来るという理由からですが、実際は軍事均衡の崩れた極東からの撤退です。敵の鼻先に餌をぶら下げておく必要は無いからです。

ハワイから東の太平洋はアメリカが、西の太平洋は中国が管理するというのが、米中の暗黙の合意事項です。

従来、台湾海峡と東シナ海が日本のシーレーンとして重要視されてきました。海上自衛隊の存在意味もシーレーンの安全確保でした。しかし、それはアメリカ第7艦隊あっての事でした。アメリカ無き後は、日本だけで守れる海域ではありません。

■ 問題は米軍撤退の時期 ■

普天間問題の最大の関心事は、米軍のグアム撤退の時期でしょう。

従来であれば、今後10年は米軍は極東から撤退する可能性はありませんでした。しかしリーマンショック後の経済危機がアメリカの崩壊を早めるならば、今後2~3年の間にも撤退が現実化するかもしれません。ドルが暴落してアメリカの経済が壊滅的な打撃を被れば、米軍を海外に展開する予算も無くなります。

■ 答えを先延ばしする小沢民主党 ■

小沢幹事長はヒラリーとの会談で、「極東の防衛は第7艦隊で充分」と言いました。これは小沢幹事長の本音です。事実、在日米軍は中国の中距離ミサイルの標的意外の意味を成しません。

在日米軍の軍事的意味合いは消滅していますが、アメリカの人質という政治的意味合いは高まっています。しかし、中国が責任あるアジアの大国として、アメリカの認めるパートナーに成長するならば、極東の米軍の存在意味は消滅します。

小沢民主党はこの事を踏まえて、普天間基地の答えを先延ばししています。複数の閣僚が好き勝手な事を言っている様に見えますが、党内調整が出来ない様に見せかけて時間稼ぎをしています。

■ 日本の核武装を警戒する米中 ■

アメリカ軍が極東から撤退すれば、日本の防衛はマルハダカです。数年後には通常戦力で日本は中国に太刀打ち出来なくなっているでしょう。

そこで台頭してくるのが「日本の核武装論」です。北朝鮮が核兵器に魅力を感じた様に、アジアで日本が孤立した場合、日本人の一部に核武装論が噴出する事でしょう。事実、核兵器は最も安価な防衛手段です。

しかし、日本の核保有はアジアの軍事均衡を脅かします。日本が核を保有すれば韓国も対抗して核を保有するでしょう。さらに東南アジア諸国も・・・・。

核不拡散を政治モットーとして掲げるオバマ(アメリカ外交評議会)としてはこれは避けなければならない事態です。

■ 核密約の存在を明らかにするという事 ■

民主党は沖縄返還時の「核の密約」を公表しようとしています。しかし、日本人のどれだけの人が、米軍が日本に核を持ち込んでいないと信じているでしょうか?

核の密約の公表は、国民に「やっぱり・・」という反応しか起こしません。むしろ大多数の日本人が、中国が台頭する中で、米軍の核の傘の恩恵を感じています。

現在は軍事均衡をもたらす米軍の核兵器ですが、中国がさらに台頭する中ではアジアの軍事緊張を高める存在になります。核密約が公表されれれば、中国は沖縄の米軍の撤退を要求してくるかもしれません。結局、米軍撤退の口実をアメリカに与えます。

■ 軍縮が加速する ■

多極化する世界では地域内の軍事的対立は解消して行きます。それは通常戦力の縮小を意味します。それぞれの地域なNTOの様な集団安全保障体制を構築し、地域内での紛争を抑止します。

中国さえ自重すれば、単独覇権国家は出現しませんので、地域ブロック間での軍事的紛争は事実上無くなります。多極化世界とは、正しく機能すれば軍縮が可能となる世界です。

国連、あるいはG20が将来的に有効な調整機関として機能すれば、人類に初めて平和な期間が訪れるかもしれません。・・・最も、理想はいつもあえなく崩れ去りますが・・・