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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

「そんな事は起こるはずが無い」・・・生物はリスクを正確に認識出来ない

2011-01-24 17:10:00 | 時事/金融危機



金融危機の第二波は来るのか? ・・・・ 来るかもしれないし、来ないかもしれない

米国財政は破綻するのか?   ・・・・ 破綻するかもしれないし、しないかもしれない

ドルは崩壊するのか?     ・・・・ 崩壊するかもしれないし、しないかもしれない

日本の財政は破綻するのか?  ・・・・ 破綻するかもしれないし、しないかもしれない

中国バブルは崩壊するのか?  ・・・・ 崩壊するかもしれないし、しないかもしれない

・・・危機はいつも未来に存在します。

■ そんな事が起こる訳が無い ■

上に書かれたリスクは、時間軸を長く取れば、全て50%の確立で発生しうるリスクです。

しかし、人間はリスクを低く認識する習性があります。
これは生物に備わった本能とも言えます。


リスクを正確に認識すると、生物は生きていけません。
ネズミが巣穴を出ると、外的に捕食されるリスクが高まります。
多くのネズミがこうして、タカやフクロウやキツネの餌になります。

しかし、ネズミがリスクを正確に理解したら巣穴から出る事が出来ません。
巣穴に篭ったままのネズミを待ち受けるのは、餓死という新たなリスクです。

この様に、生物はリスクを実際よりも低く見積もる事で、生存を続けてきました。

「そんな事は起こるはずは無い」という思考は、人間の本能に支配されています。

■ 「そんな事」が起きたらどうするの? ■

アメリカのメガバンクが破綻すれば、世界の金融機関が破綻する。

オバマがある日突然、アメリカのデフォルトを宣言する。

イスラエルが突然イランを攻撃する。

日曜日の新聞に、預金封鎖の告知がされる。

・・・「そんな事は起こるはずが無い」と思っています。

銀行の破綻は突然やって来ます(リーマンは突然破綻しました)。

ニクソンは突然、ドルの金の兌換を停止しました。

日本軍は突然、真珠湾を攻撃しました。

戦後の日本の預金封鎖は、日曜日の新聞で突然告示されました。

「そんな事は起こるはず無い」から、起きた時の効果は絶大です。
過去の出来事が全てを物語っています。

■ 預金が危ない? ■

株やFXなどに手を出していないから大丈夫?
そんな事はありません。
銀行預金も、郵便貯金も、個人年金も、全てリスク資産です。

「ペイオフがあるから大丈夫!!」現在の預金保険機構の積立金では、メガバンク一行だけでも救う事は出来ません。

大きな危機が発生した時、人々は銀行や郵便局の窓口に殺到するでしょう。
しかし、日本の夜の間に、NYやロンドンで危機が発生したら、翌朝、シャッターを開ける銀行があるでしょうか?

■ 日本国債が危ない ■

明確な危機が表面化し、人々が預金を引き出し意思を示した時、日本国債は暴落します。
金利の上昇は、日本の財政を直撃します。

■ ローンは固定で、運用は流動で ■

資産運用の鉄則は、「ローンは固定で、運用は流動」です。
危機が表面化すれば、金利は上昇します。
住宅ローンの2.5%の金利が安く感じる時代がやってきます。

日本が財政破綻を回避する為には、大幅なインフレ政策が必要です。
固定金利で借りている住宅ローンの返済は、インフレで所得が上昇すれば、相対的に安くなります。
一方、賃貸住宅の家賃は、インフレに連動して上昇していきます。

■ 最大の流動性を確保 ■

普通預金はいつでも引き出せますから、ある程度の流動性を確保しています。
しかし、預金封鎖をされては、その流動性も無意味です。

最大の流動性は、「現金」です。
しかし、それとて、新券発行という政府の裏ワザを前には無力です。


■ だって、そんな危機は来ないかも知れないじゃない? ■

「だって、そんな危機は来ないかも知れないじゃない?」
家内に保険の解約や、定期の解約の話をすると、こう反論されます。

「その時は皆同じよ。戦後は皆貧しかったのよ」
実家は母は、老人はそんな難しい事は分からないと言います。

では、もし「危機」が訪れたらどうするの?

人間は来ないかもしれない危機よりも、目先の1%の金利が大事に思える生き物です。

確実に言える事は、誰もが資産保全を意識した時に、生き残れる金融機関は存在しないという事です。

その時は、銀行のシャッターは開く事はありません。



・・・皆さんはリスクヘッジをされているでしょうか?


ステルスインフレ②・・・世界は一つ

2011-01-24 15:46:00 | 時事/金融危機


■ 消えた「円」の不思議? ■

上のグラフは日本のマネタリーベースとマネーストック(マネーサプライ)の関係です。

私は経済学者ではありませんから、あまり詳しくは説明出来ませんが、

マネタリーベース = 日銀の通貨供給量
マネーストック  = 市中に出回る通貨と預金の総量

と簡単に定義する事が出来ます。

リフレ論者達は、「日銀が通貨を大量に供給してマネタリーベースを拡大すれば、国内に通貨が供給されて景気は上向く」と論じています。

しかし、グラフを見れば明確な様に、2000年代に入って日銀はゼロ金利政策を採用し、大量の「円」を供給してきましたが、日本のマネーストックは増えていません。

では、供給された「円」は何処へ行ったのでしょうか?

■ 円キャリートレードで国外に流出した円 ■

日銀のゼロ金利政策で潤沢に供給された「円」は「円キャリー・トレード」として、海外に流出しました。

① 日銀が低金利(ゼロ金利)の円を供給
② 「円」を買って、「外貨」に交換する
③ 外貨運用で利ざやを稼ぐ。(国債運用でも5%程度の金利が得られる)
④ 稼いだ「外貨」を市場で安く調達した「円」に交換する
⑤ 「円」を返済し、運用益と為替差益を得る

こうして海外に「円」が流出するので、日銀がマネタリーベースを拡大しても、国内のマネーストックは一向に増えませんでした。

■ ゼロ金利がもたらした円安 ■

大量に供給された「円」は為替市場でだぶ付く事になり、「円」は実力以上に値下がりします。

① ゼロ金利政策で大量に「円」が供給され「円安」を誘導する
② 「円安」によって輸出が拡大する。
③ 貿易黒字が拡大する

2000年代初頭に国内の不景気とは対照的に、輸出企業が市場最高益を更新していった背景には日銀のゼロ金利政策の恩恵がありました。

■ 「財政赤字の拡大」を可能にする「貿易黒字」 ■

「ドーマの定義」というのがあります。
 「名目GDPの成長率 > 国債金利」であれば財政は破綻しない」という定理です。

家計でも所得が増えれば、借り入れ上限金額も増やせます。国家でも同様であるという理論です。

① 国債金利は限りなくゼロに近い
② 輸出によって名目GDPが成長する
③ 「ドーマの定義」によって、財政破綻が回避できる。


尤も、私はかなり胡散臭い理論に思えます。何故なら、家計では「稼ぐ人=返済する人」ですが、国家では稼ぐのは国民で借金するのは国家です。「国民資産=国の資産」という考え方無くしては成り立ちません。

国家が財政破綻しそうになったら国民資産を没収しなければ「ドーマの定義」は成り立ちません。

いずれにしても、日銀は巧みな金利操作によって、日本の財政赤字拡大を可能にしました。

■ 円はアメリカでバブルを作った ■

この時期、アメリカは盛んに日本に金融緩和を促しました。

① 低コストで「円」を手に入れる
② 日本からの輸入物価を安く抑え、米国内の消費を支える

いずれにしても、ゼロ金利政策は日本とアメリカの双方にメリットがありました。

しかし、過剰に供給された「円」はアメリカで住宅バブルを成長させていきます。

① 住宅価格が上昇する
② アメリカのインフレ率が経済の実体以上に上昇する(バブルの生成)
③ 米国金利が高止まりする
④ 世界の資金が米国に還流する

この様に、日本の不景気を背景としたゼロ金利政策が、アメリカでマッチポンプの様にバブルを膨らめました。

■ 日銀の金利引き上げが招いたリーマンショック ■

日銀は2006年7月にゼロ金利政策を解除します。

これによって「円キャリートレード」の流れが逆転します。アメリカの住宅市場から急激に資金が流出してゆきました。

「住宅価格は永遠に上昇し続ける」というアメリカ人の幻想が崩壊した瞬間です。

① 日銀のゼロ金利政策解除
② 円キャリートレードの逆転
③ 住宅市場からの資金流出
④ 住宅価格の下落

サブプライムローンは元々ローンの返済能力の無い人々が、住宅価格の将来的な値上がりを担保に組んだローンです。低金利で供給される「円」が無ければ、こんなリスクの高いローンは生まれなかったでしょう。住宅価格下落は、最も返済能力に劣るサブプライム層のローンを直撃します。

① 住宅価格が下落する
② 住宅価格の値上がりを見越した「ローンの借り換え」が出来なくなる
③ サブプライム層のローンから破綻し始める

サブプライムローンはよりリスクの低いローンと一緒にごった煮にされ、MBSとしてさらに切り売りされていまいた。

① MBSや派生的金融商品にサブプライムローンが混入
② MBSを中心に債権価格が暴落
③ 金融機関に債務超過の疑いが発生する
④ リーマンブラザーズが生贄となり、世界は金融機関を税金で救済する

東洋の島国の不景気が、世界の不景気の引き金を引いた瞬間です。

■ ドルキャリートレード ■



上のグラフはリーマンショック後の「ドル」と「ユーロ」と「円」のマネタリーベースの推移です。

ドルは二倍に膨れ上がっているのに対し、円は増えていません。

円高・ドル安を経済の観点から難しく説明するよりも、このグラフを見れば一目瞭然です。
ドルはリーマンショック後、1/2に減価しているのです。

低金利で津波の様に供給されるドルは、日本の場合と同様、マネーストックには結び付かず、ドルキャリートレードが発生します。

① ドルが津波の様にばら撒かれる
② 新興国市場に投資される
③ コモディティー市場(資源・食料・石油)に投資される
④ 債権市場に投資される
⑤ 株式市場に投資される

この様に低金利で供給されるドルは、実体の無いバブルを生み出しています。

ダウ平均株価が1万ドルを回復したのも、アメリカ国債が買われ続けるのも、コモディテー市場が高騰するのも、全て偽りの回復です。

■ ステルス・インフレ ■

グローバル経済では、金融緩和政策は自国内よりもよりリターンの大きい市場に資金を供給する結果となります。

リーマンショック以降、世界に供給された莫大なマネーは、新興国やコモディテー市場でバブルを形成すると共に、本来価値が下がるはずの株や債権の価格を不当に吊り上げています。


これは、隠れたインフレ=ステルス・インフレです。

バーナンキは「インフレなど15分で潰して見せる」と豪語していますが、中国やブラジルで発生するインフレは15分では潰せません。

繋がった世界では、金融緩和政策は遠くで見えない危機を生み出すのです。