■ 「ど根性ガエル」を覚えていますか? ■
ある日一人の少年が原っぱで小石につまずいて転んだら、
下敷きになったカエルがシャツに張り付いちゃった・・・。
「そんあの、あり?」と思わず突っ込みたくなる様な
「ど根性ガエル」というマンガ(アニメ)が昔ありました。
設定らしい設定はそれくらいで、
シャツに張り付いて離れない、「平面ガエル」の「ぴょん吉」と、
中学生の「ひろし」のドタバタした日常がひたすら続くこのマンガは
当時(1970年代前半)の子供達には結構人気がありありました。
今思い出そうとしても、「ゴリライモ」とか「梅さん」とか
キャラクターの断片しか思い出せないのですが、
当時小学生だった私は、「ぴょん吉」と「ひろし」の掛け合いが好きで
結構楽しんで見ていました。(夕方の再放送かな?)
当時の「ギャグマンガ(アニメ)」はとにかく単純なものが多かった。
世界設定は「どっかの、普通の町」
登場人物は、少年とその周辺の10人くらいの「普通の人」
起こる事件と言えば、誰かな何かを無くしたとか、
誰かの勘違いでイザコザが起きたとか、そんな事くらい。
「ど根性ガエル」なんて「ヨシ子」先生に思いを寄せる
「梅さん」の話だけで、引っ張る、引っ張る・・・。
ほとんど、これがメインストーリーかってくらい・・・。
赤塚不二夫の「天才バカボン」や、
藤子不二雄の「ドラえもん」と比べるまでも無く、
明らかにB級ギャグ漫画の「ど根性ガエル」は、
しかし、一方で、今でも同年代の酒の肴になるくらい
印象の深い作品でした。
シャツの中の「平面ガエル」が「しゃべって、動く」
もう、そのインパクトだけで全てOK。
■ 設定は単純な方が良い ■
チャンピオンで連載され、
TVアニメの2期目に突入した「イカ娘」というアニメをご存知でしょうか?
(大の大人が知ってたら、むしろコワイかも・・・)
多分、最近のアニメの中では「タイガー&バニー」同様、
全然期待されていなかったのに、
何故か大人気になってしまった作品です。
海から来た「イカ娘」が、
海を汚す人類を「侵略」する為に浜辺に現れ、
「海の家」レモンで何故か働くハメに・・・。
・・・・これだけ・・・。
しかし、たった「これだけの話」が、面白くて面白くて・・。
「イカ娘」が語尾に付ける「~じゃなイカー?」とか、
「~ゲソ」なんて言い回しは、
頭に一度こびり付いたら、もう二度と離れません。
もう、イカの吸盤状態。
「ど根性ガエル」同様、「イカ娘」のキャラと、
単純でシンプルな設定故に、
作品はどんな無理のある設定も許容し、
さらにそれを、力強いギャグの連打に代えてしまいます。
「おいおい、それは無いんじゃなイカー!」って、思わず突っ込みを入れる面白さ。
■ 武器は触手、目的は人類の侵略 ■
ある日海の底から浜辺に現れた白いワンピースの少女の目的は「地上の侵略」。
彼女の髪は、10本の触手。
頭に被る帽子に見えるのは、イカの耳(?)。
「許さないでゲソ、
許すまじ人類。
私はお前たちの腐った地上を侵略してやるでゲソ」
海の底に響く怪しい声で始まるアニメ版第一期は、
その直後に「侵略、侵略、侵略、侵略・・・」で始まる、
あまりにもキャッチーでチープなオープニングに突入して、ビックリ!!
美人の姉、千鶴(ちずる)と、活発な妹の栄子が切り盛りする海の家「れもん」は、
海水浴客で繁盛しています。
と、その時、テーブルの上に仁王立ちするフトドキモノが出現。
「人類よ、良く聞け!
今からこの家を人類侵略の拠点にさせて頂くでゲソ!
フ・・恐怖で言葉が出ない様でゲソねぇ。
心配しないでも、お主達を殺したりはしないでゲソ。
雑用係として、こき使ってやるでゲソ。」
「ハイ、ハイ・・・そこまで。」
栄子に店の裏に連れ出されるイカ娘。
「何なんでゲソ、私を何処に連れて行くでゲソ?」
「一つ聞くが、そのコスプレは何だ?」
「そう言えば自己紹介が未だだったでゲソ。
私は海からの使者、イカ娘でゲソ!!」
凄い、ったった30秒で掴みはばっちり。
その後、何故か店を手伝うハメになったイカ娘。
「たった30人の客もさばけないのに、
人類なんて侵略出来ると思ってるのか?
侵略ってゆうのはつまり、
64億人の人間をオマエ一人で支配するってことだ!」
「ワアアア・・・」
「何人だと思ってたんだよ・・・」
「千人くらいだと思ってたでゲソ・・」
「千人ならどうにかなると思ってたのかよ・・・」
万事この調子で話しは強引に展開して行きます。
壮大な野望を抱く、純粋で人の良いイカ娘は、
日常という超えがたい壁にぶつかり
海の家「レモン」で働きながら、
何故だかすっかり地上に馴染んでゆきます。
■ ハートウォーミングな抱腹絶倒 ■
イカ娘の笑いのツボは、「真剣な者の滑稽さ」にあります。
イカ娘を温かく見守る周囲に対して、
イカ娘はあくまでも真剣です。
子供を手なずけたり、店の占拠を敢行したり・・・。
彼女はかなり論理的に侵略を敢行しますが、
いつも人情の前に敗北します。
イカ娘の視点で見る日常の風景は、
どれも新鮮できら輝いて見えます。
今時の小学生よりも純真なイカ娘の目を通して、
私達は日常を再体験してゆきます。
ちょっとした心遣いに感動し、
ちょっとした社会の欺瞞に憤慨しまs。
私達が当たり前と思っていた世界は、
意外に面白く、突っ込み所満載で、
そして、人の情は思っていたよるずっと篤いのです。
そして日常を、真剣に生きるイカ娘は、
日常のもう一つの側面であるゴマカシの壁に阻まれ、
その時に笑いが生まれます。
私達が、日々を生きるという事は、辛い様に思えますが、
意外と傍目には滑稽に見えたりするのでしょう。
そして、そろそろ助け船でも出してやろうか・・・
そんな気を起こさせるのでしょうか。
色々と思う所の多い世の中ですが、
イカ娘を見ていると、
「世界は捨てたもんじゃないじゃなイカー!」
そう思えて来るから不思議。
是非、ご家族で、思いっきり笑って下さい。