■ 「大学ぐらい出ていないと」 ■
子供を大学に通わせる最大の理由は「大学ぐらい出ていないと、まともに就職が出来ない」というものでしょう。確かに就職の応募資格に「大卒以上」と書いてある会社は多い。
子供は子供で、「大学出の方が就職に有利だし、皆行くんだから俺も大学に行くか・・・」程度の気持ちで適当に受験勉強らしきものをやって、親に学費を出してもらい大学に進学します。
■ 大学を卒業したのに就職が出来ないのは何故? ■
多くの大学生が入学後はバイトとコンパに明け暮れます。最近は文科省が厳しくなったので、大学の授業数は増えていますが、それでも大学生には遊ぶ時間が山程あります。
そうして、何となくギリギリの出席日数と適当な成績で大学4年生を迎え、就職活動を始める学生も多いと思います。そんな学生が何社会社を受けても「お祈りメール」の山を築くだけです。何故なら、彼らは企業が求める「大卒」の要件を満たしていないから。
少子化の時代、企業は人手不足に陥っています。企業が求めているのは「優秀な人材」と「安い労働力」です。上位の大学でしっかり学び、しっかり人脈を築いた人達は「優秀な人材」として引く手あまたでしょう。
一方、中堅以下の大学で、何となく学生生活を送った人は「安い労働力」と見なされるので、ここで学生と企業の間に「ミスマッチ」が生まれます。「ミスマッチ」は妥協によって解消します。
現在の企業は「少数の将来の幹部候補」と「、適当数の即戦力となる経験者」と、「多くの安い労働力」を求めています。何社も応募して合格できない学生は、妥協の結果「安い労働力」を選択します。この多くがフリーターです。高卒資格でも就職できる職種は彼らのプライドが許さないので、「とりあえずフリーター」となって「確定」を逃れます。
■ 在学中から「安い労働力」として重宝される学生 ■
実はフリーターになる様な学生は、在学中から勉強よりもアルバイトに精を出します。現在の日本は若年労働者の不足で、アルバイトは引く手あまたです。
「安い労働力」の最たる学生アルバイトですが、現在の企業はある程度の責任を学生にも負わせています。遊ぶ金欲しさでバイトを始める学生がほとんどですが、責任ある仕事を任されると仕事にヤリガイを感じ始めます。
私の知り合いの息子さんは、大学を2回も留年しましたが、その理由が「バイトが忙しかったから」。バイト先の人手不足で、シフトを沢山入れられた様です。そんなバイトは辞めてしまえば良いのですが、学生ながらも責任を感じるらしく、学業よりもバイトを優先してしまった・・・。
わが娘も旅館でバイトをしていましたが、夕方から夜12時過ぎまで働く事も多い。同じ旅館でバイトする男子学生などは厨房を手伝っていましたが夏休みなどは2週間以上休みが取れなかった。「ブラックバイトだから辞めてやる」と言いながらも、「親方が休み無しで働いていて、俺が休む訳にも行かない」とバイトながらも責任感を持って仕事をしています。(リアル版『花咲くいろは』です)
私は学生がバイトをする事は非常に良い事だと思います。バイト先での人間関係は社会の縮図でもありますし、大人達から学ぶ事も多い。
一方で、長時間バイトをすると実入りもそれなりで、年間130万年を越えてしまい扶養家族から外れてしまって大慌てした知り合いもいます。
■ 地方都市では学生が経済活動の一部になっている ■
娘が住んでいる地方都市では、若者が少ないので学生は貴重な労働力です。多くの学生が「バイトのシフトを入れまくられた!!」なんていう状況になっています。
従来、大学を誘致する地方都市は、「消費者としての学生」を期待していましたが、現在においては学生は労働力としても欠かせない存在です。大学生は地域経済の主体の一部にもなっているのです。
■ 「大卒」は要らない? ■
この様に在学中も、卒業後も「安い労働力」の供給源となってる大学生ですが、それならば大学に行く必要があるのか・・・一部の人達にとっては大学は全く無意味でしょう。親がお金をドブに捨てたるけです。
一方、高校卒業時に専門学校を選択した人は、一応専門知識や技能を身に着けて就職する人が多い。学校も大学よりは就職支援がしっかりしています。
現在は美容師や服飾系の専門学校が人気です。この様なキラキラ職種は賃金も低く、土日も働く場合が多いので、離職率も高い一方で求人も多い。職場を転々としながらも40歳位までは業界に留まる人が多いでしょう。
意識を高く持った人達は「カリスマ」などと呼ばれ、将来は経営者になって行く。
■ 18歳になったら家を出る ■
実は我が家の教育方針はシンプルで、「18歳になたら家を出る」です。小学校の頃からこれを言い聞かせています。家の出方はどうでも構いません。就職するも良し。進学してアパート暮らしも良し。親にとっては相当な負担ですが、そこは家内がしかり貯金しています。
何故18歳になたら家を出るかと言えば、私も家内もそうだったから。家内は地方から東京の学校に出て来ました。私は東京近郊から地方の大学に進学しました。
そうして親元を離れた時期が、自分達の人格形成に多大な影響を与えた事を私達は良く知っています。引っ越した晩、まだ段ボールだらけの部屋で突然孤独感がドーーっと押し寄せて来た事は今も忘れません。月末、スッカラカンの財布を抱え、カップラーメンが続く日々なんて・・・良い思い出です。
息子も娘も喜んで家を出て行きました・・・。
こうして親の家計から形だけでも切り離しておけば、生活にお金が掛かる事が骨身に染みます。就職して定収を得る事の大切さも理解できます。
■ エリートは大変だから・・・ ■
「何をしてもいいから、一人で食べて行ける様になれ、出来れば好きな事をやって食べて行けたら最高だ。やるからにはその業界でトップ1割を目指さないと生き残れない」
「大卒のエリートは社会に出ても競争が激しくて大変だぞ、給料はイイけど」
このセットも子供達に良く言って聞かせました。そもそも勉強が嫌いな子供達が、下手に「大学に行きたい」なんて言わない為の方便ではありますが、勉強が嫌いな者が勉強で身を立てられるはずが在りませんから。
息子はチャラ男なので高校3年で部活引退後は近所の美容院でバイトをしていました。毎日、若いフタッフがトレーニングが終わる時間まで一緒にシャンプーレッスンをさせてもらったり、この業界の厳しさもしっかり教えてもらいました。
美容師の専門学校を卒業して原宿に努め始めましたが、同期の4人は1年で皆辞めました。薄給で長時間労働ですから離職率、転職率は高く、ナマジの覚悟では続ける事が出来ない業界です。休日はヘアショーなどの手伝いでほぼ潰れます。それでもカリスマ美容師の助手として学ぶ事は多い様で、仕事がツマラナイと言った事は有りませんし、楽しそうにヘアショーの御供で全国を飛び回っています。
娘はご存知の通り、田舎の大学に進学させました。東京に居ると遊びまわりそうなので、田舎に幽閉です。鴨川はリゾート地なので、近くの旅館に「バイト募集していませんか」と押しかけてゆき、2年間、色々な事を学ばせてもらった様です。「お父さん、私、イセエビを素手で捕まえるられる様になったよ!!」って、お前どういう女子大生だよ・・・。
看護科の大学なので、国家試験の準備と実習で3年生からは旅館のバイトは辞めましたが、今度は近所のスーパーのに行きはじめました。「私、レジ向いてるかも知れない」なんて・・・おいおい。どうやら田舎のスーパーのレジは近所の社交場みたいになっているらしく、お客さんがレジで長話していくとか・・・・。(列で待ってるお客さんが怒らないのが凄いですが・・・)
我が家の子供達は子供達なりに大人の世界を垣間見ながら、人生を楽しんでいる様です。
「バカでもイイ、逞しく育って欲しい」・・・・って、丸大ハムのコマーシャルみたいなのが、私の望みです。