人力でGO

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2017アニメ・ベスト10・・・素晴らしい作品が多すぎる

2018-01-02 03:22:00 | アニメ
 

皆さま、あけましておめでとうございます。

新年、第一号の記事は、政治ネタにしようか、人力初詣にしようかと悩んだのですが、実は昨年のアニメベスト10を発表し忘れていた事に気付きました。

「人力でGO」の隠れた目的は、「良識ある大人にアニメの素晴らしさを布教する」事にありますので、新年第一弾の記事は、「2017アニメ・ベスト10」で行きたいと思います。

実は2017アニメは豊作でして、トップ5はどれを一番にしても良い作品が目白押し。そこで今回は順位に迷った時は「アニメ・オリジナル」である事を優先します。それと、「大人の視聴に耐える事」も評価ポイントです。


第1位 『月がきれい』


『月がきれい』 より

『月がきれい』・・・・形にならないもの
『月がきれい』・・・川越聖地巡礼 

この作品の凄さは、誰もが心の中に仕舞っている思い出にダイレクトにリンクして来る事。中学生の初恋を淡々と描いた作品ですが、中学時代に誰かに思いを寄せた経験がある方ならば、この作品を観て胸の奥がキュンとするはずです。

監督は表現の幅の広い岸誠二、シリーズ構成と全話の脚本は今注目の柿崎優子。

『秒速5センチメートル』や『言の葉の庭』など淡々と日常を描写して定評のある新海誠作品すらも「嘘くさく」感じさせる圧倒的な「情緒的リアリズム」には関心させられます。それに大きく貢献してうるのが「プレスコ」というセリフ先取りの製作手法。

普通のアニメは動画が先に作られて、最後に声優さん達が動く絵に合わせてセリフを録音すると「アフレコ」が主流。それを逆にセリフを先に録音して動画をそれに合わせるのが「プレスコ」。声優さんの力量にもよりますが、より「リアルな間」を作る事で、アフレコとは違うリズムの作品を作る事が出来ます。

『月がきれい』ではプレスコは勿論の事、背景も、演出も、脚本も「思い出のリアル」の再現に徹底しています。(現実のリアルでは無い点がポイント)。誰もが心の底にそっとしまってある「思い出」や「おぼろげな気配」の再現に徹する事で、現代の中学生の初恋の物語が、全ての人の物語に拡張されるのです。

騙されたと思って正月休みに全話見て頂きたい。幾つになっても、あなたの心の底に中学生の自分が眠っている事に気付くハズです。

今年、文句無しのナンバー1作品。・・・いえ、この10年の中でもナンバー1でしょう。


第2位 『Just Because!』


『Just Because!』より

Line時代の群像劇・・・『Just Because!』は傑作だl
『Just Because!』聖地巡礼・・・登場人物の生活圏を体験する意味

実は『月がきれい』と最後まで1位を争った作品。『月がきれい』が恋人達の二人だけの世界であるのに対して、こちらは5人の高校生男女の群像劇。故に『月がきれい』が主観的な感性に訴える手法であるのに対して、『Just Because!』は客観的視点をテクニカルに駆使して作品を構成しています。シナリオの「仕掛け」の面白さにおいては、圧倒的に『Juset Because!』が勝っています。・・・ただ、「言葉にならない何か」を表現するという点に関しては『月がきれい』の柿原脚本は驚異的。これが、1位、2位を分けた差。


5人の高校生男女の、高校3年生の3学期だけを切り取った作品ですが、とにかく群像劇の作り方が上手。こんな脚本で実写のTVドラマを作ったらヒットしそうですが・・・視聴者の感想には「これがドラマだったら観ない」という書き込みも・・・・。これがドラマが衰退する理由なのでしょう。アニメは若い世代にとってはドラマ以上の存在になっている事に、多分TV局の方も気づいているハズ。

演技以前の問題のアイドルを出演させて視聴率を確保しようとしたツケを実写ドラマが払うと時が来ている様です。先日、実家で『精霊の守り人』の実写の予告をチラリと観ましたが・・観ていて赤面してしまいました。ハリウッド資本の中国活劇映画を観た時の恥ずかしさと同質の物を感じました。尤も、NHKはこのドラマを海外に売る事を考えて制作しているので、それで構わないのでしょうが・・・アニメの方が数千歩先を行っていると感じずには居られませんでした。

第3位 『宝石の国』


『宝石の国』より

「崩壊する身体」と「再生する無機物」・・・『宝石の国』

1位でも何ら問題の無い作品で、むしろCGアニメの未来を開く点においては1位であるべき作品ですが、原作物である点と、原作未完の作品での最終話の処理の雑さが気になるので3位としました。


セリフも構図もほの原作マンガ通りなので、マンガ表現とアニメ表現に違いが良く分かる作品です。原作はシンプルな絵柄と背景ながらも、「マンガが白と黒で出来た芸術」である事を理解するには最良のコンテンツです。エッシャーの版画と同質のマジックが紙に宿っています。そして絵柄的にはアールデコの様な様式美を感じます。

一方、アニメは色彩と動き、そして声優さんの声で、原作マンガには無い魅力を創造しています。

完結していれば1位確実の作品かも知れません。


第4位 『サクラクエスト』


『サクラクエスト』より

地域振興の「課題」と「対策」?・・・『サクラクエスト』と『アクションヒロイン チアフルーツ』 

東京からやって来た短大卒の女の子が、地方都市の「国王(観光大使)」として1年間奮闘する物語。P.A WORKSの「働く女の子シリーズ」の最新作です。17話、18話だけ抜きだしたら、今期最高の作品です。

この作品も「何で実写ドラマでやらないの?」という内容。脚本も実写畑の方ですね。かつてはTVドラマには社会性を持った作品が多かったのえすが、それが気付けば「不倫」と「若者が観るミーハー」な作品ばかりになってしまった。一方でアニメは「社会問題をエンタテーメントとして描く」実力を十分に付けて来ています。

「ドラマの時代は終わった」という事に、アイドルや俳優達が気付くのももうすぐでしょう。脚本家や作曲家の有能な方は気づいているみたいすね。だんだんとアニメ側にシフトする方も増えている様な・・・。


第5位 『アクションヒロイン チアフルーツ』


『アクションヒロイン チアフルーツ』より

『アクションヒロイン チアフルーツ』・・・千葉県大多喜町 聖地巡礼
にわか撮り鉄の旅・・・チアフルーツ聖地巡礼Part2 


地域振興をテーマにしたという点では『サクラクエスト』と同じですが、よりアニメ的な手法でアプローチしている点で、この2作品の対比は面白い。

戦隊物を多く手掛ける荒川稔久のシリーズ構成・脚本の素晴らしさを味わう作品です。とにかく視聴者の予測の斜め上を突っ走る内容で、これぞアニメの醍醐味。

しかし、意外に構成はしっかりとしており、地域振興というテーマへの解答としても、優等生的な『サクラクエスト』よりも面白いものがあります。


第6位 『ボールルームへようこそ』


『ボールルームへようこそ』より

スポーツダンス(社交ダンス)に熱中する中学生・高校生のお話。

この作品を今年のベスト1に選ぶ方も多いでしょう。だから私的には1位に敢えてしませんでした。マンガ原作という点でも、あえて上位に入れるなかった。ただ、一般の大人に勧めて間違いの無い筆頭作品です。

見どころはダンスシーンの動画。この作品を実写で撮ったらダンスシーンはスタント(実際のダンサー)を使わない限り「陳腐」になってしまう。一方、アニメでは実際のダンサー以上にダイナミックな動画表現をする事が可能になります。作画のリソースの多くをダンスシーンに持って来ても、日常シーンの粗が目立たない作りの上手さには拍手を送りたい。そこら辺は、戦闘シーンにカロリーを割いて来た日本のアニメの伝統に上に成り立っているのでしょう。

中高年がお正月に一気に観るには、一番お勧めの作品です。

ちなみに先日、東京都体育館を通り掛かったら、外のベンチでスレンダーな男女がストレッチしていました。どう見ても釘宮ペアにしか見えないな・・・と思っていたら、何と、体育館では「三笠宮杯 スポーツダンス選手権」をやっていました。観客の多くが中高年という点がアニメとは違う点。

ところで原作マンガ、少年誌の連載ですが、高校編は明らかに少女漫画に変質しています。単なるスポコン・ダンス漫画になってしまったかも知れない作品が、より深みを持つ事になったのは「少女漫画」的に変質したおかげでしょう。これを許したマガジンの編集部にも拍手を!!


第7位 『リトルウィッチアカデミア』


『リトルウィッチアカデミア』より

『リトルウィッチアカデミア』と『La La Land』の類似性・・・ジャンルの本質回帰

『魔法少女 まどか☆マギカ』で良い子のジャンルからはみ出してしまった「魔女っ子」ものを、少女達の手に取り戻す作品ですが・・・深夜アニメですから視聴者は当然「大きなオトモダチ」。

この作品を何で日曜の朝に放映しないのか謎ですが・・・東映枠ですからね。仕方無いか。

いつのの年ならば、ベスト3に入る内容ですが・・・・今年は傑作が多すぎる。


第8位 『メイドインアビス』


『メイドインアビス』より

こちらも例年ならばベスト3に入る良作。

漫画原作をアニメ化する意味においては『宝石に国』と同様の説得力を持つ作品でしょう。
とにかく全話で背景が破綻しなかった事が脅威。こんな作品をTVアニメで作れる日本って、本当に凄い。


第9位 『アホガール』


『アホガール』より

アニメというジャンルの破壊力が如何無く発揮された脅威の作品。ラジー賞的にナンバー1作品。

ちなみに家内の今年のナンバー1はこれでしょう。とにかくハマりまくって観てました。バナナも食べまくっていました。近くの西友で「高級バナナ」のパッケージを見付けた時の嬉しそうな表情は、「オマエ、よし子かーーー!!」ってツッコミを入れたくなる程

手抜きしまくりのOPもツボ。


第10位 『エロマンガ先生』


『エロマンガ先生』より

これも家内のお気に入り。ゲタゲタ笑いながら観てました。
ラノベ原作アニメの典型ですが・・・キャラ立ちの良さは流石。



第11位 『恋と嘘』


『恋と嘘』より

16才になると政府のコンピューターが結婚するカップルを決めてしまうという設定だけで、どこまでも引っ張る作品ですが・・・意外に引っ張れるものですね。

これも家内のお気に入り・・・。

第12位 『小林さんちのメイドドラゴン』


『小林さんちのメイドドラゴン』より

アニメが成熟した表現手法である事を実感する作品。小林さん(女性)のイケメンぶりを堪能する作品と私的には定義しています。


第13位 『サクラダリセット』


『サクラダリセット』より

独特の雰囲気を持つ原作をどうアニメ化するかが問題となる作品。名監督、川面信也でもハードルが高かったかな。

日常で何か都合の悪い事が起きると、思わず「リセット」と呟いてしまうクセが付く作品。だいたいはその後に「二回目か・・・」と言ってしまう。


第14位 『プリンセス・プリンシパル』

『プリンセス・プリンシパル』より

今年のダークホース。二期目を期待。



敢闘賞 『Infini-T Foce』


『Infini-T Foce』より

現代的造形で蘇るタツノコ・ヒーロー・・・『Infini-T Force 』


『アベンジャーズ』シリーズ同様に、企業の持つキャラクターやコンテンツの資産価値に注目させる作品。タツノコのヒーロー物の実写映画はことごとく失敗した感じが強いのですが、仮面を被ったヒーローはフル3Gアニメに意外にマッチしているのかも知れません。



そんなこんなで、ベスト10を超えてしまった2017アニメ。実は『Re Creaters』とか『正解するカド』とか意欲的な作品がまだまだ沢山ありました。

2017年は「実写ドラマの地位をアニメが奪う」という確信が得られた年でした。