■ 種子法の廃止 ■
森友国会の影で「種子法」が廃止されました。これをして「モンサントに日本の農業が支配される」などと極端な意見が多く聞かれます。
種子法は戦後まもなく出来た法律で、食料難の時代に食料の安定供給を確保する為に定められました。
「コメや大豆、麦といった主要作物について、優良な種子の安定的な生産と普及を“国が果たすべき役割”と定めている法律である。都道府県による普及すべき優良品種(奨励品種)の選定や、その原原種および原種・一般種子の生産と安定供給に都道府県が責任を持つことが定められている」(wikipediaより)
これは民間の種苗メーカーが種子を安定供給出来ない時代に出来た法律なので、今となっては不要です。時代遅れの種子法は確かに廃止しても問題は無いでしょう。
■ 全ての人が「安全な食」を得られる時代では無い ■
多くの国民は「食の安全安心」を気にします。ただ、所得格差がこれだけ広がると、国民全ての「食の安心安全」を確保する事は難しくなります。
所得の低い世帯は「安全」よりも「安さ」を優先するしか選択肢は無い。多少危険性があっても安い輸入肉や輸入養殖魚、遺伝子組み換え原料の食品を選ばざるを得ないというのが現実。「安全」と「安さ」は両立しません。
一方、所得の高い人達や、意識が高い人達は多少価格が高くとも「安全」を優先してオーガニックや国産を選択します。
問題は、これらの人が本当に遺伝子組み換え作物や、危険性が指摘される食品添加物フリーの食品を選択できるかどうかです。
■ お金を出しても「食の安全安心」が保証されない事に問題が有る ■
今の日本の法律では、使用量が全体の5%以下の原材料表示義務が有りません。遺伝子組み換え作物が5%以下混じっている可能性も有るのです。
普通のキャノラー油の原料はほとんどがカナダ産の遺伝子組み換え菜種です。しかし、遺伝子組み換えの表示義務は有りません。
この様にに日本の現行法では、遺伝子組み換え作物を避けようとしても、表示が徹底されていないので100%避ける事が出来ません。ヨーロッパでは素材表記の厳格化を義務付け、トレーサビリティーの確立によってこれを担保しています。
ここまでは、消費者の選択と、それを支えるシステムの話。
■ 「遺伝子組み換え作物」と雑草や害虫のイタチごっこ ■
一方、遺伝子組み換え技術と農薬(除草剤)の効果の問題は別に検討する必要が有ります。
遺伝子組み換え作物の代表例として良く取り上げられるモンサントの遺伝子組み換え大豆と、除草剤のランドアップ。
モンサントの除草剤耐性の遺伝子組み換え作物は高濃度の除草剤に耐える事が出来るので、高濃度の除草剤を散布して雑草のみを選択的に枯らす事が出来ます。結果的に除草剤の使用量は増加しますが、農作業は省力化されます。
ところが、昨今は除草剤耐性の雑草がどんどん出現して来ており、従来のランドアップでは駆除出来ない状況が生まれて来ています。原因は雑草自体が自然の変異で耐性を獲得するケースと、遺伝子組み換え作物と近縁の雑草の交雑による「耐性遺伝子」の流出の二つが有ると思われます。アメリカでは除草剤耐性の雑草の増加で、「枯葉剤耐性+除草剤耐性」を持つ遺伝子組み換え作物が開発されましたが、さすがに認可されませんでした。何故なら、畑に枯葉剤とランドアップの両方を散布する必要があるからです。
この様な耐性の獲得は、除草剤に限った事では無く、殺虫剤の対象となる昆虫にも、殺菌剤の対象となる微生物やウィルスにも表れます。これは最新の農薬に限った事では無く、ほとんどの農薬で耐性が出現します。従来、農家は害虫などに耐性が付くのを嫌って同一農薬の単一長期使用を避けていました。遺伝子組み換えで特定の農薬に耐性を持つ作物を育てる場合、特定の農薬の単一長期使用が前提となってしまう為、害虫の耐性獲得を早めてしまい、農薬の使用量がどんどんと増える事になります。
この様に「遺伝子組み換え」によって得られる除草剤耐性や農薬耐性の効果は時間と共に低下するので、結果的に除草剤や農薬の使用量が増大して行きます。
メーカーにとっては使用量が増えるので願ったり叶ったりですが・・・消費者にとっては食の安全はどんどん低下して行きます。さらに農家の生産コストも増大して行きます。そして、土壌や水源の汚染が進みます。
■ 遺伝子組み換えの何がいけないの? ■
実は私自身は「遺伝子組み換え」作物が危険かどうかは判断しかねています。
「バクテリアの遺伝子を組み込んだ作物」と聞くと、何だかそのバクテリアが体の中で増殖する様なイメージを持ちますが、そんな事は有りません。その遺伝子が作り出す酵素やアミノ酸が人体に有害でないのなら、何ら問題は有りません。
一方、除草剤や農薬の人体への影響は気になる。先述の様に、単一の除草剤や農薬に頼りがちになる遺伝子組み換え作物においては、残留農薬や除草剤が増える可能性が有ります。
ただ、除草剤のランドアップの成分はアミノ酸で土壌に吸着された後に分解されるので、人体への蓄積は無いとモンサントは説明しています。しかし、カリフォルニアでの長年の追跡調査では、農業に関係の無いホワイトカラーの人体の体内に、ランドアンプの成分が年々蓄積している事が明らかになっています。
ただ、これが直ぐに健康被害に繋がるかと言えば、明確にはなっていません。ある種のガンを引き起こす可能性が指摘されてはいますが、直接の相関は分かっていません。
■ 食品添加物の方が危険 ■
実は発がん性という意味においては、食品添加物の方が余程危険です。何故なら含有量が多いから。
現在の加工食品には様々な添加物が含まれますが、安全性に疑問が持たれているものも多く存在しますし、複数の添加物が体内で複合的な作用をする可能性も否定できません。加工食費を口にする限りは、パンであれ、ワインであれ、添加物を避ける事は出来ません。
さらに、ああゆる食品を加熱するとアクリルアミドという発がん性が指摘されている物質が生まれます。ポテトチップスやフライドポテト、コーヒーやほうじ茶などに沢山含まれると言われています。
さらに、鶏肉や豚肉や牛肉を食べれば、そのらの家畜が投与された抗生物質やホルモン剤やその他の化学物質を間接的に摂取する事になります。これは養殖魚も同じで、狭い生け簀の中で飼育される養殖魚は抗生物質入りのエサを与えられて病気の発生を防いでいます。
そうそう、アルコールを好む私などは、自ら進んで肝臓がんの原因物質を摂取している・・。
要は、現代の社会において、余程注意して高額なオーガニック食品や自然飼育や天然の食材を買わない限り、発がん性が疑われる化学物質を摂取せずに生活する事は不可能なのです。
■ 自己免疫を高める事が一番 ■
人類が食品を通して様々な化学物質を摂取する様になったのは、ここ100年位の間だと思われますが、その間に平均寿命は延びています。
これは、栄養状態の改善や、医療技術の向上による効果ですが、意外にも人類は化学物質に対して耐性を持っている様です。これは昆虫などが耐性を獲得する事にも似ています。放射線に対する防御機構もそうですが、人体は意外にもヤワでは無い。
一方で癌が増えているという指摘もあるでしょうが、これは寿命が延びた事と無関係では有りません。長く生きていれば細胞はやがてガン化します。
結局、私達は、自分の経済力の範囲で「比較的安全」と思われる食品を選んで、それを美味しく頂く事しか出来ません。
「これは危険かもしれない、これは発がん物質が入っているかも知れない」と神経質になると、むしろストレスで癌になるかも知れません。!!
「ストレスに強いヤツが勝つ!!」と『キリングバイツ』風に〆てみました。