月曜日の朝にこのブログをチェックする方の85%が「ゲ!又アニメかよ」と思わず呟くでしょうが、もう一回お付き合い下さい。
昨日は「家内」のベストをお送りしましたが、本日は「私」のベスト。
それでは、ベストの発表です。
第一位 『宇宙よりも遠い場所』
『宇宙よりも遠い場所』より
昨年の『月がきれい』と並ぶ名作だと確信しています。もう今期の他の作品は足元にも及ばない。淡々としたペースで始まった1話のラスト、上のシーンで物語が大きく動き出しますが、とにかく演出の緩急が素晴らしい。
「いしづかあつこ」監督のセンスと力量なのですが、風景の説得力が並みで無い。その彼女本来の「絵作りの上手さ」が南極の風景にベストマッチだった。人物の描写に関しては、脚本の花田氏を褒めるべきでしょう。とにかくキャラクターに一貫性が有ってブレ無い。細かなギャグも秀逸でした、この二人の相性って結構良いみたいですね。
何だか最近のアニメーションは「異世界物」ばかりになってしまい、いしづか+花田コンビも前作は『ノーゲーム・ノーライフ』と異世界物でしたが、いしづか監督の才能の多くは異世界の構築に振られていた感じがします。ただ、ハッっとするシーンは1話目の異世界への降下シーンしか無かった。
無限の想像力によって生み出される異世界よりも、現実の南極の風景の方がインパクトと広がりを持っていた・・・。それを見事に証明した作品では無いでしょうか。実写で南極ロケは予算や安全の関係で困難を極めますが、アニメでもここまで出来る。いえ、むしろロケの期間の制約が無いから、一番素晴らしい風景や瞬間を詰め込む事が出来る。さらには、設定さえしっかりしていれば女子高生を南極の大地に立たせる事だって出来る。そういったアニメの優位性を最大限に活用した作品だったと思います。
このアニメを観て恐怖しない実写畑の方は二流でしょう。
ちなみにgoogle earth で昭和基地を探検出来ました。皆さんも是非!!
第二位 『キリングバイツ』
『キリングバイツ』より
永井豪で育った私としては燃えました!!いえ、石川賢の『魔獣戦線』の現代版と言った方が良いでしょか?
この作品の勝因は「ラーテル」というマイナーな動物を主人公に選んだ事でしょう。この、余り知られていない動物の習性を最大限に拡張する事で、この作品はとてつもない「驚き」を作り出しています。本来は「こんなのチートじゃん」という展開になるのに、「ラーテル、その背中の皮膚は極めて硬く厚く、ライオンの牙だとてこれを通す事は不可能!!」って感じのナレーションが入って、「ウワァー!!ラーテル、マジ最強!!」って納得させらてしまう。
この手法は『テラフォーマーズ』と同じですが、テラフォーマーズの登場動物の特殊技能は1つか2つだったのに対して、『キリングバイツ』は特殊技能では無く「生態」とか「特徴」を上手くバトルの中に取り込んでいたのが勝因では無いか。例えば怪我を負って負けそうになっても「ラーテル、その闘争心は極めて強く、内蔵が飛び出していても死ぬまで敵に向かってゆく」とやられると、「ラーテルさん、マジ、パナイっす!!」と感心してしまう。
この作品の素晴らしい点は30分間の密度。アバンでさらりと先週の復習を終えたら、「チャラ・チャン・チャン・チャチャ・・・」とOPが入って、気分がアゲアゲになり、テンポ良く話が進んで、「アー今週も面白かったな」と思う頃に、なんと前半終了のジングルが「ジャーン・ジャン・ジャン、チャラララン」って入る。「えーーー未だ半分なの!!」とビックリして後半に突入し、パーフェクトな引きでEDに突入。女性キャラ達のボンテージファッションを堪能しながら「ケダモノだーもーのーーー」と一緒に歌い終わると、「導け、オシエちゃん」という本編?が始まる。そしてお約束の「だが、オシエちゃんは獣人でも何でも無い!!」のナレーションで終わる。
「もう30分でどんだけ楽しませるんだよ!!」と思わずツッコミを入れたくなる「お得感」が最高の作品。もう、エンタメ作品の極み。『ブレードランナ2049』はこの作品を観て出直すしかない。
第三位 『BEATLESS』
『BEATLESS』より
はきり言ってアニメの出来は極めて悪い。実は原作も読んでいる最中ですが、ほとんど原作通りストーリーと会話でアニメも進行しているのに全く別の作品に感じられます。
これ、SF作品がいかに細か描写に依存しているかという点が良く分かる例だと言えます。100年後の未来の街並みや、社会や人々の持つ雰囲気を、いかに現代と違って描写するか・・・ここを上手くやらないとSF的世界観の構築に失敗し、その中で展開するストーリーに説得力を持たせる事が難しくなります。
ただ、普通のアニメ制作会社が掛けられるコストでは、『インフィニット・ストラトス』程度の中途半端な未来描写になってしまい、真面目な作品だとチープさばかりが目立ってしまいます。そこでディオメディアは100年後の風景を現代と余り替えない事で、100年後の世界が現代延長線上にあるという選択をしました。これ自体は間違えでは有りませんが、やはりSF的小道具が揃っていないと、レイシア級の様な「超科学」が作品の中で浮いてしまいます。
キャラクターのデザインにしても原作小説のredjuiceの硬質なイラストが、アニメになると『アイカツ』みたいなチープな絵柄になってしまい、緊張感を生み出す事が不可能になっています。せめて『イヴの時間』程度の作画クオチティーが確保出来ていれば、この作品は、久々のハードSFの傑作として、若者達の指示を集めたと思うと勿体ない。
但し、今の時代に小さな事務所がSF作品に正面から挑み、それも2期連続という枠にチャレンジする心意気にはスタンディング・オペレーションを贈りたい。
「アナログハック」という面白い概念を提唱した原作の存在を知らしめただけでも、この作品には価値が有るかと思います。絵柄のチープさと演出のチープな部分を無視して鑑賞すれば、この作品はかなり面白いのですが・・・これにはアニメに長年親しんだ「無視する」という上級スキルが要求されますから、今時の作画厨の様な若造がこの作品を認める事には無理があるでしょう。
第四位 『ヴァイオレットエヴァーガーデン』
『ヴァイオレットエヴァーガーデン』
よたろうさんご指摘の通り、戦場でのエピソードが薄っぺらく作品から浮いてしまって残念。ここら辺がラノベを原作とする限界かと。
ドールになって以降のエピソードは毎話素晴らしく、特に昨日も書いた様に往復書簡の5話と、脚本家の口述筆記の7話、そして死にゆく母が娘に残した50年分の手紙の10話はの各話は極上の仕上がり。
京アニの作画力が如何無く発揮されているのは、上で画像を引用した7話のラスト、ヴァイオレットが傘をさして池を渡るシーン。アニメーションの絵が動く魅力が戦闘シーン以外で発揮される事は少ないのですが、ジブリとは別のアプローチでその可能性を拡大しています。
一方で山田尚子が絵コンテを切っている5話では、細かなモンタージュなど静的な描写の極致を見せており、やはり京アニの作画センスは素晴らしいものが有ります。
新作の製作発表があったので、楽しみです。
第五位 『刻刻』
『刻刻』原作 表紙
『刻刻』 ED
『刻刻』 第一話 エンドカード
時間の止まった世界「死界」での、ある家族と謎の教団を巡る戦いを描く作品。シンプルな発想を元に、ディテールの積み上げで物語はここまで面白くなるという典型。原作が素晴らしいのでしょうが、アニメも良く出来ていました。
原作の絵、アニメのキャラクター設定をした梅津氏の手になるEDの絵、そして第一話のエンドカードのオノ・ナツメの絵と並べてみましたが、それぞれ全く別のタッチのアニメ作品が出来上がりそうです。それだけアニメにおけるキャラクターの絵柄は重要な役割を担っているのでしょう。
実はこのアニメ、最重要人物は下の二人。
『刻刻』より
敵教団の雇われヤクザの迫、彼は単なるチンピラですが、小物故に状況を冷静に判断する能力に長けています。そして小物故に追い詰められた人の気持ちが理解できる。実はこの作品で一番追い詰められているのは家族の死界からの奪還を願う間島 翔子。彼女は教団の悪意をも利用して家族を救おうとしていますが、それが善では無い事も理解しています。佑河家の命の犠牲の上の自分の家族が救われるという究極の選択をしている彼女が最初から一番崖っぷちに居る。その彼女をそれとなく気遣う迫君は実ばナイーヴ。
そして、この作品の不可欠な存在は佑河家の父さん。この超利己的なキャラクターは、物語にギャグ要素をもたらすと同時に、人格的には佐川よりも狂っている。ところがその狂気に本人は無自覚で、普通の生活をしている分には周囲も気づく事はありません。「超自己中」という性格は実は現実の世界のモンスターとして増殖していると考えると背中が寒くなる。
この二人の存在が、『刻刻』という作品にある種の深みやリアリティーを与えています。サブキャラがしっかり描けている作品は素晴らしい。
第六位 『だがしかし 2』
『だがしかし 2』より
原作を褒めるべきなのでしょうが・・・「なんだんだろう、このハジメちゃんの白ワイシャツの破壊力は・・・」。
ホタルちゃん、サヤちゃんと女性キャラの魅力が際立っていた作品ですが、「スキの多いダメ美人」という、今までのマンガで出会った事の無い魅力を提唱しています。
とにかく基本スキルが高いのにダメ人間でスキだらけ・・・というハジメちゃんの魅力は、ホタルちゃんやサヤちゃんに全く引けを取っていません。
ホームページを立ち上げる回や、スーパーボールの回なんて、もう捧腹絶倒。
15分に短縮された二期ですが、時間の短さを意識させない魅力に溢れています。
第七位 『恋は雨上がりのように』
映画『恋は雨上がりのように』より
5位までの作品は、30分(15分)という時間の密度が素晴らしい作品ばかりですが、『恋雨』は密度のスカスカ感がハンパ無い作品。これはこれでアリなのでしょう。間延びした感じはしないのですが・・・スカスカ。
実写向けの作品だと思っていたら、実写映画が5月の公開ですね。「実写化するなら店長は大泉洋しか居ないよね」と家内と話していた通りになりました。
作中の店長も大泉洋も45歳だそうです。
主演の女優の選定が難しいだろうなと思っていたら『溺れるナイフ』の小松菜奈・・・これはグッドチョイスですね。キャンちゃんは清野菜名、カロリーメイトのコマーシャルの子ですよね。走るシーンが多いから身体能力の高さが決めてでしょうか。
以上、2018冬アニメの私的ベストをお送りしました。南極で始まり、南極で終わった・・・これに尽きます。