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米朝会談の意味・・・変化する極東の軍事情勢

2018-06-13 05:28:00 | 時事/金融危機
 

■ 米朝関係改善の目的は在韓米軍の撤退 ■

トランプ大統領と金正恩総書記の歴史的な会談に世界が注目しました。ただ、会談は「セレモニー」に過ぎず、実質的なロードマップはトランプ大統領選出時、或いは、米軍がトランスフォーメーションを計画した時に準備されていたハズです。

アメリカと北朝鮮は休戦中とはいえ、戦争当事国同士です。アメリカ軍は国連軍として北朝鮮と直接戦闘を行い、中国は北朝鮮を支援する形で米軍と交戦しています。ですから、北朝鮮とアメリカは終戦協定を結ぶまでは、戦争状態に在る(休戦ですが)。

アメリカは韓国に米軍を駐留させており、北朝鮮といつでも交戦出来る状態を継続させていました。ただ、アメリカに北朝鮮を攻撃する意思が在るかと言えば、全く無いでしょう。在韓米軍は北朝鮮が韓国に侵攻する事を抑止すると同時に、中国を牽制する為に駐留していましたが、それとて、「過去の成り行き」がズルズルと継続しているだけとも言えます。

今回の米朝会談で、北朝鮮とアメリカが停戦協定を結ぶと、米軍が韓国に駐留する意味も薄れます。実際にアメリカ軍は2016年に在韓米軍を撤退させる予定でしたから、今回の米朝会談のよって、撤退が現実化するでしょう。トランプ大統領自身が会談後に在韓米軍の撤退に言及しています。

在韓米軍の撤退には、南北朝鮮の緊張緩和が不可欠な要素ですから、今回の米朝会談は、トランスフォーメーションのロードマップが遅れて実行されたに過ぎないのかも知れません。

但し、アメリカが韓国政府への影響力を維持したい場合は在韓米軍は韓国の占領軍として駐留し続ける場合もあるでしょう。韓国は東西統一などを模索するでしょうから、在韓米軍の存在は韓国には邪魔になります。

一方、韓国が中露を敵国として強く意識する場合は、日本同様に、何かと理由を付けて在韓米軍の撤退を先延ばしさせるでしょう。

私個人としては、韓国は地政学的に大陸勢力に取り込まれるのではないかと妄想しています。市場規模の拡大を考慮すれば、将来的に中露グループに入っていた方が利益が大きそうです。その場合は、日本が東アジアの軍事バランスの最前線となり、防衛費が大幅に増額し、アメリカがウホウホ・・・ゲフン、ゲフン。


■ 後は韓国と日本が支援してくれるさと丸投げのトランプ ■

北朝鮮は非核化の代償として体制の存続を求めるでしょう。非核化が前提と報道されていますが、北朝鮮が核を保有していようが、保有していまいが、米朝が終戦協定に調印してしまえばどうでも良い事です。北朝鮮とアメリカの戦争状態が集結すれば、北朝鮮がアメリカを攻撃する理由が無くなるからです。「アメリカがチョッカイを出すから核兵器が必用だ」というのが北朝鮮の理論だからです。

今後は北朝鮮が核兵器を盾にして「かまってちゃん」的に経済支援を引き出そうとするフェーズに移行します。「核兵器捨てようかなぁ~、どうしようかなぁ~・・・、お金くれるんだったら捨てちゃおうかなぁ・・・」と強請る訳です。相手は日本と韓国。

トランプは今回の会談の後、ご丁寧に「今後は韓国と日本が支援してくれる」と「丸投げ」モードです。韓国政府は「北の核は朝鮮民族の核」と考えていますから、北朝鮮との関係が改善すれば、本心では核を放棄したくは無い。「核兵器保有」は韓国人のプライドをくすぐります。ただ、韓国が保有すると国際世論がウルサイので、北の体制を維持したまま北朝鮮が保有していてくれた方がラッキー。その為に若干の経済援助は安く付きます。

一方、日本にとっては頭が痛い問題。日本も核放棄を条件に経済支援のカードを切るのでしょうが、何だかズルズルと朝鮮半島のATMとなり下がる予感がします。いずれにしても、アメリカが終戦協定に調印したならば、日本も平和条約を結ばざるを得ず、占領時代の保障を要求されるのは目に見えています。

アメリカは本音の所で、日韓に北朝鮮の経済支援をさせたくてウズウズしていますから、北朝鮮が核兵器放棄を経済支援のネタにゴネルもはオケーと思っているハズ。そもそもが、彼らが持たせた核でしょうし・・・。


お花畑左翼は「安倍ちゃん涙目」と揶揄しそうですが、安倍総理は第二次政権発足以降にこっそり対北朝鮮制裁を緩和する「隠れ北朝鮮支援者」ですから、安倍ちゃん的にもオケー。「キックバックよろしく」ぐらいの事は言いそうです。表向きは「北朝鮮の脅威が完全に無くなるまで、日本は支援と圧力を続けてます」と言いそうですが。(妄想ですよ)

北朝鮮の核保有は憲法改正の理由にもなりますから、実は安倍首相的には、北朝鮮の早期核放棄は望まないのでは?「安倍政権のアメとムチが北の核兵器を着々と放棄させている」と宣伝するでしょう。これにネトウヨは「安倍首相・マジ・パナイっす」と反応するでしょう。(妄想ですよ)

■ 東アジアから撤退するアメリカ ■

今回の米朝会談は来るべき東アジアの、次の時代を先取りする動きです。

陰謀論的には北朝鮮の金政権を影で操るのはアメリカのCIAだと言われています。今回も元CIA長官のポンペオ氏を国務大臣にして交渉に当たらせました。

アメリカは北朝鮮に核兵器を保有させる事で、地政学的に利害が交錯する朝鮮半島の「不安定な安定」を維持して来ました。これは「東西冷戦の名残」であり、中露が拡大戦略によって北朝鮮や韓国を侵略する事を前提にした政策です。


しかし、現在の中露は共産主義の拡張路線を弱めており、かつての様に国土拡大の野望も抱いていません。世界のバランスを重視する国家に成長しています。

確かにアメリカと中露は様々な利害対立を抱えていますが、その多くは中東における石油利権に集中しています。ロシアはかつての様に南米諸国に共産党政権を作る事もしませんし、中国はアメリカのビジネスパートナーとして無視できない存在となっています。現在の極東において、米軍が中露と対立するメリットはほとんど無いのです。


確かの中国は南シナ海に進出していますが、これとてアメリカが長期に渡りこの事態を「無視」し続けた結果です。アメリカは強硬的な手段を取らない事で、中国の海洋進出を婉曲的に支援しているとも言えます。

■ シーパワーとランドパワーの棲み分けで極東を安定させる ■

米軍のトランスフォーメーション計画では、在韓米軍は撤退、沖縄の海兵隊もそのほとんどがグアムやオーストラリアに移転する予定でした。

中露のミサイルの精度が向上する中で、韓国や沖縄の米軍基地は「人質」に過ぎないからです。滑走路に飽和ミサイル攻撃を受ければ基地の機能は失われます。

一方、中東を中心とした軍事的な緊張感の高い地域への睨みを利かせる為には、韓国や日本の戦力を、オーストラリアに配置する方が、即応性が圧倒的に高まります。或いは、太平洋の東半分での米軍のプレゼンスを確実にする為にはグアム-ハワイ・ラインまで後退させた方が有利です。

こえは地政学的にも重要で、シーパワーとランドパワーの棲み分けが明確になるので、東アジアの緊張緩和にも役立ちます。

■ アメリカの石油を日本に売り付ける為には南シナ海のシーレンは不安定な方が良い ■

米軍の東アジアでの勢力縮小と呼応する様に、中国は南シナ海での勢力を拡大し、確実なものにするハズです。

日本は中東からの石油輸入を、南シナ海の航路(シーレーン)に依存していますが、ここに中国の影響力が高くなります。但し、日本と中国の軍事的緊張が高まらない限り、中国が日本のシーレーンを脅かす事は有ません。

むしろ、インドネシアなどを中心に出没する「海賊」の取り締まりに、中国海軍の存在は、今後重要性を増すと思われます。

一方で日本は安全保障上、中東に依存する石油の供給源を南シナ海のシーレーン封鎖の影響の小さな地域に分散させる必要が有ります。既に、アメリカのシェールガス、シェールオイルを買う約束をしていますが、実は中国もアメリカのシェールオイルの輸入拡大をアメリカに約束しています。

アメリカは既にサウジアラビアを上回る原油生産国となっていおり、南アジアの軍事的な支配力を中国に渡す方が、ビジネス的には有利になるのです。

■ 武器商人としての皮算用 ■


アメリカの競争力のある輸出品に占める武器の比率は低くはありません。武器は平和では売れず、戦争や軍事的な緊張によって拡販されます。


今までは米軍が最大のお得意様でしたが、アメリカの財政事情を考えると、今後は米軍は縮小の一途を辿るハズです。通貨の多極化が進行すれば、アメリカ最大の輸出品であるドルや米国債の売り上げが減少するからです。

米国債の売り上げの低下は、米国財政の縮小を余儀なくし、社会保障費を確保する為には、軍事費削減は絶対条件となります。

これでは、アメリカの軍需産業は商売上がったりとなります。従来は「紛争の種」を蒔いて、米軍が自らシャシャリ出て軍需産業を潤して来ましたが、これからは米軍抜きで売り上げを伸ばす必要が有ります。

「米軍抜き」というのがミソで、東アジアから米軍が撤退した場合、日本や韓国、フィリピンなどは中国やロシアに対峙する為に軍事力を高める必要が有りますから、軍需産業的には米軍の穴を埋めて余り在る利益をもたらす可能性が有る。


■ トランプは決められたレールの上を爆走している ■

トランプの登場は、アメリカ国内におけるロックフェラーの退潮と無関係では無いと思われますが、トランプが反ロックフェラーかと言えば答えはNOでしょう。

彼はアメリカ国内における利権のトランスフォーメーションの象徴ではありますが、全体として「アメリカの利益」の構造は変化した訳では在りません。

ただ、旧勢力が縮小する中で、既得権やシガラミによって進行が遅れていた米軍のトランスフォーメーションや東アジアからの撤退のスピードが加速しただけ。

トランプや役割は、敷かれたレールの上を爆走する事で、決して脱線したり、逆走したりする事では無いでしょう。トランプ政権になってからの数々の変化は、予定されていたものだと私は妄想します。


そして、世界的にはポピュリズムの台頭によって、グローバリゼイションにブレーキが掛かり始めています。これも計画された動きだと私は考えます。ポピュリズムの先には混乱と戦乱が待ち構えていますが、世界は次の姿に変化する為に、一度、ポピュリズムによる混乱を必要としているのかも知れません。

次なる世界は「ポピュリズムへの反省」からスタートするのかも知れません。


まあ、「米朝会談で韓国涙目」と喜ぶネトウヨにも、「米朝会談で安倍総理は蚊帳の外」と喜ぶ左巻きな人達にも関心の無い話だとは思いますが・・・。