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近年否定されるスベンスマルク効果と、ちょっと気になる宇宙線による火山噴火説

2018-07-25 04:41:00 | 温暖化問題
 

■ 近年否定される「スベンスマルク効果」 ■




上のグラフは宇宙線量と気温の相関を現したものです。青線が気温、赤線が宇宙線量です。宇宙線とは宇宙から地球に降り注ぐ高エネルギーの放射線。主な成分は陽子であり、アルファ粒子、リチウム、ベリリウム、ホウ素、鉄などの原子核が含まれています。これらが超新星残骸などによって加速され、銀河系内を飛び交っています。


1) 地球に飛来する宇宙線は太陽風によって吹き払われる
2) 太陽活動が活発な時は、太陽風も強く、地球に飛来する宇宙線量は少ない
3) 太陽活動が不活発な時は、太陽風が弱く、地球に飛来する宇宙線量が増える

地球の気温変動と宇宙量の間に相関がある事に気付いたスベンスマルクは、その原因として次の様な仮説を立てます。

1) 宇宙線は水蒸気飽和状態の大気に入社すると「雲の核」を作り出す
2) 宇宙線は低高度の雲の生成に影響を与える
3) 宇宙線量が増えると、低高度の雲が増える
4) 雲が増えると太陽光は宇宙に反射され、地球の気温は低下する

これを「スベンスマルク仮説」或いは「スベンスマルク効果」と呼びますが、「二酸化炭素由来の温暖化仮設」を否定する私の様なへそ曲がり達に注目されます。

ここ十年程、「スベンスマルク効果」の検証研究が行われていますが、衛星による地球全体の雲量把握が可能になって来た事により、この効果(仮説)を否定する研究結果も出て来ています。

1) 地球全体では雲量と宇宙線量の明確な相関は見られない
2) 中緯度地域において相関が見られる場所がある
3) 仮にスベンスマルク効果があったとしも、気温への影響は数パーセント

スベンスマルク効果に関しては検証が続けられているので(多くは否定的な予見から)、今後、この仮説が正しかったかどうかが明らかになると思われます。

■ 火山噴火に影響を与える宇宙線 ■

「二酸化炭素由来の温暖化K説」の懐疑派は「スベンスマルク効果」に飛び付きましたが、どうも最近の研究では旗色が悪い。

しかし、最初のグラフを見ても分かる様に、宇宙線量と気温には確かに相関が在ります。




上のグラフは太陽黒点数の長期変化を示すものですが、1645年から1715年の期間は黒点数が極端少ない事が分かるかと思います。この時期を「マウンダー極小期」と呼びます。この時期、中緯度地域の気温が低下し、冬は極寒、夏も気温が低かった事が分かっています。

同様に1790年から1830年の期間も黒点数は顕著に少なく「ダルトン極小期」と呼ばれています。この期間は地球の気温が約1度低かった様で、その影響で農作物の不作が頻繁に起こります。鎌倉時代から江戸時代に掛けて飢饉が頻発した原因と言われています。

ところで「ダルトン極小期」の気温低下の原因として火山の噴火を指摘する研究者も居ます。この時期、インドネシアのタンボラ山が大噴火を起こし、噴煙が太陽光を遮ったとする説です。実際に大量の噴煙を伴う火山の噴火が地球全体の気温低下を引き起こす事が、近年のフィリピンんのフィナツボ火山の噴火によって明らかになっています。

「ダルトン極小期」と呼ばれる期間、確かに日本でも火山の噴火が続いています。

有珠山     1663年
北海道駒ケ岳  1694年
富士山     1707年  「宝永大噴火」
桜島      1779年  「安永大噴火」
浅間山     1783年  「天明噴火」

火山噴火によって噴出した噴煙には微小粒子が大量に含まれており、これらはエアゾルとなって大気中に留まり、直接太陽光を遮ったり、雲の核として雲の形成を促進したりします。

何故、太陽活動が不活発な「極小期」に大規模が火山活動が多いのか、興味深い論文を見付けました。

「太陽活動と火山活動 -泡箱としての火山」
戎崎俊一(理研)、宮原ひろ子(東大宇 宙線研)、片岡龍峰(東工大)、石峯康 浩(理研)、小園誠史(防災科研)


1)珪酸に富むマグマによる噴火は太陽活動が不活発な時期に噴火する傾向が有る
2)珪酸に富むマグマは粘度が高く過飽和状態で水を含んでいる
3)過飽和状態に水を含んだ珪酸質マグマに宇宙線が当たるとトラックを形成
4)アニールが収まる頃いトラックを格にした「発泡」アニールを上回る
5)「発泡」連鎖して爆発が起きる
6)固化した溶岩の蓋を吹き飛ばし噴火が始まる
7)地下からのマグマが本格的に噴出する

あくまでも仮説に過ぎませんが、1991年のフィリピンのフィナツボ火山の噴火も宇宙線量が減少した時期に起きているというデータも示されるなど、大変興味深い研究です。

高圧化のマグマ内で、宇宙線によって「発泡」が実際に起きるのか、さらにそれが噴火の原因になり得るのか、今後の研究の進捗を期待します。