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低成長の世界において金利は死んだのか・・・

2019-02-02 05:07:00 | 時事/金融危機
 

■ 低成長と過剰貯蓄 ■

最近、池田信夫氏も1周遅れで三橋貴明氏の様な事を言い始めました。

1)日本の成長力が低下した原因は少子高齢化が原因
2)もう一方で消費低迷の原因の一つが企業に過剰貯蓄による労働分配性の低下
3)企業が分配しない分を国が赤字国債を発行して分配する

4)物価は世界的な過剰供給によって安定している
5)物価の安定がインフレを抑制している
6)インフレ率が低い事が、赤字国債の発行を支えている

「反リフレ派」は「リフレ派は敗北した」と言いながらも、実は自分達が信じていた「信用の限界」がなかなか訪れない事に気付き始めています。(私も含め)


■ 信用創造システムの変化 ■

「リフレ派」の「お金を大量に発行する事で実質金利をゼロ以下に提げて景気を刺激する」という主張は、根本的に意味不明で実際に「ゼロ以下の金利の効果」などは発揮されませんでした。

一方で大量に供給された資金によって、世界経済はバブル化しました。現在のデリバティブ残高はリーマンショック前を軽く凌いでいます。

これらのデリバティブの元を辿ると「債権」に辿り付きます。国債や社債、はたまた個人のクレジットやカーローンなどの「借金」が様々に加工されて流通しています。

1) かつては個人や企業に銀行が金利を取って資金を貸し付けていた
2) 現在は「債権」という形で、金利を払う事で市場から資金を調達している
3) 市場に流れ込む資金の出どころは、実は銀行

かつての「実業」を主体とした社会では、銀行は個人や企業の「実業」を支える存在として信用創造の歯車を回して来ました。

しかし、現在の銀行は金融市場のプレーヤーに資金を供給する事で「虚業」の歯車を回す存在と化しています。そして、その銀行に資金を供給しているのが「中央銀行」です。


■ バーチャル化した世界から零れ落ちる資金で成長する世界 ■

金融市場というバーチャル空間が巨大化する一方で、世界には「実体経済」というリアルも存在します。

かつては銀行の信用創造システムが実体経済を直接支えていました。金利は実体経済の活性を図るバロメーターとして確実に機能していました。

しかし、現在は金融市場というバーチャル空間から零れ落ちる資金が実体経済を支えています。このシステムにおいて金利はバーチャル空間の活性を図るバロメーターに代わっています。

■ 金融市場の需要は「純粋な欲」であり、ある意味無限に存在する ■

実体経済における金利の決定プロセスは次の通りです

1) 人々が「物」を欲する
2) 商品が供給され「需給バランス」が価格を決定する
3) 価格がインフレ率決定する
4) インフレ率が金利に反映される

実体経済は「人々の物欲」と「供給能力」というリアルによって支えらていました。「物欲」という需要は有限ですし、「生産」という供給能力も有限です。


一方、現在の金融市場の金利の決定プロセスは次の通りでしょう

1) 人々が投資で儲けようとする(純粋な欲)
2) 中央銀行が大量に資金を供給する(金利が下がる)
3) 大量の低金利のマネーが運用先を求め、「需要」が生まれる
4) 大量の債権や、債券を加工した金融用品が「供給」される
5) 金利は需給バランスよりも「投資リスク」を強く反映する


ここで問題になるのが、金融市場では金利の決定プロセスに「リスク」が強く影響を与える点っです。「バブル」が発生している時、人々はリスクを過分に低く見積もります。一方で、バブルの終焉が意識されると人々はリスクに過敏になります。

金融市場は数々の経済統計や雇用統計を参考に投資リスクを判断している様に見えていますが、実は「欲の総体」である「空気」に支配されています。

■ 金融市場の決定する金利は「ピーキー」である ■

実際の需要や供給の制約を受ける実体経済が決定する金利は緩慢に変化します。ですから、中央銀行も金利操作である程度実体経済をコントロールで出来た。

一方、空気に支配される市場の決定する金利はピーキーです。リスクが過剰に意識された時点で金利は急激に跳ね上がります。「市場の椅子取りゲーム」の音楽が止んだ途端に流動性が枯渇して金利が急上昇(金融商品の価格が暴落)します。

このピーキーな市場をコントロールする為に中央銀行は無限の資金供給を約束する必要が有り、これが金利を極端に下げる原因となっています。そして市場はさらに過熱する。

FRBはこのプロセスを良く理解していますから、市場が多少混乱しても利上げを継続しています。「金利」という抵抗が無くなると、バブル化した市場は短期間で「発振」を起こし、自己崩壊へと突き進む事を知っているのです。

■ ゼロ金利の解除が遅れた国が負ける ■

金利は資金流動を生み出すポテンシャルエナジーですから、「金利が健全に高い国」には資金が流入します。一方、「金利が不健全に低い国」からは資金が流出します。

要は、日本の様な低金利国家が世界に資金を提供する役割を負わされているのです。しかし、この「不健全に金利が低い」状態が、国内での赤字国債の発行を容易にし、短期的にはウィン・ウィンの関係が成立します。

ところが一度危機が発生すると「不健全に金利の低い国」の方がダメージを被り易い。何故なら「お金は借りた方が勝」というのが西洋の金融のルールだからです。結果的に貸した側に「不良債権」が積み上がる事になります。


池田信夫氏までもが三橋教化した昨今、はたして日本人はゼロ金利のしっぺ返しを逃れる事が出来るのか・・・私はそんなに甘い世界では無いと信じています。


私達は必ずや「金利の逆襲」に見舞われる事でしょう。