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「統合通貨」という幻想・・・バランスシート的には

2019-02-26 03:48:00 | 分類なし
 

■ バランスシート的に「統合通貨」を考える ■

昨日に続き「統合通貨」の幻想をぶっ潰します・・・って、上条当麻じゃないんだから(オタクしか分からないですよね)


バランスシート的に考えます

1)政府の発行した国債は政府の負債
2)日銀の購入した国債は日銀の資産
3)日銀は政府の子会社なのだから、連結決算的には資産と負債は相殺される

ここまでは、一部のリフレ論者がバラまいた「幻想」

4)日銀の国債購入は市場で民間銀行の国債を購入する事で行われる
5)民間銀行が国債を購入した資金は個人や企業の預金や銀行の自己資金を原資にしている
6)預金は国民の資産であり、銀行の負債

7)民間銀行は国債を日銀に売却して円(日銀券)を手に入れる
8)日銀券は日銀の負債

9)民間銀行は日銀券を日銀の当座預金に積み上げる
10)日銀は当座預金で国債を購入する


要は、日銀が異次元緩和でマネタリーベースを増やすと言っても、勝手に日銀券を刷りまくる訳では無く、市場から国債を購入して日銀券を発行してマネタリーベースを増やしています。

増えたマネタリーベースが銀行を介して融資や市場運用に流れれば、資金が民間市場に流れ出しますが、残念な事に銀行は手にした日銀券を日銀の当座預金に積み上げ、これが日銀が国債を購入する原資となります

「国債」 - 「日銀当座預金」 - 「民間銀行の預金」

この三者がバランスしている訳なので、「国債」と「日銀券」が相殺して消えてしまうとするならば、「民間銀行の預金」も消えてしまう事になります。これでは預金者が激怒します。

■ 異次元緩和が「財政ファイナンス」では無いと市場が判断する理由 ■

日銀の異次元緩和は「隠れ財政ファイナンス」と私はいつも書いていますが、実際に市場は「財政ファイナンスでは無い」と判断しています。

これは、日銀が市場から国債を購入する限り、「民間の預金」というお金の裏付けが存在するからに他なりません。

一方、仮に日銀が直接国債を購入し始めたら、市場は即座に「財政ファイナンス」と判断して、日銀券の価値は暴落するでしょう。何故なら「国債」=「日銀券」となり、相殺されてしまえば、円は「無価値」になってしまうからです。

■ 「府の負債=国民の資産」というデマ ■

一部のリフレ論者たちは「政府の負債(国債)」=「国民の資産(預金)」というデマもバラまいています。

ここに欠けているのは「国債は将来的な税金で相殺される」という原理原則です。要は、将来的には税負担によって預金が食いつぶされる「時間軸」を無視しているのです。

国債を発行すればするだけ、本来は税負担が重くなりますが、それを時間軸的に猶予期間を与えるのが「ゼロ金利」です。政府は国債金利がゼロならば金利負担無に国債を発行し続ける事が出来ます。マイナス金利ならば「国債発行益」すら出す事が出来ます。

しかし、これは、未来永劫に国債金利がゼロに張り付いているという前提でのみ成立します。仮に日銀がテーパリングに入れば、国債金利はゼロに固定する事は不可能です。

結局、「国債のゼロ金利」は新発国債のほとんど全額を日銀が市場から高値で買い入れる「異次元緩和」の状況でしか維持出来ません。

■ インフレ率が上昇しなければ異次元緩和は継続出来る? ■

「日本は低成長で成長率は将来的にもゼロかマイナスなのだから、異次元緩和を永遠に継続すれば良い」という意見もあるでしょう。

しかし、仮に中東で戦争が起こった場合、原油価格の高騰はあらゆる物価に影響を与え、インフレ率は上昇します。不景気なのにインフレが進行する状況を「スタグフレーション」と言いますが、実際にオイルショックの1970年代にアメリカやヨーロッパで発生しています。

原油価格高騰の様な外的要因でインフレ率が高まった場合、金融機関はゼロ金利の国債を大量に保有していたらどうなるでしょうか?

本来は国債金利は市中金利と連動するハズですから、国債金利も上昇(価格は低下)すると市場
は予測します。そこで、金融機関は損をする事が確実なゼロ金利の国債を手放そうとします。ここで、「日銀は無制限に国債を購入する」と発表するハズです。

この状況でも、銀行が国債を売却したお金を日銀の当座預金にブタ積し続ければ、国債は破綻しません。しかし、インフレが進行すれば、銀行は預金金利を引き上げなくてはなりませんから、ゼロ金利やマイナス金利の 日銀当座預金に資金を置いて置くと経営が破綻してしまいます。

一方、国債金利をゼロに固定したままで、日銀が日銀当座預金に利付けすると、日銀の負債が膨らみ、今度は日銀が破綻します。

この様な状況になった時、銀行が充分な金利を預金に付けられなければ、国民は預金を引き出そうとします。国民とて損はしたく無いからです。預金が引き出されてば、国債購入を支えていた民間の預金が減る訳で、ここで「異次元緩和」は継続が不可能になります。

ここから先は、日銀の国債の直接買い入れへと進む訳ですが、ここに至れば市場は「財政ファイナンス」と判断し、為替市場で円は暴落するでしょう。そしてインフレ率はさらに跳ね上がり、預金の価値や通貨の価値は大幅に失われます。

■ 問題はソフトランディングかハードランディングか ■

上述の状況は「ハードランディング」と呼ばれるシナリオで、「ハイパーインフレ」などと呼ばれます。戦後の日本や、第一次世界大戦後のドイツがこれに相当します。現在のベネゼエラもこれに当たります。

一方、「ソフトランディング」と呼ばれる状況も起こり得ます。これは戦後のアメリカやイギリスで起こりますが、中央銀行が上限金利をインフレ率よりも低く設定して、徐々にお金の価値を失わせる方法です。これを「金融抑圧」と呼びます。その結果、政府債務はインフレによって減価します。(インフレ時には借金は実質的に減価する)こうして、アメリカやイギリスは第二次世界大戦時に発行した大量の国債の価値を下げて、国債償還を達成しました。

日銀の異次元緩和も「ソフトランディング=マイルドなインフレの進行」で財政をリバランスする事を目的としていますが、低成長の日本においては、なかなかインフレが達成出来ません。そうしている内に、国債残高の大部分を日銀が保有する事になって行くハズです。によって

こうなると市場も流石に???となる訳で、「金利上昇による日銀の債務超過」の懸念が噴出します。日銀が債務超過に陥れば「日銀の債券」である「日銀券」って価値があるのかが疑われる事になります。経営破綻しそうな会社の社債が価値を失うのと同じです。

■ 怖いのは「外的要因」 ■

少子高齢化によってよって内的要因によるインフレは発生する可能性は低いのですが、原油価格の高騰の様な外的要因によるインフレは日銀にも政府にもコントロールする事が出来ません。


こう考えると「異次元緩和の限界」は「外的要因によるインフレ」である事が理解出来るかと思います。

もう一つ怖いのが、国内の巨大金融機関の経営破綻。私は「世界最大の投資銀行」と化している「ゆうちょ銀行」が危ないと危惧しています。リーマンショック級の金融危機がもし発生するとすれば、「ゆうちょ銀行」が被る損失は甚大でしょう。ここで「ゆうちょショック」が起きて、全国的に預金引き出しの動きが高まると・・・異次元緩和が継続出来なくなります。


はてさて、異次元緩和に引導を渡すのは「中東戦争」か、それとも「ゆうちょショック」か?