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「モスクワ」撃沈・・・戦争を長期化したいのは誰か?

2022-04-16 05:12:00 | 時事/金融危機
 

■ 「ネプチューン」ミサイルが変えた戦況 ■

レーダー網を破壊されたウクライナが、黒海上のロシアのミサイル巡洋艦「モスクワ」は破壊した事に最初違和感を覚えていました。NATOがポーランド国境近くで哨戒機を飛行させてウクライナ全土の状況を凡そ把握しているので、「モスクワ」の位置情報はウクライナも掴んでいたハズですが、はたして座標情報だけで300km近く離れた目標を対艦ミサイルは破壊出来るのか?

ウクライナが発射した対艦ミサイル「ネプチューン」はソ連製ですが、ウクライナは電装系を独自にアップデートしている様です。座標入力で標的に近付き、衛星情報で補正が出来、最後はミサイル自身の照準能力で艦船に命中させるシステムだとか。有効射程は300km。強力な海軍を持たないウクライナは、このミサイルを輸送車に乗せて、陸上から運用しているそうです。

当日の黒海は荒天で、衛星からのコントロールがどの程度可能だったかは不明ですが、ウクライナ軍は偵察機をロシアの艦隊の周囲に飛行させていた様なので、これにより正確な照準が可能だったのかも知れません。

フォークランド紛争の時にも、アルゼンチン軍が発射したフランス製のエグゾセミサイルがイギリスの艦船を撃沈していますが、分厚い鋼板の装甲を持つ軍用艦も、水面ギリギリを飛行して喫水線近くに命中する対艦ミサイルの攻撃には弱い様です。

当然、標的となる艦船側も迎撃ミサイルや自動照準の機関砲などを装備していますが、不意の攻撃には弱い。「モスクワ」は黒海艦隊の旗艦ですが、古い艦艇なので、防空レーダーの役割を担っていた様で、迎撃システムが最新のものでは無かったのかも知れません。

仮に、「モスクワ」を撃沈したのがウクライナが発射した「ネプチューン」だとすると、黒海のロシア艦隊は、不用意にウクライナ領に近づく事が出来なくなり、東部戦線にも影響が出ます。艦砲射撃は、ミサイルなど、洋上からの支援が難しくなります。黒海は閉じた海で、トルコのイスタンブールの狭い海峡で地中海に繋がっています。トルコが海峡封鎖をしているので、ロシアは「モスクワ」に変わる艦船を黒海に入れる事が出来ませんし、入れた所で、ミサイルの標的とされるので、ウクライナにあまり近づけず有効には運用出来ません。

さらにイギリスは対艦ミサイルのハプーンをウクライナに供与すると、先日ジョンソン首相がウクライナに約束しています。ハプーンの有効射程は長くはないものの、沿岸に近づくロシア艦艇の牽制には有効です。


■ 「何故今頃?」という違和感 ■

ロシアは「モスクワ」が火災によって弾薬庫が爆発して沈没したと発表していますが、キエフ均衡の対艦ミサイル工場を、巡行ミサイルで破壊した事から、今回はウクライナの発表が正しい様です。

問題は「何故、今頃になって対艦ミサイルを発射したか」という点。現代戦は戦争初期に相手のレーダー網と防空戦力を潰す事が重要です。ロシア軍は、初撃でのミサイル攻撃でウクライナのこれらの施設を潰しています。

対抗する為に、ウクライナもロシアのレーダー設備などを破壊すれば良いのですが、ロシア領内の施設は攻撃し難い。これは技術的にというよりも、ロシア本土を攻撃すると、ロシアの反撃が10倍返しになる可能性が高いという精神的な障壁。

同様に黒海艦隊もウクライナ領海に侵入していなければ、ウクライナとしては攻撃し難い。メンツを潰されたロシアの反撃が怖いからです。

そもそもウクライナ正規軍は、ロシア軍との正面戦闘を避けていまいた。キエフ周辺でも、ロシア軍は道路に装甲車や戦車を長々と車列を組んで停車させたままで、ウクライナ軍の攻撃を全く想定していない様子でした。攻撃して来るのはアゾフ軍で、ドローンでチョッカイを出す程。度欧米諸国が提供した大量の対戦車兵器(ジャベリン)が有効に使われた様にも思えません。ウクライナ正規軍とロシア軍は戦争をする振りをしているだけに近かった。


ところが、昨日、ウクライナはロシア領内をヘリコプターなどで攻撃した様ですし、今頃になって「ロシアを本気で怒らせる作戦」を始めた。

ロシアとウクライナの停戦協議は大筋の合意に至っており、クリミアの領有問題などでウクライナが妥協すれば、即刻停戦が可能な状況です。ロシア軍はキエフ周辺や北部から軍を撤退しており、一方、東南部のドネツクでは、ほぼウクライナ軍(アゾフ連帯)を一掃し、ウクライナ軍は東部奪還の掛け声だけで、具体的な増援やアゾフの救出作戦は実行していません。マリウポリのウクライナ正規軍は、生き残りはほとんどロシア軍に投降しています。

ほぼ、戦況が落ち着いて東部でロシア軍の勝利が確定した今、ウクライナがロシアを激怒させるであろう「モスクワ」やロシア領内への攻撃をしたのは何故か?

■ 停戦させたく無い誰か ■

ウクライナ戦争はアメリカがロシアに仕掛けた戦争です。この戦争でアメリカは自分の手を汚さずに、ロシアを悪者に仕立て上げ、ガスの供給を不安定にする事で、ヨーロッパ諸国を間接的に経済攻撃しています。(ギリシャ危機など、ドルに圧力が掛かる時にアメリカはユーロを攻撃する)

アメリカはゼレンスキーに停戦合意をするなと命令している様ですが、アゾフ連帯が壊滅状態の今、ウクライナ国内で停戦に反対する勢力は少なくなっているハズです。戦争が長引くと、ウクライナ国民も「そろそろ停戦」という気運になって来ます。


そこで、アメリカはウクライナ軍に影響力を発揮して、黒海艦隊を攻撃させ、ロシア領内も攻撃させたのでは無いか。この攻撃にゼレンスキーがどの程度関与しているかは分かりませんが・・・。


一方、ロシアは現実的な脅威の排除としてキエフ均衡にあるウクライナ軍のミサイル工場は巡行ミサイルで破壊しましたが、キエフやその他の都市を無差別に攻撃する様な事はしていません。「キエフを攻撃するぞ!!」と脅してはいますが。ロシアはあくまでも冷静に対処して、停戦に持ち込みたいのでしょう。


問題は、ウクライナが今回の様な「挑発行為」をエスカレートさせそうだという点。特にロシア領内への攻撃を頻繁に行う様になると、プーチンも我慢の限界がやって来ます。ブチ切れたら、キエフにミサイルの雨が降るでしょう。


■ ウクライナ正規軍の攻撃に見えるが・・・ ■


ウクライナ戦争ではロシア軍は我慢に我慢を重ねて来ました。マリウポリではアゾフ軍が住民うを地下室に閉じ込めて地下室の入り口を破壊するなど、「人間の盾」が目に余る状況でした。これをロシア軍は救出しながら戦っていた。当然、住民が残っている地域での空爆はしていません。

一方、アゾフ軍は元々、ドネツクを攻撃してロシア系住人を殺戮する予定でしたがから、住人が居ようが居まいが、ロシア軍と交戦するという名目で街に砲弾を撃ち込み続けた。マリウポリの住人の多くが「攻撃して来るのはウクライナ軍(アゾフ連帯)」だと証言しています。「町の85%はウクライナ軍の攻撃で破壊された」と言う住人も居ます。

実際に、ウクライナ軍は、トーチカUというミサイルをドネツクの街に打ち込んで「ロシア軍が駅を攻撃した」などと宣伝しています。

トーチカUは旧ソ連製のミサイルで、現在ロシア軍は運用されていません。ロシアはミサイルの残骸のロット番号から、ウクライナ軍のどの部隊に配備されたミサイルだたかを発表しています。

ブチャの街で白い布を巻いた親ロシア系の住民を虐殺したのも、ネオナチ勢力でしょう。


ウクライナ戦争はこれまで、調子に乗ったネオナチと、ロシア軍がガチで戦闘をしているだけで、ウクライナ正規軍は東部でネオナチに道連れで戦闘に巻き込まれていた感じがしていました。

しかし、今回の対艦ミサイル攻撃や、ロシア領内へのヘリコプターによる攻撃は、正規軍の攻撃だと考えて間違い無いでしょう。これが一部軍の独断の行動なのか、ウクライナ軍の総意なのかによって、今後の戦局が大きく変わって来ます。


今まで、ロシア軍は「書かなくても良いZの文字」を戦車や装甲車に書き込んで、「悪役」のイメージ作りをして来ました。(迷彩を施した戦闘車両を目立たせる意味って有ります?)

これはナチスの鍵十字同様に、Zを見ただけで「ロシア嫌悪」の意識を高める事に役立っていました。ロシアは実際のウクライナの被害以上に悪役のイメージを西側諸国の人々に植え付ける事に成功していた。そうする事で、ウクライナの人的被害を限定的にしながら、戦争の本当に目的(ドル離れ)を達成しつつあった。ウクライナ軍との間にも「阿吽の呼吸」の様なものが存在していた・・・。今回の攻撃は、この努力を無にした可能性が有る。



ロシア軍が、本気になったら・・・キエフは火の海となる。
・・・・そうならない事を心より祈ります。


<追記>

今回の様にたった一発(二発ですが)のミサイルが戦況を大きく変える現代において、ウクライナがNATOに加盟して、そこに核ミサイルが配備される意味を、日本の多くの人は全く分かっていません。

ロシアと大きく国境を接するフィンランド、そしてスエーデンは、仮想敵国はロシアでありながら、第二次世界大戦以降、「中立」を貫いてきた。これらの国がNATOに加盟するとロシアを過剰に刺激する事を、国民も理解していたからです。しかし、ウクライナ戦争を見て、フィンランドもスエーデンも国民がNATO加盟を望んでいます。(これらの国はウクライナのアゾフ程クレージーで無いので、ロシアは不機嫌にはなりますが攻撃はしないでしょうが・・・)

海にぽっかり浮かび、どの国とも国境線を接していない日本人は、この様な「ヒリヒリした国家間の緊張感」に鈍感です。当然、今回プーチンが戦争に踏み切った理由も理解出来ません。そんな日本人に是非見て頂きたいアニメがあります。



2012年に放映された『ヨルムンガンド』 武器商人の暗躍を描く作品ですが、1話と2話はウクライナが舞台でしょう。

第一話は、ミグ29のアップデートパック3機分を購入しようとする軍と、それを阻止しようとする警察。隣国(ロシア)との軍事バランスが崩れてウクライナ?が挑発的な行動に出るのではないかと警察は警戒しています。

2話はウクライナのパイプラインの利権を巡る紛争の話。パイプラインを巡りロシア軍とウクライナ部隊の間で非公式の紛争が起きているという設定。紛争の実態が外部に漏れない様にウクライナ軍は峠で住人やジャーナリストを殺しています。ウクライナ部隊に強要される形で武器商人が防空レーダーの調達を依頼されますが、現地に届いたのは地対空ミサイル。これによりロシア軍の攻撃は途端に止みます。パイプラインを占拠するウクライナ部隊は正義の為に戦っているのでは無く目的はガス利権というのが如何にもという感じ。(ウクライナと書いちゃってますが「多分ウクライナ」作中では架空の国名です)

話としてはなんとも切なく後味の悪い4話が印象に残る。(3-4話が連続)

軍事増強が紛争を集結させる事も有れば、過剰な武器が紛争を起こす事も有る。今回のウクライナ戦争は後者で、ウクライナのNATO加盟が戦争の引き金となった。マトモな国ならばノルウェーの様に中立を選択します。一方、ロシアは戦争をせざるを得ない状況に追い込まれましたが、結果的にフィンランドやスエーデンがNATOに加盟すれば失うものの方が大きい。

こういう国債情勢の機微を学ぶのには「ヨルムンガンド」が最良の教材の一つだと思います。


『ヨルムンガンド』より