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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

MMTと言う呪文・・・閉塞感が生み出す宗教

2019-06-07 14:07:00 | 時事/金融危機
■ お金とは何か? ■

「お金とは何か」という問いかけに応えるのは、簡単そうで難しい。

歴史を紐解けば、「交換」に起源を持ちます。

古代の人は、村の境界に何か物を置いておき、次に来た時にそれが無くなっていたら、「神様が御取りになった」と考えました。まあ、お供え物のルーツですね。

ところが、ある時、お供え物が、別の物に代わっていた・・・。実は隣のムラの人が、置いてあった物を神様からの授かり物と勘違いして、代わりにお供え物を置いていっただけなのですが・・。こんな感じで「境界」で「物々交換」が始まったのが、交易のルーツだと言われています。(本当かよってツッコミを入れたくなりますが・・・)

実は人間は本能的に「交換」を好む種族だそうです。多分、他人の持ち物は良く見えるだけなのですが、「お前のソレ、とてもイイ。これのコレと交換イイカ?」なんて感じだったのでしょう。

こうして、古代から盛んに「交換」をして来た人類ですが、交換する物には「旬」や「時期」が有ると、「現物」が存在しないケースが生まれます。そこで、「今は手元に無いけど、必ずオレのモノを渡すから」という証文として貨幣が生まれます。最初は巨大な石を削ったものだったりします。無くさないし、容易に複製できない事が大事だったのでしょう。

しかし、巨大な石は持ち運べませんし、場所を取ります。そこで古代の中国では珍しい貝が使われ始めます。これも内陸部では容易に手に入らないので複製が困難ですが、一方で保管や持ち運びに便利でした。こうして、お金にまつわる漢字は貝偏が使われる様になります。

後世には、金や銀などの稀少金属が貨幣の主流になります。

■ 時代と共に変化する貨幣 ■

お金(貨幣)の根源的な価値は、「交換」と「価値の保管」の手段です。これは今も変わりません。私達は労働というサービスを給料という貨幣に交換し、それをしばらく手元(あるいは銀行口座)で保管し、欲しいモノやサービスに任意の時に交換します。

ただ、時代と共にお金の姿は変化して行きます。

ニクソンショック(1971年)までは、基本的に紙のお貨幣も金に交換出来ました。紙で印刷された貨幣も、1オンス35ドルで金と交換が保証されていました。世界のあらゆる紙幣は、ドルと交換する事で、金と交換する事が可能でした。

しかし、1971年8月15日に、アメリカのニクソン大統領は、ドルに金兌換の停止を突然発表します。いわゆる「ニクソンショック」です。これによって、紙幣は単なる紙切れになります。

当時、ただの紙切れになったドルの価値が大きく棄損すると予想する人も大かったのですが、ドルは各国通貨に対して徐々に減価したとは言え、基軸通貨としての地位が失われる事は有りませんでした。何故なら、貿易はドルで行われていたから。さらに、同じ時期、中東戦争の勃発によって原油価格が5倍程に値上がりし、高騰した原油を調達する為のドルも、それまでより多く必用になったのです。

戦後、ブレトンウッズ会議によってドルを基軸通貨とし、金1オンス35ドルで兌換すると決められた事を「ブレトンウッズ体制」と呼びますが、ニクソンンショック後は「原油の決済通貨である事がドルの価値を支える」事となり、これを「修正ブレトンウッズ体制」と呼ぶ人も居ます。

■ 借金から作り出されるお金・・・信用創造 ■

お金には、「物を買う」とか「価値を保存する」という機能の外に、「経済を発展させる」という機能も持っています。「お金を稼ぎたい」「お金を沢山持っていたい」という欲望が経済発展の原動力となるのです。

本質的には「物欲」の延長ですが、一人の人が使い切る、或いは溜め込むモノには限界が有ります。しかし、お金は場所を取りませんし、記号性を持っているのでゲームのスコアーの様な要素も有しています。…「その人の成功のバロメーターがお金という単位で表示される」・・・そんな一面も有ります。

この様に、多くの人々が欲しがるお金ですが、お金に現物の紙幣やコインしか存在しない場合、お金は「有限」となります。多くの人達がお金を欲しがるのに、一部の人達がお金を溜め込んでいたのでは経済は発展しません。

そこで、昔のユダヤ人は考えました。彼らは「金(キン)を預かって、それを貸して利息を取る」事を思い付いたのです。これが銀行の始まりです。キリスト教は利息を取る事を禁じていましたが、ユダヤ教はこれを禁じていませんでした。

銀行の働きは現在も「預金」を集め「金利を取って貸し出す」事が基本です。銀行は預金の内の一部を「準備預金」として日銀に預け、残りを貸し出す事が出来ます。お金を借りた人が、それを又銀行に預けたら、準備預金を残して、残りを再び貸し出す事が出来ます。

これは「借金がお金を作り出す」とも言えます。これを「信用創造」と呼びます。

■ マネタリーベースとマネーストック ■

先日から鍛冶屋さんがコメント欄で説明されている様に、お金には2種類存在します。

1) マネタリーベース

マネタリーベース=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」

これは、日銀が供給したお金の総量です。日銀は経済状況を睨んで、マネタリーベースを拡大したり、縮小したりします。

2) マネーストック

「民間に流通する通貨の総量」ですが、定義によってM1、M2、M3、広義 に分類されます。

 M1= 現金通貨 + 預金通貨 - 金融機関の保有する手形と小切手

 M2= 現金通貨 + 国内金融機関の預金の合計

M3 = M1 + 準通貨 + CD(譲渡性預金)
※準通貨 = 定期預金 + 据置貯金 + 定期積金 + 外貨預金

 広義 = M3 + 金銭の信託 + 投資信託 + 金融債 + 銀行発行普通社債 + 金融機関発行CP + 国債 + 外債

これらの分類は経済活動のどのフェーズに注目するかによって使い分けられます。

中央銀行が供給する「マネタリーベース」を、金融機関が信用創造によって拡大した結果が「マネーストック」

景気の良い時は、民間のお金の借りてが沢山居るので、信用創造の歯車が回転してマネーストックが拡大します。一方、不景気になると、人々は借金を返そうとしますので、信用創造の歯車が逆に回転して、マネーストックが縮小します。人々が借金を全て返済してしまったら、通貨はマネタリーベースまで縮小します。(大雑把ですが)

■ 中央銀行の金融調節機構 ■

中央銀行は「通貨の番人」と呼ばれ、かつては「インフレファイター」などとも呼ばれていました。

ニクソンショック以降、通貨は単なる紙切れに過ぎないので、いくらでも発行する事が可能になります。しかし、通貨を発行し過ぎると、巷のお金が溢れ、モノや資産に対してお金が増えるので、インフレやバブルが発生します。

そこで、中央銀行は通貨の発行量をコントロールする事で、インフレ率を適正な数値に抑え込む役割を果たしています。

かつては、法定金利がその役割を果たしていました。中央銀行は銀行の銀行として、市中の金融機関にお金を貸し出します。この時の貸し出し金利を景気状況によって上下させます。好景気でインフレ圧力が高まった時は、金利を上げ、民間の金融機関のお金を日銀の預金として吸収します。一方、景気が悪化した時は、金利を下げて民間銀行がお金を借りやすくします。

■ ケインズ派の誕生と、その限界 ■

法定金利は市中金利の基礎となりますから、法定金利を上がれば人々はお金を預金しますし、法定金利が下がれば、人々がお金を借りやすくなります。

古典派経済学では、神の見えざる手の影響は金利にも及び、資金の需給によって金利は適性にコントロールされ、通貨量も適正になると考えられていました。しかし、実際の経済では、大きなショックの直後にこの関係が崩れ、金利を下げてもお金の借りてが居ない状況が生まれます。

ケインズは極端に景気が悪化した経済では、自律的な景気回復が不可能(あるいは遅れる)ので、政府が借金をして仕事を作り出し、雇用を拡大する事で景気を回復するべきだと主張します。

実際に、1929年のNY株式市場の暴落に端を発した「世界恐慌」の時に、アメリカではルーズベルト大統領が公共事業を大幅に拡大するニューディール政策を実施します。これによって景気回復したと考えられて来ました。

戦後、各国はインフラ整備などで財政支出を拡大します。各国はケインズ的な政策で景気回復を図ります。しかし、石油ショックの発生で、インフレと不景気が同時に進行するスタグフレーションが発生すると、ケインズ的な財政政策の継続が難しくなります。不景気を克服する為に財政拡大するとインフレを助長してしまうからです。

さらには、ケインズ政策は各国の債務残高を拡大するという問題も起こります。景気拡大が限定的となる中で、将来の税収で債務残高を解消できるか不安視される様になったのです。

■ マネーサプライ(マネーストック)で景気をコントロールするマネタリズム ■

ケインズ主義に限界が見えると、それに対抗する経済学が台頭します。

ミルトン・フリードマンを筆頭に、マネーサプライを拡大を一定首水準に固定して景気をコントロールする経済論が台頭します。彼らの理論を「マネタリズム」と呼びます。

経済の主体である民間の経済活動に一定の資金供給を約束すれば、経済は自立的に安定して拡大する主張する彼らは、政府の経済への干渉も嫌い、「新自由主義経済学」などとも呼ばれます。

金融政策はマネーサプライの一定の拡大を目標に実行されます。「一定の拡大」を目安にする理由は、物価に遅効性が有る為に、これを目安にしていたのではインフレになって引き締めしても、デフレになって拡大しても間に合わないからです。

マネタリズムのメリットは、景気刺激に財政出動を伴わない点にあります。債務残価の拡大に苦慮していた各国政府は徐々にマネタリズムを金融政策の中心に据えて行きます。イギリスではサッチャー政権が、アメリカではレーガン政権が採用して、景気の回復を達成します。


■ 量的緩和の時代 ■

マネタリズムはお金の借りての需要が在るからこそ有効でした。しかし、バブル崩壊後の日本の様に、民間の資金需要が極端に委縮すると、いくら金利を下げても景気が回復する事が難しくなります。

そこで、ケイジアン的財政出動で景気を回復させととの圧力が高まりますが、インフラが充分に整備された先進国では、財政拡大の効果は限定的です。乗数が1程度に下がっているので、財政拡大分の名目GDPの拡大しか望めないのです。

この様な状況で日銀が実行したのが量的緩和です。金利がゼロになった状況で資金需要が枯渇している経済で、マネタリーベースを拡大して市中に資金を潤沢に供給する方法として、日銀の当座預金を増やす事で、をれを元手とする市中への資金貸し出し量の拡大を目指します。

実際には民間の金融機関の保有する国債や手形を日銀が買う事で実行されました。しかし、民間の資金需要が極端に低下している状況は改善せず、一方、日銀が当座預金に利付けをしていたので、資金は日銀当座預金にブタ積され、国債の購入資金を増やすだけとなります。

私個人は、日本の量的緩和は、財政拡大の補助的政策だったと理解しています。バブル崩壊後にどうしても拡大する国債発行を、日銀の当座預金の資金で支え、一方で、銀行にゼロリスクで当座預金金利を提供する事で、銀行の経営改善を図る政策だったと。

■ ゼロ金利の罠と、リフレ論者の台頭・・・ヘリコプターマネーの時代 ■

リーマンショック後、FRBもECBも量的緩和的な政策に切り替えます。FRBは紙切れ同然となってしまったMTBなどの資産を大量に買い入れ、ECBは銀行の国債購入の為の資金をゼロ金利で大量に貸し出すという形を取ります。

アメリカでは民間の債券危機が危機の本丸、ヨーロッパではギリシャの国債など南欧諸国の国債危機が深刻化していたからです。

同時期、日本ではリフレ論が台頭して来ます。ゼロ金利になった時点で金利操作による中央銀行の金融政策は効力を失いますが、日銀は国債を民間銀行から買い入れて銀行の日銀当座預金を増やし、マネーサプライ(マネーストック)の元を増やす量的緩和を再開していました。

しかし、日本の景気は回復しなかったので、もっと緩和が必用だとの意見が内外から活発化します。当時、FRB議長のバーナンキも「もっと積極的な金融緩和=リフレ政策」の支持者でした。彼は「ヘリコプターからお金を撒けば景気は回復する」というヘリコプターマネーという説まで開陳します。

2013年に日銀の黒田総裁は「異次元緩和」という名前でリフレ政策を実行に移します。「リフレ政策は中央銀行が大量の資金を提供する事で将来的なインフレ期待を高め、実質金利をゼロ以下に下げる効果がある」と説明されています。

異次元緩和後に若干インフレ率が上昇する気配が有ましたが、実はこれは円の大量発行によって為替が円安に振れた影響がほとんどで、原油価格が低下すると、その効果も消えてしまいました。

■ マネタリズムの限界と、長期停滞論 ■

リーマンショック後、日本を筆頭に世界は低成長を続けていますが、マネタリズムの金融政策はそれを解決出来ていません。

むしろ、マネタリズム的金融政策は80年代以降、アメリカでは10年周期でバブル崩壊を繰り返す結果となっています。資金供給量の拡大は、先ず資産市場でバブルを発生させ、その後実体経済が活性化し始めますが、自体経済が回復して金利が上昇し始めると、低金利で肥大化していた資産市場は必ずバブル崩壊を起こしてしうま為です。

この様な状況に対して、元財務長官のサマーズは「長期停滞」という考え方を発表します。先進国は慢性的な需要不足に陥っており、それを打開するには多少のバブルも必要だと発言します。バブルの悪い面ばかり強調されるが、IT市場の発展などバブルの功績も無視できないというのです。

ただ、「長期停滞論」は先進国の成長率が総じて低い自称は認めていますが、何故低いかの回答を与えていません。

一般的には、次の様な原因が考えられます。

1) 少子高齢化
2) 社会福祉費の増大
3) 過剰供給力
4) 低賃金
5) イノベーションの欠如

■ ニューケイジアンとMMT ■

日本の異次元緩和の以前より三橋貴明氏や中野剛志氏らに、「金融緩和」と「財政出動」を組み合わせて景気回復を図るべきだとの主張が有ります。彼らはネトウヨと呼ばれる人達のオピニオンリーダーですから、ネトウヨ界隈でもこの主張は強く支持されます。

1) 日銀は政府の子会社(統合政府)なのだから日銀の保有する国債は政府の資産
2) 政府の負債である国債は、日銀の資産である国債と相殺される
3) 国債金利が日銀に払われる以上、日銀の金利は国庫へ返納される
4) 日本政府は日銀が国債を買い入れる限り、債務残高を気にする必要は無い

4) 日本の国債は自国通貨建で、その保有者もほぼ日本国内なので国債の売り浴びせの心配はない
5) 仮に金利が少々したら、国債発行を減らすか、日銀が金利を上げてインフレを抑制すれば良い

世界的にも、リーマンショック直後に、積極財政を支持するケインズ主義が再評価された時期が有りました。アメリカは、その後景気回復が始まったので、マネタリズムに回帰していますが、日本は日銀の異次元緩和という形で、間接的な財政ファイナンスに踏み込みます。

一次は年間80兆円の国債を市場から買い入れていた日銀ですが、国債残高の半分以上を日銀が保有する状況で、流石に国債を市場から大量に購入すると、短期金利のマイナス幅が深くなり、問題が出て来ます。そこで、日銀は現在、国債購入を年40兆円程度まで縮小しています。


この様に中央銀行を始め、主流派経済学は、「通貨の価値」の維持に腐心してきまいした。

かつては中央銀行が「通貨の番人」としてインフレを抑制してきましたし、マネタリストはマネタリストなりに、数理モデルを用いてマネーサプライの定量的な上昇が、過度なインフレを招かない事を説明して来ました。

尤も、実際の経済は非線形でヒステリックな動きをするので、マネタリスト達はリーマンショックを予見出来ず、資金供給が過剰な現在の資産市場は、過度なリスクテイクによってテールリスクを拡大する傾向に有ります。

マネタリスト達が予見できないテールリスクには「ブラックスワン」などという洒落た名前が付いていますが、現代の経済学が限られた条件の未来しか予想できない事の裏返しに過ぎません。

マネタリスト達も、その様なリスクは理解していますから「ヘリコプターマネー」などという極端な言説で期待を煽りながらも、実際には金利引き上げで市場を牽制しています。日銀も「異次元緩和」という掛け声の裏で、日銀当座預金の利付けを続けたり、マイナス金利の深堀に躊躇してバランスを取っています。

これに対して、「自国通貨建ての国債は破綻しないのだから、政府は無制限に国債を発行出来る」とアメリカで主張が始まります。これにアメリカの極左の民主党のサンダース議員が乗り、サンダースを支持する若者達に急激に浸透して行きます。「日本ではMMTが成立しているでは無いか」と彼らは主張します。

これに勢い付いたのが三橋貴明氏や中野剛志氏らです。MMTの主張は、まさに彼の主張そのものですから。

■ ブードゥー(呪い)の呪文が変わっただけ ■

ニクソンショック以降、通貨は文字通り「紙切れ」です。その気になれば100ドル紙幣も、1万円札も、いくらでも刷る事が出来ます。(電子的な中央銀行の当座預金も含め)

ただ、主流派経済学者(マネタリスト)は、マネーサプライの拡大はコントロールが可能という立場で「ある程度お金を大量に刷っても、お金の価値は担保出来る」と主張して来ました。(実際にはリーマンショック直後はドルの流動性が消失して、ドル基軸体制の崩壊すら意識されましたが)

マネタリストの主張は一種の「ブードゥー(呪い)」に過ぎませんが、人々や市場がそれを信じる限り、「呪い」は効果を発揮します。


MMTの「自国通貨建ての国債は破綻しない」というのも「呪い」の一種ですが、債務残高が拡大して、さらには資金が市場に強引に供給される事で、今よりもさらにテールリスクを拡大するので、ちょっとタチの悪い「呪い」です。

「魔術は等価交換を誤魔化す事で成立するかに見えますが、その弊害は世界のどこかで必ず現れる」と『新約 とある魔術師の禁書目録』の18巻にも書かれています。・・・おっと失礼。


■ 無税国家の成立を認めるMMT ■

MMTの理論では「無税国家」が成立します。

極論すれば、政府は人々が幸せになる分だけ通貨を発行でき、政府が人々を直接雇用して通貨を支給する事も可能。

・・・・あれあれ、こういうユートピア、かつて何処かで聴いた事が在るぞ・・・。そう、社会主義の統制経済が目指したユートピアです。だからMMTはサンダースら極左と相性が良い。

実際のMMT支持者もMMTによる無税国家は実現可能だとしています。これを否定してしまうとMMTそものがが成立しないからです、

ただ、MMT支持者は「税は必要」だと主張します。「税は所得再分配によって公平を担保する手段」だとか「インフレを抑止する手段」だと。

ただ、所得再分配の方法なら、彼らの好きそうなベーシックインカムの方が公平性が高そうですし、インフレ時の増税は民衆主義のプロセスではコンセンサスが取り難い。人々は増税を嫌いますから。

だから、MMTを実際に運用しようと思ったら、政府が独裁的に強権を持つ社会主義が不可欠となりますが、旧ソ連を見るまでもなく「誰でも平等に幸せな世界=誰でも平等に不幸な世界」でした。

何故なら、一所懸命に働いても、怠けても評価な平等な世界ならば、怠けた者が得をするからです。


■ 積極財政を支持し始めた主流派経済学 ■

昨今、MMTの議論が加速している背景には、主流派経済学者の中にも財政拡大を示唆する人が出てきたからです。

ブランシャール(元IMFチーフエコノミスト)らが「日本はもっと財政を拡大すべきだ」などと発言しています。サマーズらも財政拡大を示唆しています。


彼らが問題視しているのは先進国の需要の弱さです。いくら緩和的な金融政策を続けても、賃金上昇も限定的で、結果的に需要が伸びない。ならば、もう少し強引に資金を市場に流通させる為に、財政拡大で刺激するのも悪くは無いのでは・・・・

ケインズ政策を否定していたマネタリスト達がケインズ政策にすがる程に世界の需要は低迷している・・・・。

■ 供給過剰を遮断するトランプ ■

実は世界が抱える生長の限界の、本当の理由は「過剰供給」に有ります。

1) 中国や新興国からの安い輸入品が物価にデフレ圧力を掛けている
2) ITの進歩はGDPに反映されない価値を生み続けている
3) 国内産業の空洞化と、IT化は人々から仕事を奪い続けている

高齢化社会がこれに拍車を掛けます

4) 高齢者の消費は少ない
5) 高齢者に資金が滞留するので若者の所得が下がる


トランプが推し進める「自国主義」ですが、結果的にはインフレを生み出すと思われます。さらに、中東の緊張が高まれば、原油価格も上昇します。



■ MMTの学術的な正当性よりも、それが支持される空気が怖い ■

確かに現在の日本では、一時的にMMTが成立する条件が整っています。しかし、フリーランチが存在しない世界では、テールリスクを高める事で、悲惨な結果を招く可能性も否定出来ません。

政策責任を持つ政府や財務省、中央銀行関係者が必死にMMTを否定するのは、MMTを製作の中心に掲げる政党が現れると、国民の少なからぬ票を集める可能性が有るからです。

閉塞感が高まっている日本では可能性が無い訳ではありませんし、アメリカも貧困層や若者を中心に支持を集めるでしょう。ヨーロッパでもネオナチ(極右)を中心のMMTを支持する可能性は高い。

MMTな「後は成るように成るだろう。その時になったら考えよう」という非常に楽天的で無邪気な学説?ですが、「どうなるか分からない社会実験」を、責任ある大人である私達が支持するのは難しい。


それよりも「隠れ財政ファイナンス」である異次元緩和が継続する事を、コッソリと応援する方が大人の対応と言えます。


ただ、仮にリーマンショック以上に危機が起きたなら、一気にMMTに趨勢が流れる事も考えられなくも無く、同時に自国主義も台頭するので、「戦後の協調する世界」の幻想が、通貨の幻想と共に崩れ去る可能性も全くの妄想とも言えなくなって来ます。


成長がリセットから生まれるのだとすると・・・・ボタンを押したいと考えるのはゲーマーだけでは無いのでは?




<最後に>

鍛冶屋さんのコメントでスタートしてMMT論ですが、通貨自体が集団の共同幻想の産物なんので、その幻想の種類にも様々なバリエーションが存在します。

時代や状況によって「一番支持される幻想」が変化しますが、MMTが次代の主流派になる可能性は否定出来ません。理解不能な数理モデルよりも「みんなハッピー」という幻想の方が、人々の支持を集め易い事も確かです。

ただ、民主主義の世界をコントロールしているのはマスコミなので、正論も極論も誤説も、マスコミが「正しい」という太鼓判を押さない限りは、今の日本で一般に浸透する事は無いでしょう。ただ、MMTの議論の中で、日本の国債の「耐性」って意外に高いんじゃないかという発想が生まれた事が、財政の柔軟性を確保し、異次元緩和を継続する上で、意外ににも役立つものだったのでは無いかと考えています。


本日は私の頭の中を整理する意味で、長々と書いてしまいましたが、間違いがありましたらご指摘下さい。コメント欄で意見交換するのがブログの楽しみなので。

異次元緩和の見えないリスク・・・リスクフリーなどあり得ない

2019-06-05 09:54:00 | 時事/金融危機
 

■ 無限国債は成立するのか ■


MMT理論が成立する様な状況では「無限国債」が成立するはずです。

1) 政府は赤字国債を大量に発行し続ける
2) 間接的、或いは直接的に中央銀行が国債をファイナンスし続ける
3) 国債の最後の引き受け手の中央銀行は無限に通貨を発行出来るので国債は無限に発行できる
4) 日銀は政府の子会社なのだから日銀の資産である国債は政府の負債と相殺される

ネトウヨの主張を延長すると「無限国債は成立する」となりますが、彼らとて、こんなに都合の良い事が現実に起きるとは信じていないでしょう。(一部の方を除いて)


上のループが成立する為には「インフレ率が十分に低く、金利が抑制されている」事が絶対条件になります。

日銀の国債買い入れは市場を通して行われますが、その過程で日銀は民間に大量の円を供給しますから、円が巷に溢れれれば、通常ならば通貨の価値が減少してインフレが発しします。



■ 日本の低成長が支える異次元緩和 ■


先の記事にも書きましたが、日本の成長率はゼロ近傍に張り付いています。これは少子高齢化の影響が大きいのですが、結果として日本国内の金利を押し下げ、国内での投資機会を減少させます。

国内金利が低下すると、相対的に海外の金利が高くなります。金利3%の米国債は、為替リスクを考えるとあまり魅力的な商品とも思えませんが、それすらも魅力的に見えてしまうのが現在の日本の国内金利です。

こうして、日銀が異次元緩和によって民間に供給した大量のマネーの多くは、海外に流出します。(リスクを取り得る一部のマネーは、日本株や国内の不動産に流れ込みプチバブルを形成しています。)


■ 金融危機が発生すると極端に円高に振れる ■

異次元緩和による円の増加と、円キャリー取引の発生によって円は実力以上に円安になっています。リーマンショック後にアメリカも一気にマネタリーベースを拡大したので、現在の為替水準はもっとドル安円高で良いハズです。

リーマンショック以降、市場がリスクオフになる度に、為替市場は円高に振れますが、円キャリートレードの手じまいで円高バイアスが掛かる所に、市場の関係者の思惑も絡んで、円高が加速します。

■ 次なる金融危機で壊滅的なダメージを受ける日本 ■

仮に、リーマンショック級の金融危機が発生したならば、再び急激な円高が一時的に発生するハズです。為替ヘッジの想定以上に円高が加速すれば、内外金利差など簡単に吹き飛んで、日本の海外投資は大きな含み損を抱える事になります。

私は次なる金融危機で日本の金融機関は危機的状況に陥ると妄想しています。ゆうちょ銀行、農林中金を筆頭に、地銀なども経営危機に陥る可能性が高い。

GPIFのダメージも相当なものでしょう。

■ 株価下落で債務超過に陥る可能性が有る日銀 ■

海外資産を持っていないので安泰と思われる日銀も、国内株の下落で下手をすると債務超過に陥る可能性が指摘されています。日銀は最後の買い手として、日本株を高値掴みしていますから、大幅な下落で含み損が拡大します。

■ 為替市場で円の下落が始まり、インフレが加速する ■

日本国内の金融機関の経営がガタガタになり、日銀も大量の含み損を抱えるとなると、さすがに為替市場で円高を維持する事は不可能になるでしょう。

ここで急激に円安が加速して、1ドル150円を超えて来ると、原油をはじめとした輸入品の価格が上昇して、日本国内のインフレが加速します。


■ フリーランチは存在しないと世界に示す日本 ■

円安を止める為には金利を上げるしか方法がありませんが、財政赤字を積み上げた日本で金利上昇は命取りになります。

この段階にもなれば、国民は銀行も政府も信用できなくなりますから、銀行から預金を引き揚げ様とするハズです。ここで、銀行はシャッターを開ける事が出来なくなります。

多分、事がここまで進む前にIMFが救済に乗り出すハズです・・・。これが異次元緩和の結末だと私は妄想しています。


尤も、次なる金融危機でドルや他国通貨の信用がどれだけ保たれているかは疑問なので、世界中の通貨の価値が等しく棄損すれば、最悪のシナリオは回避出来るかも知れませんが・・・。






経済の「天動説」・・・MMT理論

2019-06-05 04:19:00 | 時事/金融危機
 

■ 現代貨幣理論(MMT理論)を簡単にまとめてみる ■

巷を騒がせている?MMT理論なるもの。私などは詳しい説明を読めば読む程、理解不能になってしまいます。ただ、結論を要約すれば次の様になります。

1) 通貨発行権を有する政府は無制限に通貨を発行する事が出来る
2) 通貨は政府の負債であるが、税金と国債によって相殺される
3) 基軸通貨ドルを有するアメリカと、自国通貨建ての国債を国内で保有している日本は
   ある程度の赤字国債を発行しても財政破綻は起こらない

通貨発行権は中央銀行が有していますが、中央銀行を政府の子会社だと考えれば、政府が通貨発行権を有していると言えます。建前上は中央銀行は政府から独立しており、無制限に通貨を発行する事を禁じています。しかし、現代の不換紙幣は「単なる紙切れ」なので、中央銀行がその気になれば、いくらでも紙幣を印刷する事は可能です。

中央銀行の発行する通貨は「中央銀行の負債」ですが、これを政府通貨と考えるならば「政府の負債」となります。この政府の負債にバランスするのが、国民の税金と国債となります。

■ 基軸通貨国のメリット ■

基軸通貨であるドルは、世界中の国が欲しがるので、ジャンジャン刷る事が出来ます。そして、ドルに準じる信用力が有り、さらに金利が付く米国債も人気が有りますから、アメリカはある程度安定して米国債をジャンジャン発行出来ます。アメリカはドルを大量に発行する一方で、米国債によってドルを世界から吸収する事でドルという負債を消滅させているのです。

■ 自国内で国債が消化されていた日本 ■

一方、日本は異次元緩和の前までは、国内の金融機関が国債を大量に保有する事で、円という政府の負債を消滅させていました。これを支えていたのは、日本国民の預金です。日本人は銀行預金を通して間接的に国債を保有していたのです。

■ 「異次元緩和」は「財政ファイナンス」に他ならない ■

しかし、国債の発行量が増え続ける中で、国民の金融資産で国債を消化する事が不可能になって来ました。国債の需給関係が崩れると、国債金利が上昇して、国債発行コストが急激に拡大します。そうなる前に、財務省と日銀は「異次元緩和」という「隠れ財政ファイナンス」を開始します。

多くの経済学者は「財政ファイナンスを行うと通貨の信用が棄損して、国債金利が上昇する」と予想していましたが、日本の金利は上がるどころか、下がり続け、ついにはマイナスになってしまいました。

日銀が日本国債市場で「池のクジラ」となって市場を支配した為に、日本国債市場の市場原理が働かなくなった為に起きた現象です。ゼロ金利の国債でも、日銀が高く買ってくれるので、国債の需要が維持出来ているのです。

■ マイナス金利によって減り始めた日本の国債負担 ■

ゼロ金利国債は大量に発行しても金利負担はゼロです。マイナス金利国債に至っては、発行すればするだけ利益が絵られます。

マイナス金利国債の利益は、借り換え債で顕著に表れます。金利2%の国債をマイナス金利の国債で借り換えれば、金利負担は消えて無くなります。仮に新規発行国債の増加が無ければ、国債残高は徐々に減り始める事になります。

■ 日銀の国債保有に限界はあるのか ■

「異次元緩和」の成功はMMT理論支持者や、ネトウヨ界隈を喜ばせています。彼らは、現在の日本の様な状況において「政府の財政赤字には制約が無い」と主張し始めます。

彼らの主張は次の通りです。

1)日銀は政府の子会社である
2)日銀の保有する国債(資産)は、政府の資産である
3)政府の負債である国債と、日銀の資産である国債は相殺される
4)日銀が国債を引き受け続ければ、政府はいくらでも国債を発行できる

一瞬正しい主張の様に思えてしまいますが、この主張では「円の価値」が抜け落ちています。国債という資産に価値を与えているのは、円という通貨の負債です。仮に日銀の国債引き受けによって政府が無限に国債を発行出来るのならば、その過程で円も無限に発行され、円の価値はゼロに近付いて行きます。

この事から、日銀の国債引き受け量に限界が存在し、国債の発行量もその制約を受ける事が分かります。

MMT理論的には無限に発行できる通貨ですが、現実の世界では「通貨の価値を極端に棄損しない範囲」という制約を受けます。だから、日銀も財務省もFRBも、そして良識的な著名な経済学者もMMT理論を「異端」として退けます。この事は良識のあるMMT理論支持者は当然理解しています。

■ MMT理論が成立する条件 ■


日本は現在、限定的にMMT理論的な状況が成立しています。政府の国債発行残高が拡大しているにも関わらず、国債金利はゼロ以下に抑えられています。

「国債金利<成長率」の条件において、財政破綻は起こらず、将来世代の負担も拡大しないとされています。

これ、端的に言ってしまえば「上限金利を設定した金融抑圧政策」で、インフレ率よりも低い金利によって、国民の資産が見えない形(インフレ税)によって国家に吸収されているだけです。

本来、国債は将来の税収によって支払わるとされますが、時間軸を敢えて無視するならば、現在の日本国債は国民の金利獲得機会の喪失(=金利負担)によって支えられているとも言えます。

■ 超金利は国内の投資意欲を削ぐ ■

MMT理論支持者や、ネトウヨの方達は、何故か「得だけしたい」というお花畑左翼と同じメンタルを持っている様です。現に、アメリカのMMT支持者達は、民主党支持者が多い。彼らはMMTが成り立つならば、ベシシックインカムが実現して、誰もが豊かな社会が実現できると主張し始めるでしょう。

しかし、MMT的な政策には副作用があります。「インフレ税」は国民資産をこっそりと搾取しますがこの影響は緩慢です。

一方、国債金利は金利体系の基本となっていますから、国債金利が低下し過ぎると、市場金利も不当に抑圧されます。一見、借り手に有利なので、投資が活発化すると錯覚されますが、お金を貸す側からすれば、リスクに見合った金利が得られない事になります。

金利が下がり過ぎてしまった日本では、中小企業が銀行から融資を受けたくても、銀行は低い金利では貸したがりません。一方、大企業は社債発行が低金利で可能になるので、銀行を充てにしなくなります。こうして、極端な金利低下は銀行の利益機会を減らす事で、金融仲介機能としての銀行の機能低下を招き、地域経済を中心の停滞が加速します。


■ 低金利によって国外へ逃避するマネー ■


国内の低金利が一定水準を超えると、お金は金利を求めて海外に流出します。年金積立金が外国債や海外株式で運用されたり、ゆうちょ銀行の資金が海外で運用されたり、投資信託を投資手老人の資金が海外に流出します。

預金者や投資信託の保有者からすれば「国内金利よりも高い金利が得られるのでお得」となりますが、本来は日本国内で運用されて経済を活性化せたハズのお金が、海外で運用されてしまうのですから、日本経済的にはマイナスとなります。

日本の長期停滞の主要因は少子高齢化による社会の不活性化ですが、極端な低金利は国内経済にさらなる低下要因をもたらします。

■ インフレ率の上昇を恐れる日銀と財務省 ■

私個人としては、日本の人口動態は悪すぎるので、MMT理論的な財政政策は仕方の無い事だと考えています。人口動態の最悪期の今後20年程を、成長と引き換えに財政ファイナンスで乗り切るのは悪い手ではありません。

しかし、その為には成長率(インフレ率)はゼロ近傍に抑え込まれる必要が在ります。日本の成長率は普通にゼロ近傍なので問題が有りませんが、外的要因でインフレ率が上昇する可能性が有ります。

それは円安の加速によるコストプッシュインフレです。異次元緩和の初期に、インフレ率が上昇し始めましたが、これは円安の加速によって原油価格が上昇した為に発生しました。アベノミクスへの期待もありましたし、安倍政権初期のバラマキの影響もあって、名目成長率も上昇していたので、金利に上昇圧力が掛かっていまいた。そこで財務省は「消費税増税」を実行して、景気に水を差します。


その後、消費税増税は先送りされていますが、これは「機動的なインフレ率抑制手段の温存」と考えると合理的です。

増税延期によって安倍政権は政権基盤をさらに盤石とし、一方で財務省と日銀は金利抑制手段を温存出来る・・・まさにウィン・ウィンの関係です。

■ 消費税増税は先送りされる可能性が有る ■


消費税増税分を見越して、安倍政権は幼児教育の無償かや、高等教育の学費の一部無償化など、様々なバラマキ製作を予定しています。財務省的には、安倍政権に先にアメを与えているので、消費税増税は実行するべきと考えているでしょう。それで無ければ財源が確保出来ません。

ただ、財務省が増税延期を認める可能性はゼロではありません。株価を見るまでも無く、世界経済に暗雲が広がり始めています。このタイミングで消費税を増税すると、日本経済に深刻なダメージを及ぼし、税収が極端に低下する可能性は高い。

そこで、MMT的に良好な国債発行状況を利用して、消費税増税を見送る事も考えられます。


中東情勢によっては、消費税増税は原油価格上昇時に温存しておく可能性も在ります。


■ MMT理論は経済学の「天動説」に見える ■


MMT理論は、限定的な条件によって成立しますが、しかし、これは貨幣というものの機能や成因の都合の良い所しか見ていません。

例えば、実際にアメリカのMMTを大々的に実施すれば、即座に為替相場が混乱するでしょうし、日銀が異次元緩和をさらに拡大すれば、資金は日本の実態経済を潤す前に、世界の金融市場でバブルを拡大し、やがてそれは崩壊を起こして、世界経済に深刻な影響をもたらします。

MMT理論は、この様なグローバルな経済の循環を無視して、国内の限定された領域で話を進める傾向が強い。

これは、地球の周りを星々が回っていると信じた「天動説」の発想に近い。理解の及ぶ範囲で、限定的な条件で成立する法則だけを見て、妄想を膨らめているだけ・・・。


今は成功しているかに見える日銀の異次元緩和(財政ファイナンス)ですが、仮に再び金融危機が発生した場合、その原因は「極端な金融緩和」に有るとされるでしょう。

そうおなれば異次元緩和の継続も難しくなり、反動として日本国債の金利が急上昇する事も起こり得る。

日銀と財務省は利口ですから、その辺の匙加減を考慮して、MMT理論に否定的な訳ですが・・・トランプがMMT理論を本気で支持し始めたら、多分、金融資本家達によってパージされる事でしょう。


■ 悪魔の囁き ■

元IMFのチーフエコノミストのブランシャールが「日本は財政赤字を拡大すべき」と発言して注目を集めています。

「現在の日本の環境では、プライマリーバランス赤字を継続し、おそらくはプライマリーバランス赤字を拡大し、国債の増加を受け入れることが求められています。プライマリーバランス赤字は、需要と産出を支え、金融政策への負担を和らげ、将来の経済成長を促進するものです。要するに、プライマリーバランス赤字によるコストは小さく、高水準の国債によるリスクは低いのです」



一部の人達がこの発言に大喜びしていますが・・・・これって「MMT的に通貨にどれだけ耐性が有るのか、日本で試してみようじゃないか」と言っているに等しい。まさに悪魔の囁きです。


■ 現代の通貨は、過去の通貨よりも耐性が高い ■

MMT理論に否定的な事を書いて来ましたが、その根拠は、過去に通貨の大量発行がろくな結果
をもたらさなという実例が多く存在するから。

ただ、多くの場合、その原因は「戦争」にある事が多く、生産を伴わない政府支出の拡大が、財政を崩壊させ、通貨価値を棄損してきました。特に、敗戦した側は、第一次世界大戦のドイツを例に取るまでも無く、悲惨な結果に終わっています。

現在でも、政局の不安定な国家などで通貨危機は日常茶飯事で発生していますが、先進国の通貨は、はぼ安定しています。これは、世界から大きな戦争が無くなった事の影響も大きいでしょう。極端に財政にストレスを掛ける事態が起こらなくなった。

一方で、現在の日本の様に、長期停滞による財政の緩やかな悪化が、通貨にジワジワとストレス掛けています。尤も、先進国の多くが長期停滞の状況にある中、リーマンショック後は金融緩和を拡大していますから、相対的に先進国の通貨は「悪い中で安定」しています。

MMT理論が広く知られる事で、日本の財政赤字拡大に国債市場が耐性を高めた事も確かでしょうし、国民も妄信的な緊縮財政信仰から目覚めつつあります。これは、財政赤字が拡大した日本で、財政の機動性を確保する意味で有意義です。

ただ、国民の多くがMMT理論信者になると、政府への財政拡大圧力が極端に高まり、現在のモラトリアムが継続出来なくなります。その危険銓を抑制する為にも、MMT理論が限定的な条件でしか成り立たない事を、国民の多くが正しく理解するべきですが・・・無理ですよね・・・。特にネトウヨは聞く耳を持たないですから。


■ MMT理論が広がった裏にチラつく通貨マフィアの影 ■

リーマンショック後の各中央銀行の金融緩和に出口は最初から存在しないというのが私の主張です。金融正常化の過程(金利上昇の過程)で、必ず金融緩和バブルは崩壊します。

FRBは日銀とECBのバックアップで、どうにか利上げを続けて来ましたが、そろそろ限界です。日銀やECBに至っては、出口すら見えません。

2013年4月に日銀が異次元緩和をスタートさせて6年が経過していますが、インフレも目標は幸運にも達成されていません。しかし、今後、中東で戦争が起こるなどして、意図せぬインフレが発生する可能性は低くはありません。

その時に、インフレ率が上昇したから緩和を中止しろとの圧力が高まると、金融市場が一気に吹っ飛びます。そこで、各中央銀行がインフレ進行時に急激に金融緩和を縮小しない為の布石が、昨今のMMT理論の広がりなのだと、私は妄想しています。

ネトウヨ言論が異次元緩和の露払いの役割を担わされていたとするならば、MMT理論の広がり来るべき危機への伏線では無いか・・・・やはり最後は陰謀論で締めないとね。