このかわいい恋愛小説(この手のイラスト表紙の本)には少し身構えてしまう。だけど勇気を出して読み始めると、まさかの出会いもある。まぁこれは稚拙だけど、確かな覚悟には貫かれているからよしとしよう。過去を書き換えてふたりがもっと幸せに出会うために。そんなドラマである。
お話の仕掛け自体は悪くはないとは思ったが、整合性に振り回されてお話があまり面白くならないのがツラい。辻褄合わせは絶対必要だけど、一番大事なのは面白さである。ハラハラドキドキする展開と絶対に助けるという覚悟。そのためにあらゆる困難を潜り抜ける。面白さはただのエンタメ志向ではない。世界観の構築を含め,知らない世界を提示してくれることにもつながる。
これもそんなドラマを作り上げるべきだった。お話が中途半端でラストなんてこれで終わりですか、と言いたいくらいにあっけない。お互いパートナーの子供時代のふたりを連れて旅をするけど、3日のラストではちゃんと再会した方がいい。エピローグでの再会だって、「船、ケーキ」の合言葉の確認だけでは物足りない。
ふたりがこの3日の旅を通してどこに行き着いたのか。歴史を改変しても彼の母を助ける。それは彼と出会うための戦いである。この後半の彼女の戦いをもっとはっきり描くべきだった。彼の側から描く前半部分は巻き込まれ型ドラマの定番で悪くないけど、後半は(安易な)散りばめられた謎の回収にしてはならない。ここをもっとしっかり描けたなら感動的な話になったのに、残念である。