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映画・演劇のレビュー

中島京子『女中譚』

2010-05-20 21:44:40 | その他
 平成の秋葉原を颯爽と行く老嬢。彼女はなんとメイド喫茶に入る。そこでオタクの少年に向けて昔、自分がメイドをしていたときの話を、一方的に語り出す。

 林芙美子、吉屋信子、永井荷風にインスパイアされた3編から成る連作長編。この作品の主人公であるすみちゃんというおばあちゃんが語る話自体は興味深いのだが、これが中島京子の小説だと思うと、彼女としてはちょっとつまらない。アイデアは悪くはないし、一気に読ませてしまう力はある。だが、それだけなのだ。

 この小説を通して何を伝えたかったのだろうか。昭和の初めと平成の世をメイドでつないで見せたかったものってなんだったのか。それが僕にはよくわからないのだ。だから、読み終えたとき、なんとももどかしさばかりが残った。

 昭和モダンとか、風俗とかを追いかけて、そこに、原典にあるドラマのリライトでしかないお話を添えても何も見えてこない。ばあさんの昔話がどこに行きつくのか、それを示して欲しかった。

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