夏川草介が医者の世界を離れた作品を手掛けるのは初めてではないか。今回の主人公は民俗学者だ。大学の准教授と院生のふたりが旅をする。凸凹コンビの掛け合いの面白さでお話を引っ張っていく。飄々とした主人公はいつもの夏川草介の小説でおなじみのタイプだ。第1話のタイトルがいきなり『寄り道』とは、笑わせてくれる。本題から逸れていくように見せかけて実はそこにこそ大事なものがある、と気づかせてくれる。民俗学なんて、 . . . 本文を読む
『金魚妻』なんていうエセ・ポルノを見たから、少し久しぶりに日活ロマンポルノのことを思い出してみた。僕のロマンポルノベストワン作品は斎藤水丸監督の『母娘監禁・牝』だ。学生時代から就職してしばらく、ロマンポルノがなくなるまでの日々にかなりの作品を見たはずだ。根岸吉太郎や金子修介のデビュー作もここから生まれた。廣木隆一の映画もここから見始めた。学生時代は新世界日活でアルバイトもしていた。なんだか懐かしい . . . 本文を読む
ネットフリックスの新作だ。8話からなる長編連作。篠原涼子主演のこの作品は、驚きの内容である。なんとこれは「現代のロマンポルノ」なのだ。主婦の浮気が描かれるからではない。これはロマンポルノの記念すべき第1作である白川和子主演の『団地妻・昼下がりの情事』へのオマージュではないか、と僕は勝手に想像したからだ。
まず、その理由を述べる。この作品にはあきらかに意味のないセックスシーンが毎回挿入されている。 . . . 本文を読む
2021年の8月の出版になるから最新作になる『新しい星』のひとつ前の作品になるけど、読んでなかったらしい。4話からなる短編集だが、ふだんの彼女の作品とはいささか毛色が異なる。これはなんだか実験的な作品集になっていて少し驚く。
冒頭の仕事を辞め、慣れない育児に奮闘する主夫を描く作品(『わたれない』)がとても面白かった。自分も昨春から仕事をやめて主夫をしているから、わかるわかる、と思うところもある。 . . . 本文を読む