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映画・演劇のレビュー

『金魚妻』

2022-02-26 10:36:40 | 映画

ネットフリックスの新作だ。8話からなる長編連作。篠原涼子主演のこの作品は、驚きの内容である。なんとこれは「現代のロマンポルノ」なのだ。主婦の浮気が描かれるからではない。これはロマンポルノの記念すべき第1作である白川和子主演の『団地妻・昼下がりの情事』へのオマージュではないか、と僕は勝手に想像したからだ。

まず、その理由を述べる。この作品にはあきらかに意味のないセックスシーンが毎回挿入されている。どう考えても無理やりな感じがした。これってロマンポルノの10分に1回セックスの場面を入れるという初期のルールを思わせる。でも配信作品だとはいえ、一般家庭でのTV視聴を目的としたものなので、必要以上には過激なシーンにはならない。それどころかメインの女優は無理やり裸の胸は基本見せないというルールが守られている。(ただし安藤政信が相手にする特定の女性は除く)なんだか、よくある「お話の展開上必要な裸だ」とかいうのとはまるで違うのだ。

タワーマンションのセレブ住人たちの性が描かれる、なんていうのも、70年代の団地と同じような雰囲気だ。篠原のエピソードを中心にして、ここで暮らすさまざまな夫婦の人間模様を描く連作スタイルなのだが、お話の切り込み方が浅すぎて、本気で作られた作品には見えない。嘘くささ満載。しかも、わざとらしいポルノ展開とか、これはただのソフトポルノだとしか思えない作りなのだ。どうしてこういう作品ができたのか、とても気になった。そこで「つまらないな、」とは思いつつも、作り手の意図が知りたくて最後まで見てしまった。(でも。結局、作り手の明確な意図は見えないまま、終わるのだけれど。)

監督や脚本が女性で、そこから感じられるのは、男性のためのポルノ映画だったロマンポルノに抗して女性のためのロマンポルノを目指した、ということなのか。この先、シリーズでこの手の作品が作られるのだろうか。人気作品になっているようだから、きっと第2弾もできるのだろうな、とは思う。今の時代、手を変え品を変えいろんなものが作られるのだな、と感心する。

お話自体は、どれもたわいない。ありえないような、でもまぁ、それに近いようなことはあり得るかな、という程度。はっきり言って作品としては全く見るべきものはない。


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