諸事情から神原さんの前作を見逃しているので、今週はまず何よりも神原作品を優先して見に行くことにした。このところずっと彼女の作品を欠かさず見ている。彼女は毎年4本、コロナ禍も休まずせっせと作り続ける。毎回そのバイタリティーには圧倒される。だから僕もしっかり見ることにしている。(作り続けるのは、大変だけど見るだけなら簡単だし、ね)
今回はヒロインに小林桃子(演劇集団⭐︎邂逅)を迎えて、なんと人が死なない芝居を目指す。と、聞いていたのに、終盤に小林さんが包丁を持って愛しい男、松蔵を刺そうとする! 「いいのか、これで。また死ぬぞ!」とドキドキする。咄嗟に松蔵の弟犬丸(岩井宏行)が飛び出し誤って彼が刺された。やはり死者が出るのか、と思うけど、なんだか彼は肉厚だから大丈夫みたい。と、笑える展開に。
と、ここまではあまり芝居の良し悪しとは関係ない話になったけど、今回は3組の男女の報われない恋物語だ。お話はとてもシンプルでわかりやすい。短いいくつかの象徴的なエピソードで綴られる卯月から霜月までが描かれる。春の終わりから冬の始まる前までの短い時間のお話。
3世代の男女、その出会いと別れが描かれる。そこには叶わぬ想いが噴出する。なんとか心を抑える。何も望まない。70分の中にそんなさまざまな想いを交錯させて綴る。今回もあらゆるパターンを駆使して、だけどいつも同じパターンの中にお話を落とし込む。大阪道修町を舞台にして今回も神原ワールドは全開である。