サブタイトルには『父の昭和スケッチブック』とある。これは小手鞠さんの父上のノートを下敷きにした作品である。作品というより記録。すでに児童書として刊行されている『川滝少年のスケッチブック』の続編でもある。
昭和を生きた(令和の今も生きている!)小手鞠さんの父の書いたノート(4冊のスケッチブック)を彼女が感じたことを通して一冊の本にした。父と娘によるコラボ。1931年からの日々が綴られる。6夜(全体は6話からなる。)は小手鞠さんが生まれた後から現在までが描かれている。
戦前、戦中、戦後という時代を彼が生きた日々を描く漫画と短文を通して、小手鞠さんはこの本作りを通して、父とふたり旅をする。それは日本人が辿ってきた90年。
僕と小手鞠さんはほぼ同世代(彼女がふたつ年上)だから、ここに書かれたことはまるで自分のことのように感じる。僕の父親は20年以上前に亡くなっているから父から彼の生きた時間の話を聞くことはなかった。3年半前に亡くなった母からも。ふたりがどう生きてきたか、いまさら気になっている。
自分を知るために親の人生を振り返ってみる。前回の一色さゆり『音のない理髪店』に続いて(たまたまだが)自分のルーツを辿る本を読むことになった。