椎名さんの久々の短編小説集。テントを題材にした2つの小説で、全体がサンドイッチされてある。最初の『飛んでいった赤テント』は山での話。雪山での単独行で、遭難しそうになる。最後のタイトルロール『屋上の黄色いテント』は、火事で住む場所を失った男がなんとなくから会社の屋上にテントを張って住む話。どちらも日常をベースにして、でも、なんだか不思議な世界に誘われていく。ありえないことはない。充分あり得る。だが、なんとも不思議な感触が残る幻想的な小説だ。
間に挟まれた5つの短編もよく似た肌触りだ。淡々とした描写で自分が体験したことを述べていくのだが、なんとも言えない気分にさせられる。いずれもこれ見よがしな設定ではない。だが、なんだかあり得ないような展開になる。でも、それは日常の中にすっぽりと収まる。それどころかこれのどこが幻想的なのか、と思うくらいにさりげない。まぁ、誰もこれを幻想的だ、なんて言ってないけど。要するに僕が一人、そう言ってるだけなのだ。初めての海外旅行(しかも、フランス。およそ椎名さんらしくはない場所ではないか!)の体験を綴る『パリの裸の王様』や、電車の中に犬が乗り込んでくる『ある日』なんかもそうだ。
この本にはロール・デュファイというフランス人の若い女性が『屋上の黄色いテント』を描いた「イラスト物語」が同時収録されてあるのだが、これなんか、とても不思議な幻想漫画になっていて、あの小説の雰囲気を、さらに突出させたものになっている。椎名さんの描いた世界がフランス人の目を通してエキゾチックで、なんともいえないアンニュイとした無言劇として再生されてある。2作品を同時に見たらその違いと共通項がよく見えてきておもしろい。
間に挟まれた5つの短編もよく似た肌触りだ。淡々とした描写で自分が体験したことを述べていくのだが、なんとも言えない気分にさせられる。いずれもこれ見よがしな設定ではない。だが、なんだかあり得ないような展開になる。でも、それは日常の中にすっぽりと収まる。それどころかこれのどこが幻想的なのか、と思うくらいにさりげない。まぁ、誰もこれを幻想的だ、なんて言ってないけど。要するに僕が一人、そう言ってるだけなのだ。初めての海外旅行(しかも、フランス。およそ椎名さんらしくはない場所ではないか!)の体験を綴る『パリの裸の王様』や、電車の中に犬が乗り込んでくる『ある日』なんかもそうだ。
この本にはロール・デュファイというフランス人の若い女性が『屋上の黄色いテント』を描いた「イラスト物語」が同時収録されてあるのだが、これなんか、とても不思議な幻想漫画になっていて、あの小説の雰囲気を、さらに突出させたものになっている。椎名さんの描いた世界がフランス人の目を通してエキゾチックで、なんともいえないアンニュイとした無言劇として再生されてある。2作品を同時に見たらその違いと共通項がよく見えてきておもしろい。