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映画・演劇のレビュー

『戦慄迷宮』

2010-05-28 23:37:42 | 映画
 昨年来のアメリカの圧倒的な3D映画の量産体制の中、これは日本映画として唯一作られた本格長編3D映画である。でも、昨年の秋、興行的には惨敗を喫した。『呪怨』の清水崇監督によるミステリー・ホラーなのだから、それだけでも成功しそうなものだったのだが。

 DVD盤は3Dではないが、この映画のねらいは充分に伝わる。『アバター』と同じように飛び出す方ほうはなく、奥行きを重視した作りになっている。ストーリーは単純なのだが、本格的な謎解き映画としてはこれではルール違反だろう。まるで納得がいかない。遊園地のアトラクションとしてならこんな程度でも構わないのかもしれないが、1本の映画としてはこのレベルでは成立しない。ストーリーのおもしろさで見せようとしているのだが、詰めが甘い。

 10年前の謎の失踪と、その後バラバラになっていた彼らが、行方不明だった少女に導かれて事件の謎を解く、というストーリーなのだが、二つの時間が徒に交錯し、同じ場所に二つの時間の彼らが同時に存在したり、しかも、現実か妄想かもよくわからないまま混然一体となり話が展開する。これではなんでもありではないか。せめて核となる部分はぶれないで欲しい。これは、ホラーなんだから、怖ければいいでしょ、というタイプの映画ではないと思うのだが。

 彼らは本当に営業時間が終わったお化け屋敷に入ったのか。それすらよくわからないようになっていくのなら、もうなんでもありだ。夢の論理で貫かれた映画なら、確かにそれはそれでいいのだが、必ずしもそこまでは居直ってはいない。だいたい柳楽優弥の主人公と、行方不明だった連佛美沙子のどっちがこの10年後の再会と、再び繰り返される悪夢を仕掛けたのかすらわからない。なんで彼らが殺されるのかも不明。こんなことでいいのか?

 それなりに本気で見てただけに、なんだかはぐらかされた気分だ。幽霊とか心霊の仕業とかはなしにして欲しい。だいたい誰が3人を殺したのかどうかすら、これではよくわからないままです。

 刑事(松尾スズキ)による取り調べのシーンが挿入されるのだが、まるでストーリーに絡んでこないし。こけおどしこそがホラーの真骨頂だ、なんて言うのなら、まぁ、いいけども。それにしても、もう少し上手くまとめて欲しかった。


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