別役実の不条理劇を「劇団きづがわ」が作ると、なんだかとてもわかりやすいコメディーになってしまう。こんなにも、口当たりのいい別役作品なんて、今まで見たことがない。もちろん台本を改編しているわけではないから、演じる彼らのやりとり自体は、やはり不条理なのだが、それをきづがわの役者たちが演じると、ちゃんと理に落ちるように見せてくれることになる。納得のいかない展開は笑いに変えてくれるから、さらりと流して見られる。
ここでは、本来の別役世界である居心地の悪さが払拭される。それは、若手2人による(こちらはダブルキャストになっていて、4人がいろんな組み合わせで演じる。僕が見たのは寺島由浩、林田彩によるヴァージョン)『トイレはこちら』も、ベテラン2人(山本惣一郎、和田雅子)による『この道はいつか来た道』も同様だ。これは演出(山田一巳)の方針なのだろう。年輩の人が多数を占める観客にむけて、突き放したような作り方は出来ないし、それはきづがわの芝居ではない。わかりやすくて、心にしっかりと沁みてくるように別役を作る。その意図は充分に達せられてある。
『トイレはこちら』の2人のとまどいが、生きていくことの大切さへとつながっていく、という展開もわかりやすいし、『この道はいつか来た道』の老人2人の行き場のなさと、それを受け入れつつしっかり生きていこうとするラストも気持ちがいい。たとえそれがどんなことになろうとも、である。
作品自身の持つ本来の毒は薄められ、口当たりのいい作品としてまとめられた。だが、これはこれでいい。こういう作り方もあるのだ。そういう意味で、これは実に新鮮でもあった。
ここでは、本来の別役世界である居心地の悪さが払拭される。それは、若手2人による(こちらはダブルキャストになっていて、4人がいろんな組み合わせで演じる。僕が見たのは寺島由浩、林田彩によるヴァージョン)『トイレはこちら』も、ベテラン2人(山本惣一郎、和田雅子)による『この道はいつか来た道』も同様だ。これは演出(山田一巳)の方針なのだろう。年輩の人が多数を占める観客にむけて、突き放したような作り方は出来ないし、それはきづがわの芝居ではない。わかりやすくて、心にしっかりと沁みてくるように別役を作る。その意図は充分に達せられてある。
『トイレはこちら』の2人のとまどいが、生きていくことの大切さへとつながっていく、という展開もわかりやすいし、『この道はいつか来た道』の老人2人の行き場のなさと、それを受け入れつつしっかり生きていこうとするラストも気持ちがいい。たとえそれがどんなことになろうとも、である。
作品自身の持つ本来の毒は薄められ、口当たりのいい作品としてまとめられた。だが、これはこれでいい。こういう作り方もあるのだ。そういう意味で、これは実に新鮮でもあった。