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映画・演劇のレビュー

劇団きづがわ『トイレはこちら』『この道はいつか来た道』

2011-06-16 22:31:38 | 演劇
別役実の不条理劇を「劇団きづがわ」が作ると、なんだかとてもわかりやすいコメディーになってしまう。こんなにも、口当たりのいい別役作品なんて、今まで見たことがない。もちろん台本を改編しているわけではないから、演じる彼らのやりとり自体は、やはり不条理なのだが、それをきづがわの役者たちが演じると、ちゃんと理に落ちるように見せてくれることになる。納得のいかない展開は笑いに変えてくれるから、さらりと流して見られる。

ここでは、本来の別役世界である居心地の悪さが払拭される。それは、若手2人による(こちらはダブルキャストになっていて、4人がいろんな組み合わせで演じる。僕が見たのは寺島由浩、林田彩によるヴァージョン)『トイレはこちら』も、ベテラン2人(山本惣一郎、和田雅子)による『この道はいつか来た道』も同様だ。これは演出(山田一巳)の方針なのだろう。年輩の人が多数を占める観客にむけて、突き放したような作り方は出来ないし、それはきづがわの芝居ではない。わかりやすくて、心にしっかりと沁みてくるように別役を作る。その意図は充分に達せられてある。

『トイレはこちら』の2人のとまどいが、生きていくことの大切さへとつながっていく、という展開もわかりやすいし、『この道はいつか来た道』の老人2人の行き場のなさと、それを受け入れつつしっかり生きていこうとするラストも気持ちがいい。たとえそれがどんなことになろうとも、である。

 作品自身の持つ本来の毒は薄められ、口当たりのいい作品としてまとめられた。だが、これはこれでいい。こういう作り方もあるのだ。そういう意味で、これは実に新鮮でもあった。

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2 コメント

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いつもありがとうございます。 (劇団きづがわ/林田時夫)
2011-06-22 12:27:21
今回の「トイレはこちら」と「この道はいつかきた道」の公演は、3月にミュウジカル風の「どうしてジャンケンできないの」の取り組みから時間もなく、きづがわとしても初めての別役作品への挑戦ということもあり、大変でした。いつもながらあたたかい励ましの講評ありがとうございます。先週末土曜日に集まった際に、大橋むつおさんのブログの劇評と一緒にコピーしてみんなに配布させていただきました。
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いつもありがとうございます。 (劇団きづがわ)
2011-06-22 12:34:31
今回の公演は別役作品への初めての挑戦といいながら、3月のミュージカル風の「大阪空襲ものがたり」の取り組みから期間もなく、その上、「トイレは~」総当たりのダブルでもあり、ある意味大変な取り組みでした。いつもながらあたたかい劇評ありがとうございます。また昨夜はお忙しいところご苦労さまでした。今後ともよろしくお願いします。
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