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映画・演劇のレビュー

オリゴ党『愛と勇気だけが友達』

2008-03-25 21:50:31 | 演劇
 とてもよくできた短編集だ。きれいにオチがついていて、すっきりした気分で見終えることが出来る。いい気分にしてくれる。

 よくわからない世界に迷い込み、その物語の中を旅して、現実世界に戻ってくる。お話の醍醐味を満喫させてくれる。一切美術も装置は使わない素舞台だ。役者たちの肉体と作者の想像力だけを武器にして世界を作り上げる。中途半端な妥協のないプロの仕事を見せてくれる。と、ここまで書いて、ちょっと褒めすぎだと自分でも反省している。書いてて自分でもなんだか気持ち悪い。だが、いつものユルユルで、曖昧さが魅力のオリゴ党らしくない作品になっていることへの驚きがこんな文を書かせたのだろう。

 もちろん、この面白さは嘘ではない。こういう作品を作れるのも岩橋さんなら充分可能である。いつものつめの甘い作風を返上して、理詰めで作品世界を構築していく。どこかで見たようなお話が並ぶがそれを自分オリジナルとして、きちんと作り上げていく手腕は買う。ある意味何の特徴もない話をしっかり見せ切ることはかなりの力量がなくては不可能なのだ。ありきたりとは言わさずに緊張感のある舞台を立ち上げたのはさすがだ。

 第1話は首切りの儀式を行う村に迷い込んだ2人のヤクザの話。第2話は人の頭の中に火をつけてしまう男の話。第3話は人肉でジャムを作ってしまうパン屋の話。ちょっとしたホラーだ。それぞれは独立した読みきりなのだが、微妙にリンクしている。ストーリーテラーである車椅子の少女の存在も含めて、この作品全体が作り上げる世界の終わりを思わせるうら寂しい風景は、明確な輪郭は見せないが確かな終末を想起させる。見事な世界観の提示である。しかもそれをタイトルが示すようにアンパンマンを題材にしてやってしまう。さすが、岩橋!

 

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