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映画・演劇のレビュー

『サンセット・サンライズ』

2025-01-19 12:00:00 | 映画
菅田将暉版『釣りバカ日誌』だけど、これは東日本大震災から10年を描いた映画でもある。さらには本格的にコロナ禍の日常を描く作品だ。2020年3月からお話は始まる。冒頭はまるで寅さんかと思うようなエピソード。だけどこれはコメディではなくリアルにあの頃を描く。軽いタッチからスタートして徐々にシリアスに転じ、切実な想いが綴られる。

調子のいいエリート社員が(もちろん菅田)リモート勤務からの田舎暮らしを満喫する。東京から三陸にやってきた彼が2週間の待機期間を過ごす序盤は楽しい。彼の釣りバカ田舎ライフが描かれていく。これは地元住人とのふれあいを描くほのぼのとした映画かと思わせた。

しかし、必ずしもそうではない。2021年は震災から10年目だがコロナがまだ猛威を震っている。そんな中、やがて本社の指示からの空き家活用事業を描くエピソードを挟んで震災から10年の東北でのコロナ時代を描く。宮藤官九郎は『あまちゃん』以来の三陸を舞台にした作品。彼の脚本を岸善幸が監督した。岸映画はいつも長いが前作『正欲』に続いて今回も2時間19分。この手の映画では珍しい長さ。だけどこれはこの長さだからこそ可能になった映画であろう。単純な娯楽映画ではなく、だけどしかめっ面の社会派でもない。程よいバランスで語られる「被災地の今」を描く映画になった。

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