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映画・演劇のレビュー

『ONE PIECE FILM  RED』

2023-03-14 10:58:53 | 映画

これは昨年夏、大ヒットしてつい先日まで(なんと10ケ月のロングラン)ロードショー公開されていた映画だ。空前絶後のこのヒット作がもうプライムビデオで配信された。僕はこれだけたくさんの映画を見ているのに、しかもここ最近の『ワンピース』はずっと劇場で見ていたのに、なぜか今回は(たまたま)劇場で見ることがなかった。タイミングを失した。

公開時、すぐに見ていた娘たちからいろいろ感想を聞いていたけどなんとなく見逃した。大好きな1年生の凛ちゃん(7歳)なんて2回も見たのに。評判はさまざまで、真紀ちゃん(娘)は「いまいち」と言うけど、凛ちゃん(もちろん孫)は「UTAかわいい」と言う。そんなこんなで、ようやく昨日見た。

偏見なく感想を述べる。シリーズ史上最高の出来だ。とてもよくできている。こんな複雑なお話なのに子供まで引き込むなんてすごい。それにしても最近のアニメ映画は僕のようなお年寄りには難しい。

今回のお話でUTAが作る世界に取り込まれた人々は、現実世界で眠り続ける。夢の世界でUTAのライブを楽しむ至福の時間。でも、それがずっと続くことを望むわけではない。最高の休息の後にはいつもの日常に戻る。仕事や学校に行く。そして次のライブを楽しみに待つ。ハレとケの時間を往還して人は生きている。今までもこの手のお話はたくさん作られてきたから殊更これが特別ではない。ある種のパターンとも言える。

UTAという少女の孤独がお話の根底にはある。父親から棄てられて、たったひとりだけ彼女の世話をしてくれている老人はいるけど、ほぼひとりぼっちの島での暮らし。仮想空間でのライブには何万人どころか何十万人(いや世界の人口の7割とか言っていたような)もの聴衆が参加する。彼女はそんな世界中の人々を巻き込んで魅了する。だが、彼らの現実世界を失わせることまではできない。彼女が目指す「新時代」は、現実の「新時代」ではない。

お話の後半はルフィたちが、彼女が妄想の世界に世界中の人々を巻き込んで埋もれたせていくのを阻止するという展開だ。戦争が始まる。

凄いスピードで展開するライブシーンから戦場となる島での戦い。現実と幻想のはざまでの戦争が描かれる終盤のめまぐるしいカットで切り替わる映像の迫力。スペクタクル映画としてもよくできているから、MX4DとかIMAX上映とかで楽しんで見た人たちも満足したのではないか。UTAとシャンクスの話や、もちろんルフィとの因縁話や、盛りだくさん。まず何よりこれは音楽映画として成立していて、主人公はルフィではなく心に闇を抱えた少女UTAだ。だからこれでは『ONE PIECE』じゃない、というふうに思うファンもいるだろう。

でも、これが200億円に及ぶ大ヒットをしたことも事実だ。この映画がこれだけ広く支持された。そして、とにかく僕はまずこれを1本の映画として楽しめた。(漫画を読んでいない僕はそれだけで充分満足した)


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