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映画・演劇のレビュー

唐組『夕坂童子』

2008-04-28 23:46:06 | 演劇
 驚きを禁じえない。1幕が終わった時点で、かなり早いな、と思い時計を見てしまった。40分しか経っていない。実質15分の休憩を挟んで後半(2,3幕)が始まる。そこでもかなり早いと思ったが、終演後時間を確認して、やはり驚いている。まだ8時35分だ!40分X2.実質80分の芝居である。紅テントが昔3幕3時間から2幕2時間に変わったときも驚いたが(あれからも、かなりの時が経つ)今回の異様な短さはなんなのだろうか。

 作品世界自体もコンパクトであっさりしたものになっている。もちろんそれが駄目だなんて言わない。夕暮れの坂の下を舞台にして二組の男女の物語が描かれる。
奥山六郎(稲荷卓央)と谷朝子(藤井由紀)。彼らと合わせ鏡のように存在する丘公助(丸山厚人)と風間夕子(赤松由美)。夕暮れまでの時間。夕日が坂の向こうからこちらに向けて射しこめてきた時。特別な何かがそこには見える。

 これぞ唐十郎、と思わせる世界観に貫かれた芝居だ。だが、それが何を見せようとしたものなのかがはっきり伝わってこない。現在読売新聞に連載されている『朝顔男』とリンクした作品なのだろうが、2つを重ねなくては作品として完成しない、なんていうことはないだろうから、これはこれとして見ても何の問題もない。だが、それにしてはあまりに描こうとすることがあっさりしすぎて作者のこだわりが見てて来ない気がした。

 とても心地よい自分の世界でまどろんでいる。移ろいゆく時の流れの中で、ほんの一瞬立ち止まり、そこに見つめる幻のような芝居だ。だからこれは一瞬の出来事であるのはいい。たった80分で終わってしまう。だから目を凝らせ。一瞬さえ見つめる。見逃さないように。

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