習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『アドリブナイト』、『水の花』

2008-12-10 16:52:41 | 映画
 日韓の新鋭監督の作品を2本続けて見た。新鮮な驚きを期待したが、がっかりな出来である。批評とかではけっこう褒められているようなので、つまらなかったのは僕だけなのかもしれないが。

 イ・ユンギ『アドリブナイト』はまず、ポスターの少女(ハン・ヒョジェ)に心惹かれた。(不純な動機だ!)平安寿子の短編小説の映画化らしい。小予算のインディペンデント映画なようなのも気になった。その他いろんな意味で興味深い企画だ、と思いレンタルしてきたのだが、残念だ。

 不安定な手持ちカメラも、幾分引き気味で客観的な描写を目指したタッチも、まるで生きてこない。すべてがせりふによる説明でしかないのは、演出家の力不足としか言いようがない。せっかくおもしろいお話をわざわざ日本から見つけてきたのに、そのアイティアを活かし切れてない。

 他人と間違われて、その人の身代わりとなって、危篤状態のその人の父親に彼女の振りして会いに行く。このあんまりなお話にリアリティーを与え切れてないのも致命的だが、そのリアルでない状況を敢えて受け入れた彼女の事情をサスペンスの味付けで処理できたならよかったのに、それも出来ない。嘘だろ、という状況を受け入れていくためには有無を言わさぬスピード感が必要だが、それもない。ルーズなタッチで本来面白くなるお話を見せるだけ。監督のイ・ユンギは、それが自分スタイルとでも思ったか。
 
 確かにねらいは悪くないが、作品がスタイルについていけてない。これでは全然駄目です。もっと映画を勉強して出直してください。
 
 もう1本。PFFスカラシップ作品『水の花』。これも若手監督が自分のスタイルを押し付けてきて失敗しているという意味では『アドリブナイト』と同じパターン。説明しないことと、説明できないことは全く別の問題です。そこをなんだか勘違いしている。

 別々に暮らしていた姉と妹が家出をして、空き家になっていた祖父母の家に行き、2人で暮らす数日間のお話。これ自体は悪くない。父と母がおろおろする様はあまり見せないそっけなさも賢明だ。だが、これではこの映画のよさはまるで伝わらない。客観描写はまるで力になっていない。観客の想像力をあてにしたようなさもしい作り方をしてはならない。いかにして観客に伝えるかに腐心することが、作家と言うものではないか。

 

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