大作である。見るからに大作であることを誇示するような作り方をしている。それが悪いと言うわけではない。大作映画の巨匠、橋本忍による久々の脚本で、TV界の大作ディレクター、福澤克雄監督の劇場映画デビュー作。久石譲のいかにもの大作映画然とした音楽。中居正広の熱演。美しい日本の自然、妻との愛、子どもへの想い。A級戦犯として、裁かれること。感動的な場面が続々。しかも丁寧に作られている。なのに、なんだか、僕はこの映画を素直に受け入れられない。
いい映画だし、まじめに作られているのはわかる。安っぽいTVドラマの映画化では決してない。TVディレクターが作ったTVサイズの安易な企画とは、一線を画する映画であることは認める。なのに、乗り切れなかった。なんだか、意地悪な人間になってしまったようで、気分はよくないのだが、この力作には張りぼての映画のような甘さが見える。こんなに頑張ったのだから、感動してくれなくては困ると押し付けられている気分。努力は確かに認める。だが、努力したらいい映画ができるとは思わない。この映画はただの優等生に見える。だから、面白みがない。
2時間20分の大作で、描写は隅々まで手を抜いていない。廃墟と化した焼け跡とか、巣鴨プリズンの描写とか、美しい田舎町の描写とか、そのそれぞれの風景を見てるだけで満足できるくらいに手が込んでいる。スタッフの大変な努力は痛いほど伝わってくる。長期間手間隙かけてこの映画を心血込めて作った。
だが、それだけの努力が、報われてない。この映画には何よりも大事な《何か》が足りない。綺麗に作られた不幸を、感動にすり替えている。美しいだけで終わってはならないはずなのだ。同じように戦犯を扱った映画で『明日への遺言』とこの作品との差。それはアプローチの問題ではない。あそこにあった厳しさはここにはない。最後に「もう人間にはなりたくない。私は海の底の貝になりたい」と言うが、その感動的な言葉が上滑りしていくようではならない。綺麗ごとではないはずなのだ。ここまで彼を絶望させたもの。それを簡単な感動物語にしてはならないはずなのだ。
いい映画だし、まじめに作られているのはわかる。安っぽいTVドラマの映画化では決してない。TVディレクターが作ったTVサイズの安易な企画とは、一線を画する映画であることは認める。なのに、乗り切れなかった。なんだか、意地悪な人間になってしまったようで、気分はよくないのだが、この力作には張りぼての映画のような甘さが見える。こんなに頑張ったのだから、感動してくれなくては困ると押し付けられている気分。努力は確かに認める。だが、努力したらいい映画ができるとは思わない。この映画はただの優等生に見える。だから、面白みがない。
2時間20分の大作で、描写は隅々まで手を抜いていない。廃墟と化した焼け跡とか、巣鴨プリズンの描写とか、美しい田舎町の描写とか、そのそれぞれの風景を見てるだけで満足できるくらいに手が込んでいる。スタッフの大変な努力は痛いほど伝わってくる。長期間手間隙かけてこの映画を心血込めて作った。
だが、それだけの努力が、報われてない。この映画には何よりも大事な《何か》が足りない。綺麗に作られた不幸を、感動にすり替えている。美しいだけで終わってはならないはずなのだ。同じように戦犯を扱った映画で『明日への遺言』とこの作品との差。それはアプローチの問題ではない。あそこにあった厳しさはここにはない。最後に「もう人間にはなりたくない。私は海の底の貝になりたい」と言うが、その感動的な言葉が上滑りしていくようではならない。綺麗ごとではないはずなのだ。ここまで彼を絶望させたもの。それを簡単な感動物語にしてはならないはずなのだ。