習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

有川浩『阪急電車』

2009-05-07 23:39:10 | その他
 ずっと大阪に住んでいるけど、阪急今津線には乗ったことがない。たぶん。もしかしたら何度かは乗ってる気もするが、はっきりした記憶はないのだ。阪急電車には何百回も、もしかしたら何千回も乗っているにもかかわらずである。ここは大阪の(というか、兵庫県だが)エアポケットみたいなエリアだと痛感する。

 とても上手いところに目をつけたものだ。誰も知らないこの場所で起きたどうでもいいようなことを描く。そのたわいないけど、愛おしいいくつものドラマが心に沁みてくる。なんかとてもいい気分にさせられた。電車の中で偶然に隣り合わせただけの人たち。そこにあるささやかなドラマのひとつひとつはきっとどこにでも転がっているようなお話だ。でも、それがこんなにも胸を熱くしてくれる。普通なら周囲に埋もれて見えないお話をこんなふうにきちんと見せてくれる。

 とても上手い構成だ。各駅停車の各駅で、ドラマを作る。それがひとつになっていくオムニバススタイル。ひとつひとつのエピソードは同じ車両や別々の駅で起こるドラマへと連動していく。宝塚から西宮北口まで。そして折り返して、今度は西宮北口から宝塚へ。

 一番のお気に入りのエピソードは、女子高生と漢字も読めないサラリーマンの話だ。なんか、こういう男の子っていい。(自分に似てるからか?)人に対してどれだけ優しくなれるか。それが自分にとって何よりも大事なこととなる。それにしても阪急塚口で女の子をナンパするなんて凄すぎる。というか、こんな男が女の子をナンパしようとするなんて、それだけでなんだか凄い。

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