会話劇からさらなる進化を遂げた烏丸ストロークロック最新作。いつものように地方で短編を作りそれを長編にするというのは同じだけど、音楽と言葉のコラボで、ストーリーよりも感覚的なものを優先する。5、7調のリズムのセリフもそうだし、ラストの山伏のシーンが圧巻。高い山に登り、山の神になる。1本のストーリーではなく、いくつものイメージをつないでいく。あわい(間)を大事にしたということらしい。決してわかりやすいわけではないが、その時その時の心情を大事にする。主人公の抱えるものをどう解放していくか。そこから神の声が聞こえたらいい。
震災からその後の日々をどう生きるかがまずは当初のテーマになる。仙台、震災の時、あの日のこと。実家に戻り両親のもとへ。父との神楽。知的障害を持つ25歳の弟を持つ姉。行方不明になった彼を探し求める。子どもの頃にやった神楽を熊本の被災地の人たちの前で披露する。大阪での友人との再会。断片的なエピソードが大きな波に飲み込まれていく。
ラストで舞台に水が溢れてきて広がっていくシーンが印象的だ。そこに象徴されるのはこの作品がお話とイメージとのコラボでもあるという事実だ。難解な芝居だとは思わない。でも、わかりやすい芝居ではない。そのへんのバランス感覚が難しい。見終えてとても面白かったけど、なんだか釈然としない部分も残る。ただこの圧倒的なイメージは凄い。それがいつも通りの実に繊細なドラマに支えられている。