前半の東京での描写がいい。あそこで暮らすとあんなふうになるのだろうな、と思う。大都会はひとりには寂しい。大阪で暮らしていると、そこまでは感じないことが、きっと東京でなら感じさせられる、そんな気がする。娘が東京で暮らしているから、最近、時々向こうに行くけど、そのたびに感じさせられるのだ。東京の町を歩いていると、孤独が身に沁みる。
3・11のシーンから始まる。ひとりぼっちの女(長澤まさみ)が、気分を悪くして動けなくなる。それを助ける男(高橋一生)がいる。映画やドラマでよくある主人公たちの出会いのシーンだ。そこからふたりの恋が始まるなんていう展開は現実ではきっとなかなかあるまい。まるで映画のようなシーンを描くこの映画は、確信犯だ。そんな男に騙される女の話のように見せかける。だが、そこまで単純ではないことは言うまでもない。
「探偵もの」となる後半、舞台が東京から瀬戸内海の町へと移り変わる。映画のタッチがガラリと変わるのも、言うまでもない。そんなよく出来すぎたお話に辟易する、とでも言いそうな人もいそうな展開になる。だが、吉田鋼太郎の軽妙な演技に誘われて、納得のいく展開になる。メジャー映画の王道を行くお話の展開(嘘くさいスレスレ)を逆手にとって、だからこそ、描くことができる真実を提示する。見事だ。甘いのはわかっている。でも、そんな甘さも含めてハッピーエンドがうれしい。メジャー映画はこうじゃなくては、と思う。