こういうエンタメ作品は普通ならもっと大きな劇場を選ぶはずなのだ。だが、敢えてこの狭い空間(in→dependent theatre 1st)で、しかも限定した少ないキャストで演じるという冒険に打って出た。岡田以蔵を主人公にして切ない恋心を描く。お話としては、あくまでアクション主体であることは当然なのだが、以蔵の恋心をそれと同じくらいの比重で描くことで、ただのアクションものにはしない、というのが今回の至上命令であろう。ドラマ部分の比重が大きい。彼の純粋さを、恋心を寄せるみやと、師である武市半平太との関係の中で描く。
そのためにも、狭い空間が必要だった。密な空間で彼らの想いを丁寧に切り取る。ただ、そうすると派手な立ち回りが難しくなるところだが、そこは手を抜かない。以蔵が人斬りであることは事実で、彼はたくさんの人たちを手にかけた。それをなかったことには出来ない。だがそこに止まらない。芝居は、それが何だったのかに迫る。そのためには立ち回りのシーンは必須である。ことばで語るのではなく、アクションで代弁する。
そういう大前提の上に立って、この空間だからこそ可能な、激しい立ち回りも見せてやろうじゃないか、という心意気を感じさせる。今まで見たことがないような立ち回りを見せてくれる。狭い空間だから激しい殺陣はとても危険だ。だからこそ、感動を呼ぶ。
たまたまだが、僕が見た回は作、演出のドヰタイジ自らが主役を張るチームCの公演だった。他のヴァージョンもきっと面白かったのだろうが、彼が演じることで描こうとしたものがより的確に伝わったかもしれない。抑えたタッチで、それでもそこから迸る、とても熱い舞台だった。