いつも人は不安を抱えて生きている。何かが足りないと思う。自分の身近にいる人がわからないと思う。
自分の知らないところで彼(彼女)が何をしているのか、とんでもない秘密があるのではないか、なんて怖れる。しかし、そのパンドラの箱を開けてしまったなら、取り返しのないことになってしまうことも多い。 見なければよかった、知らなければよかったなんて思う。そんな気分を描く短編連作である。開けなければよかったのに、開けてしまう。中身が見てみたいと思うのが人情だろう。
知らないおばさんが置いていった箱。誰かが捨てていったビデオテープ。駅の構内で赤ん坊を「ちょっと見ててください」と言ってトイレに行ったままなかなか帰らない母親。彼のケイタイを見てしまう女。母の残した遺言状。ベランダから見える火花の謎。家の前にいた犬。行方不明の兄の消息。
それぞれの短編はそれぞれとても角田光代らしいものだ。それはいずれも小さな痛みを伴う。それを一つ一つ読みながら心に刻む。そのうちに、それがなんだか素敵なことに思えててくる。生きていくってこういう小さな痛みを抱き続けることではないか、なんて思ったりする。それって必ずしも悪い事ではない。
自分の知らないところで彼(彼女)が何をしているのか、とんでもない秘密があるのではないか、なんて怖れる。しかし、そのパンドラの箱を開けてしまったなら、取り返しのないことになってしまうことも多い。 見なければよかった、知らなければよかったなんて思う。そんな気分を描く短編連作である。開けなければよかったのに、開けてしまう。中身が見てみたいと思うのが人情だろう。
知らないおばさんが置いていった箱。誰かが捨てていったビデオテープ。駅の構内で赤ん坊を「ちょっと見ててください」と言ってトイレに行ったままなかなか帰らない母親。彼のケイタイを見てしまう女。母の残した遺言状。ベランダから見える火花の謎。家の前にいた犬。行方不明の兄の消息。
それぞれの短編はそれぞれとても角田光代らしいものだ。それはいずれも小さな痛みを伴う。それを一つ一つ読みながら心に刻む。そのうちに、それがなんだか素敵なことに思えててくる。生きていくってこういう小さな痛みを抱き続けることではないか、なんて思ったりする。それって必ずしも悪い事ではない。