2020年刊行の作品が文庫化されたので電車の中で読んだ。単行本が出た時には気づかなかった。まぁ、小路幸也だから頻繁に新刊が出ているし、細切れでも読みやすい。前半は面白いけど、後半がつまらない。両親の秘密がありきたりの話で、肝心の3兄弟の話がお座なりになっている。彼らが両親亡き後、3人でどう生きるのかがこの小説の描くべき本来のお話ではないか。祖母が来て彼らの面倒をみるなら、この設定に意味はない。男たちだけで、家事や生活を支え合い親の不在を乗り切っていくのかを描くべきだった。
最初の町内会班長を務める話なんて最高だったのに、遺品の整理から方向性を見誤った。特別なことは両親の事故死だけでいい。父の浮気、異母姉妹の存在、なんてのはこの小説にはいりません。でも小路幸也はいつものように家族を減らすのではなく、増やすのが好きだからついついこういう展開にしてしまうのだろう。甘い話も彼は得意技だし。
「三兄弟の僕らは」4兄弟妹になり、おばあちゃんも同居して、血のつながらない義母までできる。そしてやがて彼らは結婚して子供もできるのだろう。そんなことより、早く『東京バンドワゴン』の新刊が読みたい。