主な登場人物は7人である。しかも家族だけ。主人公と彼の妹を中心にして、彼らの両親。お互いの妻、夫。そして、2人にとっては兄弟同然の使用人。これ以上シンプルな人間関係はないだろう。そしてストーリーの方もまたシンプルの極み。主君の政策に意見をした妹の夫(彼の親友)を、主君の命により討ち取ってくるため彼の出奔先である江戸に行く。それだけ。
ストーリーは1行で説明できるし、その展開も全く意外性ゼロ。この短編小説(原作は例によって藤沢周平だ!)が、ただそれだけで1本の長編劇映画になるというのは、ちょっとした奇跡だ。起伏もない淡々としたお話である。およそ映画向けではない。そんな原作を得て篠原哲雄監督は、この映画をストーリーで見せていこうとはしない。ひとりひとりの描写を丹念に描くことで、生きることの喜びと悲しみをみつめていく。
とても静かな映画だ。さらりとした描写で彼らの姿、そのたたずまいを、まるで川の水が流れていくように、よどみなく見せる。奇をてらうことなく、けれんもない。ただありのまま、である。ここまでされると、これが映画であることすら忘れてしまう。人の営みをただみつめているような気分にさせられる。
クライマックスである果たし合いのシーンもそこで映画を盛り上げようとはしない。地味すぎてがっかりする観客もいるかもしれないと心配になるほどだ。だが、最後まで見た後、その心地よさに驚く。なんかとても爽やかな映画を見た気分だ。本来なら、この理不尽なことに腹を立ててもいいはずなのに、そうはならない。それはここに登場するひとりひとりが、自分の置かれたその状況をきちんと冷静に受け止め、最後まで心乱すことなく自らの矜持を守り続けるからだ。
この世の中は納得のいかないことだらけだ。それに腹を立てていても何も事態は好転しない。真摯に受け止め、誠実に生きる。この小さな映画はそんな当たり前のことを自ら示してくれる。
ストーリーは1行で説明できるし、その展開も全く意外性ゼロ。この短編小説(原作は例によって藤沢周平だ!)が、ただそれだけで1本の長編劇映画になるというのは、ちょっとした奇跡だ。起伏もない淡々としたお話である。およそ映画向けではない。そんな原作を得て篠原哲雄監督は、この映画をストーリーで見せていこうとはしない。ひとりひとりの描写を丹念に描くことで、生きることの喜びと悲しみをみつめていく。
とても静かな映画だ。さらりとした描写で彼らの姿、そのたたずまいを、まるで川の水が流れていくように、よどみなく見せる。奇をてらうことなく、けれんもない。ただありのまま、である。ここまでされると、これが映画であることすら忘れてしまう。人の営みをただみつめているような気分にさせられる。
クライマックスである果たし合いのシーンもそこで映画を盛り上げようとはしない。地味すぎてがっかりする観客もいるかもしれないと心配になるほどだ。だが、最後まで見た後、その心地よさに驚く。なんかとても爽やかな映画を見た気分だ。本来なら、この理不尽なことに腹を立ててもいいはずなのに、そうはならない。それはここに登場するひとりひとりが、自分の置かれたその状況をきちんと冷静に受け止め、最後まで心乱すことなく自らの矜持を守り続けるからだ。
この世の中は納得のいかないことだらけだ。それに腹を立てていても何も事態は好転しない。真摯に受け止め、誠実に生きる。この小さな映画はそんな当たり前のことを自ら示してくれる。