これはかなり不思議な作品になった。3人芝居だけど、1人芝居のような感触。1人の人間を3人が演じるわけではない。だが、ここにいるのは、ひとりでそれが2人になり、再び1人になり、いなくなる。この場所が現実なのに現実ではないような。そしてこの悪夢のような現実の中で、死んでいく。
幻想的な空間で(舞台美術が凄い。衣装で作った空間なのだ)極限状態のサバイバルが展開する。食べるもののない場所で、生き残るために、犬や猫も、何でも食べる。最後は自分の体を食べていく。
ボイスレコーダーから聞こえる声。かつて夢の島といわれた場所。でも、そこはゴミの島。そんなゴミ捨て場に棄てられた男。何もないその場所で、死んでいくまでの時間。そこに棄てられた少年。盲目の少女。彼らを冷静に見つめていくドキュメント。現実と幻想のあわいに生じた残酷な物語。この不思議な感触がたまらなくいい。これは一種の寓話なのだが、それが意味とかテーマに陥るのではなく、皮膚感覚の気持ち悪さを感じさせるのがいい。