6つの作品からなる短編集。6人の女性作家が、旅をテーマにして紡ぎあげる連作。それぞれ別々の作品だが、日常の延長線上にある旅をとても巧みに捉えてある。主人公が実際に旅をする作品もあるが、そうではなく、ほんの少し旅の気分を味わうことで、生きていく実感を感じさせるものに、心惹かれた。
平田俊子『いとこ、かずん』が僕的にはベスト。これは、大学生になり、東京に出てきた従弟を家に下宿させる話。もちろんこれが具体的な旅から一番遠い。子供の頃、何度か会った事がある従弟が大人になり、やって来て、一緒に暮らすことのなる。2人はなんとなく雰囲気が似ている。もちろん親戚なんだから当たり前かもしれないが。
従弟の数(これが彼の名前だ)に対する淡い想いはもちろん恋なんかではない。ただ、彼といるだけで、なんだか心が落ち着く。突然父がいなくなり、姉もアメリカに行ったきり帰ってこない。母と2人の静かな生活にかずん(数の呼び名だ)は潤いを与えてくれる。
人はいつかいなくなる。そんな当たり前のことを考えもせずに、人は日々を生きている。しかし、いなくなると、哀しい。でも、人生は続く。そんな当たり前のことが、なぜかとても心に沁みる。
ここに止まり続けながら、旅人を待つ。祖母はそうして祖父と出逢った。止まることの切ないような痛みが静かな物語の中に描かれる。ラスト、かずんが家を出て行くことを見送る。でも、失踪していた父が帰ってくるという夢を見る。
旅というより人との出会いと別れのほうが大きなテーマになっている。見方によっては6つともがそうだ、と言えそうだ。そこがこの短編集の魅力でもある。
平田俊子『いとこ、かずん』が僕的にはベスト。これは、大学生になり、東京に出てきた従弟を家に下宿させる話。もちろんこれが具体的な旅から一番遠い。子供の頃、何度か会った事がある従弟が大人になり、やって来て、一緒に暮らすことのなる。2人はなんとなく雰囲気が似ている。もちろん親戚なんだから当たり前かもしれないが。
従弟の数(これが彼の名前だ)に対する淡い想いはもちろん恋なんかではない。ただ、彼といるだけで、なんだか心が落ち着く。突然父がいなくなり、姉もアメリカに行ったきり帰ってこない。母と2人の静かな生活にかずん(数の呼び名だ)は潤いを与えてくれる。
人はいつかいなくなる。そんな当たり前のことを考えもせずに、人は日々を生きている。しかし、いなくなると、哀しい。でも、人生は続く。そんな当たり前のことが、なぜかとても心に沁みる。
ここに止まり続けながら、旅人を待つ。祖母はそうして祖父と出逢った。止まることの切ないような痛みが静かな物語の中に描かれる。ラスト、かずんが家を出て行くことを見送る。でも、失踪していた父が帰ってくるという夢を見る。
旅というより人との出会いと別れのほうが大きなテーマになっている。見方によっては6つともがそうだ、と言えそうだ。そこがこの短編集の魅力でもある。