
乾ルカの新作。白麗高校3部作の完結編。前作の『水底のスピカ』が面白かったので期待して読んだ。高校時代(3年時)と現在(卒業から7年後)が交錯して描かれる。8年前のあの時何があったのか。そして担任だった水野の死の謎。ミステリースタイルでお話は展開する。
主人公はあの頃虐めに遭っていた優菜。今は母校で図書館司書教諭をしている。もうひとりの主人公は自称作家の華。あの頃優菜を虐めていた。今はスーパーのバイトをしながら小説家を目指している。このふたりの話を中心にして同級生たちのエピソード(3人の話が描かれる)も綴られる。
担任水野が暴走して暴力を振るった授業。教室から飛び出して2度と帰って来なかった暴行を受けた生徒。さらにはもうひとつの出来事。中庭の噴水前でのダブル告白。それは高校生活の中のもしかしたら埋もれてしまうかもしれないような一コマ。だが、それらが彼らの人生を変えてしまう。
あれから8年、卒業から7年。25歳あるいは26歳の彼らの今。5人の話が丁寧に描かれていく。それぞれの事情があり、あの頃から今までの時間がある。元担任の死。まだ彼は40代だ。彼の娘は今白麗高校に在学している。彼女のドラマが5人の話に突き刺さってくる。担任の死は自殺だったかもしれない。彼は何に苦しんていたのか。その謎が解き明かされる。
ラストが素晴らしい。再び彼らは白麗高校に集う。5人と水野先生の娘だけではなく、そこにはあの日教室から飛び出した船守も一緒だ。あれから8年。葬式から始まる物語は、同窓会ではなく、卒業式でもないラストを迎える。これは旅立ちのための『葬式』なのだ。