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まさかこんな映画だとは思わなかったから冒頭から度肝を抜かれてしまう。老人の売春組織の話だなんて、このタイトルからは思いもしなかった。まるで内容を知らないまま見始めたから老人たちの温かい交流を描く映画だろうとたかを括っていた。ハードな内容だけど切実な問題が提示される。確かにこれは犯罪だけど、映画はそれを告発するわけではない。そんな単純な問題ではないし。老人たちのセックスが生々しく描かれる。容赦ない。
主人公は半額になったおにぎりを1個万引きする老婆を見て、彼女を庇う。お話はここから本格的に始まる。これはこのふたりの友情物語でもある。彼女がなぜ万引きをするのか。その核心に迫る。
たったひとりで無残な老後を送る女。そんな彼女を助けて夢を与える女。彼女が作る夢のような場所。だけどそれは老人たちに売春をさせる組織である。性を介する夢の実現。老人たちもまだ性欲はある。そんな機会を斡旋することでお金を稼ぐ。集めたお金でみんなが幸せに暮らせるコミューンを作り上げる。
終盤に描かれるみんなで幸せに誕生日パーティーをするシーンで終われたらよかった。だけど、そんなことはあり得ない夢でしかないことは最初からわかっている。ラスト20分はあまりに無惨な結末が待っている。これは実話をモデルにした映画だという。
老人たちの売春組織と聞くだけでおぞましい、と受け止められそうだ。だけど、それをシビアに描きながらこんなにも切実で愛おしい物語にした。外山文治監督は理想と現実の狭間で今の時代に何が必要なのかを描く。2時間15分に及ぶ大作である。見ている間はずっと苦しくて途中で何度もやめたくなるくらいにつらい。だけどスクリーンから目を離せない。これは他人事ではない。
老後の孤独をこういう視点から描くこともありだ。きれいごとだけではない現実とその先にある希望を描く。今度はこの挫折から見えてくるものを描いて欲しい。