前作の『そっか』は刺激的で確かに「猟奇的エンターテイメント」だったと思う。あれもまたウイングカップ参加作品だった。今週はなんだかウイングカップがらみの芝居ばかり見ている。
今回も前作同様また同じように刺激的なビジュアルだ。だが、お話があまりに直線的でストーリーに展開がないのがつらい。だから見ていて、ついていけなくなる。何がしたいのやらよくわからないから退屈してくる。確かに耽美で猟奇的な世界がそこには広がる。自分たちの世界観をしっかりと提示するビジュアルだ。だけど、その先がない。お話がないのである。作、演出は葉兜ハルカ。彼女独自の世界を具現化させる。その意図はわかるだけに残念だ。
ぽコ人とは何者なのか。「人間のへっぽこな部分が具現化した存在」と説明されるのだが、それって何なのか。さらには、彼らの住む世界に紛れ込んでそこで暮らすことになったレニ。彼女を主人公にして、ぽコ人とさまざまな人たちの交流が描かれていくというのが一応のストーリーみたいなのだが。
由香里という妊婦の存在、さらには彼女の出産。提示される個々のイメージは面白いのだが、それがお話として展開していかないのがつらい。だから、何度も書くけど、何がしたいのかわからない芝居になるのだ。イメージの羅列ではなく、そこからしっかりとドラマを紡ぎだして欲しい。今ではほとんどなくなってしまったこの手のアングラ芝居は嫌いではない。いや、どちらかというと好きだ。見世物小屋の禍々しさ。おどろおどろしさを少女たちが体現するというのもいいだろう。昔見た寺山修司の天井桟敷や、その後継者だったJAシーザーの万有引力の芝居を想起させるものがここにはある。それだけに、その世界観をきちんと展開させるだけの芝居を作って欲しい。