ある日、いきなり大親友が遠くの町に引っ越していくと言う。あしたは大事なピアノの発表会があるのに。2人で一緒に出るはずだったのに。納得のいかない彼女は、友だちが引っ越していった町にみんなを引き連れ、旅立つ。
太陽族の岩崎正裕さんがアイホールと共同制作する3部作の最終作品である。なんと今回は子どもたちのための音楽劇だ。この企画では毎回、普段の劇団では出来ない冒険を続けてきたが、今回の子どもミュージカルにはさすがに驚かされた。彼が作っているいつもの世界から一番遠い世界ではないか、なんて思った。だからこそ、この素材をいかに作り上げるのか、興味津々で劇場に向かった。
ここにでてくる子どもたちは、それぞれがみんなひとりぼっちだ。ひとりぼっちの集まりがみんななのである。彼らがなぜひとりぼっちなのか、そのバックボーンなんて描かれない。なぜならば、そんなことは不要だからだ。大人たちと同じように子どもたちも、まず「ひとり」なのである。そんなことに説明なんかいらない。
芝居はそんな彼らが、ワルハラと呼ばれる町を目指す一夜の旅が描かれていく。テンポよく見せてつまらない説明はしない。芝居はスピード感を大事にする。だが、そんな中で、例えば、「正義の反対は悪ではない」こと、「それはもうひとつの正義なのかもしれない」だなんていう難しいことを語ったりもする。
世の中は単純ではない、ということを様々な局面から見せてくれるのだ。描く問題は実にシビアだ。岩崎さんは相手が子どもだからといって容赦しない。というか、反対にしっかり現実の姿をここに反映させて子どもたちに考えてもらおうとする。何かを教え諭すのではない。一緒にこの世界のことを考えていこうとするのだ。グレイな部分を含めて僕らはそんな世界に生きているということを、この寓話的な物語のなかで見せていこうとする。
そういう意味では、この芝居はファンタジーではなく、リアルすぎる現実の姿をベースにした作品だとも言えよう。子どもたちに自分たちが生きる世界のことを考えてもらおうとする。それが岩崎さんのねらいだ。とても明るく楽しいミュージカルというスタイルの中で子どもたちは世界と向き合うことになる。
今まで何度か子供ミュージカルのようなものを見たことがあるが、それらは、大人目線の作品や、子供ならこれで喜ぶだろう、という勝手な思い込みが先行した子供に媚びたようなものが多かった。なんだか不満が残るものばかりだった。だが、岩崎さんの作品は違う。
岩崎さんが作った作品は決して明るく希望に満ちた作品ではない。だが、複雑な様々な問題を孕んだこの作品を通して、彼は子供たちに希望を託す。子供たちの「どくりつこどもの国」はその先にある。
太陽族の岩崎正裕さんがアイホールと共同制作する3部作の最終作品である。なんと今回は子どもたちのための音楽劇だ。この企画では毎回、普段の劇団では出来ない冒険を続けてきたが、今回の子どもミュージカルにはさすがに驚かされた。彼が作っているいつもの世界から一番遠い世界ではないか、なんて思った。だからこそ、この素材をいかに作り上げるのか、興味津々で劇場に向かった。
ここにでてくる子どもたちは、それぞれがみんなひとりぼっちだ。ひとりぼっちの集まりがみんななのである。彼らがなぜひとりぼっちなのか、そのバックボーンなんて描かれない。なぜならば、そんなことは不要だからだ。大人たちと同じように子どもたちも、まず「ひとり」なのである。そんなことに説明なんかいらない。
芝居はそんな彼らが、ワルハラと呼ばれる町を目指す一夜の旅が描かれていく。テンポよく見せてつまらない説明はしない。芝居はスピード感を大事にする。だが、そんな中で、例えば、「正義の反対は悪ではない」こと、「それはもうひとつの正義なのかもしれない」だなんていう難しいことを語ったりもする。
世の中は単純ではない、ということを様々な局面から見せてくれるのだ。描く問題は実にシビアだ。岩崎さんは相手が子どもだからといって容赦しない。というか、反対にしっかり現実の姿をここに反映させて子どもたちに考えてもらおうとする。何かを教え諭すのではない。一緒にこの世界のことを考えていこうとするのだ。グレイな部分を含めて僕らはそんな世界に生きているということを、この寓話的な物語のなかで見せていこうとする。
そういう意味では、この芝居はファンタジーではなく、リアルすぎる現実の姿をベースにした作品だとも言えよう。子どもたちに自分たちが生きる世界のことを考えてもらおうとする。それが岩崎さんのねらいだ。とても明るく楽しいミュージカルというスタイルの中で子どもたちは世界と向き合うことになる。
今まで何度か子供ミュージカルのようなものを見たことがあるが、それらは、大人目線の作品や、子供ならこれで喜ぶだろう、という勝手な思い込みが先行した子供に媚びたようなものが多かった。なんだか不満が残るものばかりだった。だが、岩崎さんの作品は違う。
岩崎さんが作った作品は決して明るく希望に満ちた作品ではない。だが、複雑な様々な問題を孕んだこの作品を通して、彼は子供たちに希望を託す。子供たちの「どくりつこどもの国」はその先にある。