「最高においしい小説」シリーズの第3作らしい。帯を見て知る。そんなこと知らなかったし、気にはならない。だいたいシリーズといっても独立した長編だし、内容が繋がった作品ではなく「おいしい」をテーマにしただけみたいだから前作は関係ない。
これ自身も、4話からなる連作長編である。しかも主人公のさやかは最終話まで脇役でしかない。さやかが大将である夕凪寿司に12年振りにやって来たまひろの話から始まった。彼女は22歳。昔母親に連れられてここに来た。職場の倒産からの無職や母親の死がありボロボロになった彼女が再起を期してここに来る。
ここでさやかたちと出会い、新しい出発をする。さらにはここの従業員未來の話、常連の金光社長の話を経てラストでようやくさやかが主人公になる話に至る。と、思ったが、そうではなく最後はここに集うみんなに話になる。さやかはあくまでも狂言回しに徹するというスタイルになる。
だけどこれはこれで面白い。気持ちよく読める作品だったし、さやかの握る寿司はとても美味しい。(みたい、だ)確かにこれは読みやすくて、とても美味しい小説だった。